イベントレポート 本屋B&B『metooの人も、metooしない人も、metooに少し疲れた人も』
2018年2月25日㈰に、本屋B&B(下北沢)で、日本の#metoo の動きで声をあげた女性たちが開催したイベント『metooの人も、metooしない人も、metooに少し疲れた人も』に参加しました。
私が参加した理由は、単に名前が面白かったからでした。加えて、実際に#metoo の動きに「疲れていた」部分もあり、自分にピッタリかな?と思って参加しました。ふわっと包み込んでくれるような素敵な本屋さんに、そんな様々な理由をもった人たちが60人以上集まりました。本屋B&Bさんでは定期的に面白そうなイベントが開催されているようです。
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さて、みなさんはそもそも「 #metoo 」をご存知ですか?
ご存知でない方のために…#metoo は2017年10月くらいから、アメリカで始まった動きのことで、映画監督ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラ疑惑をハリウッドの女優たちが告発したことをきっかけに、著名人や一般の女性たちが性暴力(セクハラや性的虐待など)の被害体験を告白する動きが国境を越えて広まりました。日本でも伊藤詩織さんやはあちゅうさんが性暴力被害を告白したことから、この動きをご存知の方も多いかもしれませんね!
今回このイベントに登壇されたのは、グラビア女優の石川優実さん・政治アイドルの町田彩夏さん・フリーライターの三浦ゆえさん・ライターの小川たまかさんの4名の女性【詳しいイベント・登壇者情報はこちら】で、それぞれ#metoo で声をあげています。
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イベントが始まると、早速町田さんと石川さんの性暴力被害の体験を聞くことができました。町田さんは大学のミスコンに応募した際「子孫を残すためにセックスをするには、女性として何が必要だと思いますか?」と審査員の女子学生から聞かれたこと、そして就活の際、企業の幹部の人に「君みたいに綺麗な子がハキハキ・的確にものを言ってくるの嫌なんだよね」と言われたという実体験をお話しされました。また、石川さんも芸能界におけるグラビアでの露出の強要や性接待の強要(「枕営業」と呼んでそれを正当化すること)について実体験も含めお話しされました。【石川さんのお話について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください】
2人の性暴力被害に共通していたのは
◇「セクハラ発言や暴言を言われる自分が悪いのでは…」と自分を責めたこと
◇「自分は性暴力の被害者だ」と気づかなかったこと
◇性暴力を受けているという状況の把握に時間がかかったこと など
でした。これは性暴力被害に遭った人にとって当然の反応で、私もそうでした。ほかの性暴力被害に遭った人から話を聞いても、事件の直後は同じような状況に陥っています。もしこの記事を読んで、まさに苦しんでいる人がいたら、信頼できる人に相談してみてください。周りにいなければ、性暴力救援センターなどのホットラインに電話をしてみてください。
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その後、性暴力についての勉強会で、よく話題に上がるセカンドレイプについて話がありました。
ご存知でない方のために…セカンドレイプとは、性暴力の被害に遭った人が、病院に行ったり、人に相談したり、警察に行ったりして、問題を解決しようとする過程において、さらに心理的・社会的ダメージを受けることです。セカンドレイプに当たる発言は、例えば「あなた(被害者)の気にしすぎではないの?」「女性が働くってそういうことでしょ:セクハラ等に遭うのは当たり前だろう」「それだけ君が魅力的ってことだよ」「え。それってモテ自慢なの?」「今までに性経験を持ったことはありますか?」などです。すでに傷ついて苦しんでいる被害者を責める発言・更に傷つける発言はやめてください。
これについて、登壇者の方がおっしゃっていたのは
