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The Reggae Philharmonic Orchestra 音源備忘録38

 レゲエ・フィルハーモニック・オーケストラ。リリースは1988年。スティール・パルスのメンバーだったミカエル・ライリーが手がけたグループということだが、あまり情報がない。日本盤ライナーノーツにも「詳しいことはほとんど分かっていない」という記述があるが、2024年になってもわからないのは同様で、少なくともネットでは見つけることができなかった。

 それでも、どんな音楽かというのはグループ名が露骨に現している。ロックやソウル、クラシックやジャズと比べても、レゲエというジャンルの指し示す範囲が限定的であるからだ。そしてネーミングがシンプルでわかりやすいが、アイデアは斬新である。

 当然、その斬新さに惹かれて入手したのだが、それほど驚きはなかった。どちらかというとアレンジもミックスもおとなしめというか、レゲエによく見られるアクや攻撃性が薄められた、聴きやすいモノになっている。驚くというよりは違和感がジワッと染みてくるような作りとでも言おうか。

 ただ、おとなしさというのは1988年という時期が関係しているのかも知れない。デジタルのマスタリングがまだ確立されていないため、アナログのマスターからそのままCD化したものは音にパンチがなかったりすることが多く、特に旧譜に顕著だった。そのため当時パブリック・エネミーがレベルを上げて録音したという逸話があるし(真偽は不明)、90年代以降にデジタルリマスターが数多く行われることになるのもそれが理由だと思う。このアルバムがどうかというのは、リマスターどころか廃盤のまま再発されていないので確認のしようがないが、そうであっても不思議ではない。できればリマスターorリミックスされたものを聴いてみたい。

 情報がないこと、再発されていないことからそこまで需要がないことは推し量れるが、単に売れないだけではなく、畑の違うストリングスやホーンの多くのメンバーを集めるだけで大変な労力がかかるから、継続的に活動することが難しいのだろう。せめてこのアルバムだけでももっと認知されて欲しいと思うが、再発どころかストリーミングにも出てこない。残念である。

↓こちらはYouTubeに上がっているもの。アナログ盤からの全10曲。CDは2曲目(A2)と9曲目(B4)のインストが入って全12曲。


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