藍月なくる 2ndライブ『鏡像崇拝』ライブレポ
8月31日(土)LINE CUBE SHIBUYA.
一二三(Hifumi,inc.)所属、リアルとバーチャルを行き来するインターネット発の声優/シンガーである藍月なくるの2ndワンマンライブに行ってきました。1stは今年の2月4日に開催されたので約半年ぶり。このスパンで観れるとは思わず、今回も無事にチケット握れて良かったです。キャパでかいし。
1stからガラッとセトリも雰囲気も大分変えて、世界観つよつよライブでしたね。良い意味で裏切られた。1stはなくるさんの多彩な一面を網羅できる様なライブだったんですが、それとは対照的に2ndはコンセプトもきっちりかっちり決まって、芸術性高めなライブ。最初から最後まで、表題曲である「Mirroring Mirage」を完璧なまでに演じ魅せ切ったライブだったなと。
開幕「Defective」の一時中断演出からハイライト。あそこで倒れた藍月なくると、ステージ上部に登場したもう一人藍月なくる。こちらが間違いなく本人でありながら、何かを演じてる、舞台・演劇っぽさが最後まで貫かれていたのは面白かったです。ステージセットもキービジュアル通りの世界観が既に出来上がってて豪華でしたからね。高さや奥行きも利用して、ステージ上段への両サイドの階段が横向ではなく前後だったの結構新鮮だったなと。できるステージ限られてくると思うので。他はまた後で触れます。
2曲目に披露した表題曲「Mirroring Mirage」に寄り添う様にセトリも組まれてた印象はありますね。ダークゴシックな雰囲気で、美しさと陰鬱さが共存してる楽曲多め。と云うか、モチーフ繋がりでシナジーがある楽曲が意外とあるなと。「Fragile Utopia」「唾と蜜」「mirror」辺りは特に今日だからこそ輝きを放つ布陣だったなと思います。「mirror」の時の照明がガチで良かったですね。四方から当てる角度も色味も分けて、本人には白でライトアップ。できるのならばシャッターを切りたくなる綺麗な画でした。
世界観を創り上げるのに協力してくれたのは、1stから続投だったダンサーさん2人。結構激しいメロディが来ても、そこまで振り付けあるの?!って驚かしてくれました。体力凄い。普通のダンスは勿論、楽曲によってはミュージカルっぽいダンスもあって、なくるさんと3人での一体感も良きでした。
唯一和んだのは、La prièreとして共に活動している、nayutaさんと棗いつきさんがゲストとして登場した中盤ですかね。でも、ここでも2人を双子人形として扱かってたので、一応徹底されてはいたのかなと。マスター呼びさせてる掛け合いは純粋に面白かったですがw La prièreで披露したのは「君よ」と「禁断の愛と魔剣」、後者は歌いながら演技もアリで、もう舞台そのものだったなと。その後はゲスト2人のソロパートもあり、なくるさんがライブコンセプトに合う様に歌って欲しい曲を歌わせた模様。それぞれ1曲だけでも自らの歌で自らの空気に変えてて素晴らしかったです。
ライブ折り返し辺りで衣装チェンジ。ゴシック調のメイドさんみたいな衣装から、キービジュの白いドレス姿に。ステージセットがどちらかと云えば暗めなので、白い衣装の方が存在感はありましたね。目で追いやすい。後半戦では、曲振りのMCと、冴え渡る映像が印象的でした。
曲振りについては、MCでステージセットに林檎や薔薇、鏡など数々のモチーフがある中で、蝶についてコメントしたのが始まり。蝶は死と再生の象徴として有名ですが、「もし死んじゃったら皆んなに捕まえて貰って標本にして欲しい」みたいな事言ってて、相変わらずだなぁと。前回はMCで「死ぬまで忘れないで」みたいな事言ってたし、「最期は海の底までついてきてよ」って歌ってるし。それで、「そんな想いが込められているのかどうか解りませんが…」みたいな曖昧さを残した曲振りで「ガラスアゲハ」を披露してくれましたね。本当に今回はやたら余白を残すMCが多かった。