◇たとえ被害者に非があったとしても、加害者が免罪されることにはならない。そもそも、本当に罪を責められるべきは加害者であるはずなのに、被害者が悪いと責められること自体がおかしい。
◇性暴力は支配欲から来ていて、弱者(判断される側)につけこんで立場を悪用している行為だ。
などでした。まさにその通りだと思います。性暴力に限らず「いじめ」や「アウティング」など、目に見えない暴力によく見られることです。
強者が弱者をいじめ、弱者が声をあげようとしても、その周りの人(傍観者)が弱者をさらに傷つけてしまって、最終的に弱者は声をあげないままになってしまう。そしてこれが「普通」と化し、弱者・被害者が声をあげられなくなってしまう。この負のサイクルは、目に見えない暴力の温床になり、余計に強者に自信と成功を植え付け、苦しむ人が救われない世界を作ることにつながるのです。被害者が声をあげづらい環境を作ってはいけないんです。声をあげた人を守りましょう!人が受けた傷に対して「そうなんだね」「辛かったね」「話してくれてありがとう」と認められる社会をみんなで築きましょう。性被害に遭われたジャーナリストの伊藤詩織さんの言葉を借りると「ブランケットのように、声をあげた人を温かくつつめる」そんな社会を作りたいと思います。
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その後は会場からのアンケートに基づいて、登壇者が話をするコーナーになりました。
その中で特に印象に残った3つの話を記したいと思います。
まず1つ目 どこからがセクハラか。セクハラ発言やセカンドレイプ発言をする人は、なぜするのか。
前者について:セクハラの定義は様々ありますが、今回のイベントで町田さんが言っていた相手を傷つけるか否かの基準が適切だなぁと思いました。しばしば「相手が不快か否か」が基準であると言われますが、これだと緩すぎる上に、人によって価値観が違いすぎて基準になりえないと思っていました。しかし、町田さんのいう基準によれば、みんなが同じ価値観であるとは言えなくとも「相手を思いやる気持ち」が足されることによって、より適切に状況を分析することができるのではないかなと思いました。「相手を思いやる気持ち」を忘れずに、ひと対ひとの幸せなコミュニケーションを築きましょう。
後者について:セクハラ発言やセカンドレイプ発言をする人に、相手に加害しようとする意図はない場合が多いです。加害する意図でやっている人は、即座にやめてください。無意識で発言をしている人は「セクハラやセカンドレイプが何か・なぜダメなのか」が理解できていないことが一因にあると思われます。例えば、セクハラを女性にエロいことを言うことなどと考えて、セクハラがダメな理由をきっと「会社がそういっているから」「セクハラすると仕事がなくなるから」「女がうるさいから」などと思っているのではないでしょうか?これに対して、セクハラをはじめとする性暴力は〈男性から女性へ〉という構図で捉えられがちであり、実際に被害の件数等を見ると圧倒的に女性が被害者になることが多いので、たしかにそう捉えることが間違っているとは言いません。しかし、必ずしも常にそうであるとは限らず、DVもレイプもハラスメントも、女性から男性へ・年下から年上へなど、様々な形があって、結局は個人から個人へという構図であることを忘れないでください。そして、なぜセクハラやセカンドレイプがダメかというと、人を傷つけるからです。人を蹴ったり殴ったりすることと同じく暴力だからです。これをただ私がここに書いても、加害者の心にはなかなか届かないので、自分の言葉で各々が「セクハラやセカンドレイプが何か・なぜダメなのか」を考え直してみることが大切だと思いました。
次に2つ目 被害者はどのようなアクションをとればいいのか。
これは難しい質問です。被害にあった直後の対処についてではなく、被害があったことをどう社会に発信するかという点に絞って記します。もちろん、性暴力によってできた心の傷は周りからはわからないほど大きなものなので、自分を守ることに必死で人に話せない人もたくさんいます。ましてや社会を変えるなんて大それたこと無理!という人もたくさんいることでしょう。むしろ、そういう人の方が多いはずです。そう思っているときは、そのままでも大丈夫です。言いたくないことをわざわざ言う必要はありません。でも、自分の被害をきっかけに社会に物申したい・社会を変えたい!と思う人は、#metoo など、ぜひアクションを起こしてみてください! 