Beatles '64 (Music from the Disney+ Documentary) 音源備忘録59
ディズニープラスで公開されたビートルズのドキュメンタリー映画のサウンドトラック。映画に合わせてリリースされたボックス『U.S. アルバムズ・イン・MONO』と違って、このサントラは「デジタル・サウンドトラック」というので配信だけなのだろう。
ビートルズ関連はドキュメンタリーに限らず映像も音源も大量にあるが、90年代の『アンソロジー』でほぼ出尽くしたと思っていた。ところが2021年の『ゲット・バック』(こちらもディズニープラス)が公開され、そして今回の『~'64』の公開となる。これらは、単なる未発表映像や未発表エピソードということだけではなく、フィルムやテープの劣化や音声の聞き取りにくさなどで未公開に「せざるを得なかった」ものが日の目を見たということで、テクノロジーの進化によるところが大きい。ということは、今後他にも出てくるのでは?という期待もしてしまう。
一方、このサントラははっきり言って珍しくもない単なるコンピレーション。カヴァー曲とそのオリジナルを並べているのがちょっと目新しい程度。それでも曲順や曲ごとの聴いてる頻度の違いが新鮮で、“Till There Was You”は5年位は聴いていないし、チャック・ベリーの“Roll Over Beethoven”はおそらく20年振り位?ミラクルズの”Yesterday”カヴァーは初めて聴いた。こんなことでも楽しめるのは単に私がビートルズ好きだからなのか。自分でプレイリスト組むより他人の発想の方が予想出来なくて面白いのと同じで、オフィシャルでこういうのを出してくれると有り難い。
ところで、昨年の『赤盤』『青盤』のように最新技術でのリマスターが出るのは歓迎すべきことなのだが、本国オリジナルアルバムもモノラルのデジタルリマスターがApple Musicにラインナップされて欲しい。『MONO BOX』が2009年に発売されているし、今回発売の『U.S. アルバムズ・イン・MONO』はその名の通りモノで『U.S. アルバムズ』のストリーミング版はステレオ・モノ混在だがモノ・ミックスは全て2009リマスター。それらを考えると、オリジナルアルバムのモノ・ヴァージョンも存在している筈なのだが。
ここまでモノラルにこだわるのは中期まではモノラルがメインだから(『Yellow Submarine』『Abbey Road』『Let It Be』の3枚はステレオのみ)なのだが、電子書籍版音楽雑誌『ERIS』第15号に掲載されたピーター・バラカン氏によるジョージ・マーティンのインタビューを読んだことが大きい。
「それはビートルズが決めた音ではない」が印象的。この話を読むと、現在のステレオ盤を否定するわけではないが、モノラル・ヴァージョンもストリーミングで気軽に聴きたくなる。出来たらステレオと聞き比べたいという願望も出てくる。まさか深いとこまで検索したらモノ・ヴァージョンが出てくるとかないだろうな。
結局は大人しく『MONO BOX』買えば?という話なのかも知れんが……。