本投稿は、ティツィアーノによる《ノリ・メ・タンゲレ》(1514)の絵画空間を探るスケッチとして書かれている。 本作の主題を聖書の記述から確認しておこう。キリストは復活後、マグダラのマリアの前に現れるが、最初、彼女はキリストを庭師だと思っている(キリストは鍬を手にしている)。彼女が気づいたとき、キリストは言う。「わたしにさわるな。まだ父のもところに上っていないから。わが兄弟たちのところへ行って、「わたしは、わが父であなた方の父、わが神であなた方の神のところへ上る」と告げよ
* * * 郊外のファストフード店には、クリーンな時間が流れている。 平日、昼下がりの時間帯は、子供づれの家族客が全体の六割を占め、残りの四割は年配客やおそらくは学生と思われる若者たちによって埋められている。多くは馴染みの常連客だ。店員たちの快活な声と子供たちの素っ頓狂な叫び声が、店内にひしめくほかの雑多な音を絶えずかき消している。この時刻に近づくと、まるでつくりもののように歯車がぴったりとはまった時間が徐々に機能しはじめる。 彼は夜中の零時過ぎ、客が数人しかい
今年4月、美術史とその方法論にかんする査読付きオープンアクセス・ジャーナル『Selva』が静かに立ち上がりました。これを機に、創刊号に再掲載されている、T・J・クラークがみずからの「芸術の社会史」の立場から美術史という学問の再編を迫ったマニフェスト的論文「芸術創造の諸条件」(T. J. Clark, “The Conditions of Artistic Creation,” <https://selvajournal.org/article/tj-clark-conditi