Jeff Beck / Flash 音源備忘録57
ジェフ・ベックのソロ・アルバムは『Blow By Blow』(1975)、『Wired』(1976)の2作が名盤とされているらしいが、私が初めて、しかもリアルタイムで聴いたのはこの『Flash』。インストは2曲だけで、これだけヴォーカルが入るアルバムはソロ名義では珍しいが、今にして思えば初心者の高校生には入りやすかった。
ジェフ・ベックといえばピックを使わず指でギターを弾くことが知られているが、指弾きメインになったのが80年前後で、アルバム単位ではこの『Flash』かららしい。つまり指弾きならではの特徴的なサウンドがほぼここからということだ。まだ音楽をそれほど聴きこんでいない若い頃の私でも、以後は「ジェフだ」とすぐにわかるようになったのはこのアルバムから聴いたからかも知れない。
しかし今聴くと、いかにも80年代的なシンセと打ち込みドラムの音が妙に気になる。しばらく後のテクノ・ロック風な方向性と違って、安易にトレンドを導入しているようで複雑である。ナイル・ロジャースのプロデュースというのもその匂いを感じる。
初心者にとってヴォーカルが入る曲が多くて入りやすいアルバムなのは事実だったが、その後の作品やそれこそ『Wired』なんかを聴くようになると、歌なくてもいいのでは?と思い、『Flash』はあまり聴かなくなっていく。歌のせいかはわからないが、ジェフ本人も好きではないと発言していたらしい。“People Get Ready”のロッド・スチュワートは素晴らしいけれど。
そういえばジェフが亡くなったとき、テレビの情報番組などで“People Get Ready”を代表曲のように流しているのがもの凄く違和感があった。仕方ないんだろうけど…。