町田さんは「自分の半径50cmから変えていく意識をもって動いている」と、そして小川さんは「人を・社会を変えていくのは連鎖で、誰かの背中を押す人は自分とは限らないけれど、必ず誰かの背中を押している。自分があげる声は小さな声ではないよ。」とおっしゃっていました。この言葉から私は勇気をもらって、人に話してみようと思いました。とはいっても、声をあげるときに上にも書いたようなセカンドレイプが怖いですよね。そんなとき、自分(被害に遭った人)に非はないことを知る、自分にどんな酷い言葉が来るかを知る、そして自分には味方がたくさんいることを知ることが、辛い言葉を浴びても、それを切り抜ける支えになると思います。私もセカンドレイプを恐れていたのですが、私を守ってくれる人や場所がたくさんあることを知って、登壇者の皆さんのように既に外に発信している人に対してどんな嫌な言葉が言われてきたか・言われているのかをチェックしたことによって、私が自分の体験を話して非難されても「それセカンドレイプだよね?」と冷静にみることができるようになりました。人は必ず強く在ることができるわけではないし、三浦さんもおっしゃっていた通り「#metoo した人が強い人と思われる。#metoo の動きは、性暴力に遭った時に被害者が強く在れ!という動きではない」ことを念頭において、話してみたい人は、自分の信頼できる人・共感してくれるであろう人に、できるところから話してみるのもいいかなぁと思います。
そして3つ目 日本の#metoo はどうか。
日本の#metoo の動きは比較的早く鎮まってしまい、あまり盛り上がりを見せませんでした。そして先日#wetoo への転換も見られはじめ、当事者意識の拡大が始まっているようです。(#wetoo については、また今度記事を書きたいと思います。)日本の#metoo がなぜアメリカなどの動きと比べて盛り上がりを見せなかったのか、登壇者の方の意見を踏まえて考察してみたいと思います。その理由は①芸能界やスポーツ界からの声がほとんど上がらなかったこと:アメリカではハリウッド映画にバンバン出ているような、有名で影響力のあるスターたちが声をあげたことによって、一般の人にも広く動きが波及したと言えます。②まだまだ男女問わず#metoo で声をあげられる人が少ないこと:声をあげることは、友人や仕事などを失い、人生を180度転換させてしまうようなリスクを孕んでいるため、あまり簡単にはできないことです。告白を強制するつもりは全くありませんが、残念ながら社会に・加害者に声を届けるには被害者の声が足りなかったのだと思います。③加害者側(多くは男性と言われますが)の受け止める力がなかったこと:日本の#metoo では「自衛しろ!」とか「何でもかんでもセクハラか!」など、 #metoo で声をあげた人に対する非難が多く、残念なことに真面目に取り合う加害者がいなかったことも一因でしょう。そして、最も大きな要因であると私が考えているのは④声をあげた人を守るという状況・環境がなかったこと:いくら被害者がTwitterなどのSNSやテレビなどのメディアで、顔を出したり、実名で被害を告白したりしても、それを応援する世の中の声がほとんどなかったことで、社会としての大きな波を作るには至らなかったのだと思います。
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このイベントを通じて、目に見える形で「味方がいる」ことに気づけたことは私にとって心の支えになりました。でも、社会を変えるためには、もっともっと大きな波を作らなければならないのかと大変さを痛感しました。そのためには、誰もが被害者にも加害者にも傍観者にもなり得る、自分にも起こりうる問題だと意識して動くことが重要だと思います。
今後は#metooから #wetooへ の動きがあるように、私たちが苦しむ人の声を守り、私たちが性暴力を許さない社会を作っていきましょう!性別問わず、社会の大きな波を作れますように!!
長くなりましたがお読みいただきありがとうございました。私たち(中央大学SEXを考える委員会:CSC)も、性暴力をなくす動きを学内を中心に進めていきます。
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(中央大学SEXを考える委員会 めぐみ)