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展示会場はワンダーランド

日本を発つ前に、全盲のTさんから「見てきて!」と依頼のあったBonocleのブースに行ってみる。マウスの上に一個分だけ点字ディスプレイが乗っていて、タブレットなどが文字などの上を通った際に、その点字を表示するというものだ。いわゆるリフレッシャブルの点字ピンディスプレイは、高価である。かつては1セル1万と言われ、40文字だと50万円くらいしていた。プログラミングをする視覚障害者は、127万もする80ピンのものを使っている人が居て、憧れの存在だった。だが、このBonocle、たったの数千円である。高額のマウスだと思えばそれほど高いものでもない。画面を一文字だけ認識しながら進むので時間はかかるが内容はわかる。ただ、文字の大きさや言語によっては難しいかもしれない。特に日本語の認識と、それを日本点字に切り替えるのは、やはり難しい気もする。ただ、この触覚を利用したゲームなども体験でき、なかなか面白かった。アプリは作りこむ必要がありそうだ。

Bonocle 端末とアプリの画像
マウスの上に一個だけ点字ピンがついている スマホと連動する
犬を走らせるゲームの画面
触覚で遊べるゲームも開発している

このBonocle、セッションにも行ってみた。確かにスマホ時代になって、大きな点字ピンディスはそぐわないかもしれない。スマホの環境で、画面の一部を点字で読めるというのは用途は限られるかもしれないが、ニーズはそれなりにあると思う。今後に期待したい。

セッションでの説明 可能性は無限と言っている
Bonocleのセッションでの説明

今回、視覚障害者のゲーム利用を支援するATやアプリがいろいろあったのは、変化の一つである。ご一緒した和久井さんは、このエリアの情報をずっと収集していた。以前CSUNのツアーに一緒に参加してくれた全盲のN君が、ばりばりのゲーマーなのだそうだ。ゲームやeスポーツのUDって、楽しそうだな。昨年はOculusのゲームをどうUDにするかがテーマでレポートも書いたが、このジャンル、今後も目が離せないかも。とはいえ、運動神経ゼロの私は、いわゆるゲームというものが全く出来ないのだが。。。。

他にもスマホの裏に張り付けて使うQWERTYキーボードなるものが展示されていて、これも面白かった。PCのキーボードでQWERTYに慣れている人にとって、スマホ上の小さなソフトキーボードで入力するのは、却って困難である。手が覚えているキー入力をできるだけ維持したい人もいるはずだ。スマホにくっつけて入力してみたが、たしかに速い。指が意外にQWERTYを覚えているのだ。

スマホに張り付けて使うQWERTYキーボード
ICTの世界はPCからスマホへ移行している スマホにはりつけるQWERTYキー

また、今回盲ろうの参加者に人気だったのが、4Blindという会社が出している入力機器である。HaptiBlindという名前で、スマホと同じサイズだが、裏面に6点の点字ボタンがあり、ここから入力も、振動で点字ピンディスプレイとして認識もできるそうだ。話せる人の声の音声認識を行う「Hear」モードと、こちらが入力した内容を音声合成で伝える「Say」モードがある。いわば、このスマホサイズの機械の中に、音声認識・音声合成・点字表示・点字入力が一体化されているといえる。これが月25ドルのサブスクで使えるというのは驚きだ。同じメーカーが、この機器とも連動できる低価格の点字パッドも出していた。これまでのアクチュエーターでピンを上下させる機器と異なり、面で画像を表示できるためなのか、価格がかなり安い。30万円以下で、カメラ機能付き、写した画像を認識して画面に点図で出せる。なんだか、この分野、進化している。盲ろうの方が団体で来ていて、大人気だった。

6点入力機器と点字パッド
スマホ連動で6点入出力と点図出力も可能
盲ろうの方が団体で来て試していた
盲ろうの方がたくさん展示を試していた

こういった小さなATのガジェットがまた少しずつ増えてきているようだ。このCSUN、考えてみれば「障害者とテクノロジー」会議という名前から、「支援技術(Assistive Technology)会議」に数年前から名称を変えているんだった。今後も、ちょっと楽しい、ATが続々と出てくるのが楽しみである。

この展示は、元MS、今はアマゾンのアクセシビリティ担当である金子さんと一緒に回った。彼が面白いと言って教えてくれるものは、とにかく楽しい。目の見えない子どもでもプログラミングができるツールは、小学生用の他、それより小さな子ども用もあり、これなら私もできそう!と試してみた。

子供向けプログラミングキット
眼の見えない子供向けプログラミング機器

マウスの上にボタンがあって、進むときはこっち、曲がるときはこれ、と決まっている。で、進めたいコマ数だけそのボタンを押すのだ。最初は右に曲がるを3回も押してしまい、マウスはあさって~の方向へ行ってしまったが、コツがつかめてくるとがぜん楽しくなった。論理的に考えよう。お、ちゃんと動くぞ。そうそう、これってプログラミングの基本よね。

小さな子供用プログラミングツールのねずみ
眼の見えない子供にもわかるボタンがついている

最初はプログラミングに失敗し、ねずみさんは外へ飛んで行ってしまった。曲がるは一個、進むが二個だよね、と今度は慎重にやってみて、何とか進めた。きっと最後まで行けたら、ねずみさんはチーズをもらえるんだよね。これなら私でもできそうだ。目をつぶってでも、これなら指示が作れそう。

ねずみの進むボード
最初はねずみさんがぶっとんでいってしまった

会場には、内容を画面に表示して、それを触りながら音で遊べる電子絵本もあり、小さな女の子がずっとそれで遊んでいた。ディスプレイも、表面がタクタイルになっていて、絵本の内容を触ることができ、それをちゃんと触ると音がつくのだ。あまりに楽しそうだったので、まぜてもらう。海の音はざざーっ、雨の音はしとしと、雷雨になったらごろごろ、ときどきぴかーっ、どーんという雷も。なんだか、森も、風も、感じられる気がする。その子は目が見えないのではなかったけど、本当に楽しそうだった。なんだかUDな風景である。

触れて音が出る絵本で遊ぶ女の子
デジタルで音が出る 触る絵本


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