何はともあれ「ガラスアゲハ」は良い曲…。バックスクリーン映像も本当に綺麗で、制作されたTorochさんが一部上げてくださってたので見て頂ければと。反射を繰り返す色合いと煌めきに満ちてて好き。PCの壁紙にしたい。
本編ラストは「Monodrate」だったんですが、これまた聴けて良かった。イントロの和風ホラーな感じ好きなのよ(殻ノ少女オタクより)。しかし、振り返るとラストに持ってくる曲としては異質だよなぁと。決して厭とかではなく、余韻が特殊すぎる。今回のライブが"2nd"であり、コンセプトライブだから許されたまである。もしアンコールが無かったら…と考えるとゾッとします。もう少しあの余韻に浸っていたかった気持ちもありますが。
アンコール後は、前回同様グッズ紹介と、長めのMC時間取られました。が、衣装は白ドレスそのままだし、ライブに込めた想いなどは敢えて語らずでしたね。と云うのも、「難しい事を考えると疲れちゃうと思うし」との事で。崇拝、延いては信仰の在り方としては間違ってないですね、はい。
「好きになってもいいし、穢してもいいし、消費してもいい。私もそれを望んでいるし、満たして欲しい。ありのままでいい、って皆んなが言ってくれた、"藍月なくる"でいられるのが好きだから、楽園から追放しないでね」とメッセージも残してくれて。前回のライブで、「私は虚無だけど皆が藍月なくるって呼んでくれるから藍月なくるでいられています」ってMCも思い出されましたね。
余白多めなMCを聞いて考え事してる内に、アンコールで披露された曲は「テアトル・エンドロール」でした。彼女自身が昔に作詞もした曲で、「小っ恥ずかしもあるけれど、あの頃から変わってないとも思うし、方向性は変わってもいる」みたいな曲振りだった気がします。なので、今回用にアレンジされた特別ver.で披露されました。オリジナルの美しさはそのままに、どこか影が落ちた様なアレンジで、本編ラスト「Monodrate」の余韻をもう一度引っ張り上げてくれました。コレはコレで好き~。今日しか聴けないの惜しいくらい。でも、それだけ意味のある1曲だったと思います。
披露後は、スカートをサッと摘まみ軽くお辞儀だけしてステージを捌けていく藍月なくる。そして、クラシックなピアノ曲と共に流れ出すエンドロール。これで終わりかと思いきや、ステージ上段にある、誰も座っていない椅子にスポットライトが当たって幕を閉じました。演出凝りすぎ~。
約2時間、集団幻覚でも見ていたのかと思わせる演出だったなと。ずっと見ていたライブのあの世界は創りモノだったのかもしれないけれど、そもそもライブ自体が創作物。鏡像は本人がいて初めて成り立つと素直に考えてみても、彼女自身と我々が望んだ"藍月なくる"がそこには存在していて。その一つの世界を観れた、と云うか導かれたのが今回のライブで。バッドエンドかもしれないのだけれど、これだけ想像させる余白みたいなお洒落なモノを残してくれたのは、エンターテインメントの極致として彼女が生み出せる最大限を出してくれたんじゃないかと思って、凄く満足しています。解り易いハッピーエンドとはまた違った趣。それに前回とは違い、配信もなく、円盤にも残らない。かなりクローズドと云うか、現地にライブ観に来た人だけが正しくあの世界を認識出来たのは素直に嬉しいですよね。台風が迫っていた中、遠路はるばる会場に来たファンの皆んな凄いで…(拍手)。
とゆー事で、考察とも言えない感想を並べましたが、彼女がライブに込めた想いを語らなかった様に(語ってしまったらそこで世界が崩れるとも取れるが)、もっと純粋に音楽を楽しむと云うか、ライブの一瞬一瞬を逃さず、その時々の感情の揺らぎを大切にすれば十分だと思うのでね。実際、前回以上に歌が紡ぐ世界を堪能できて最高でした。言葉であの世界を語り尽くせるとか決して思い上がってはいけないし、言葉よりも目の前で感じた"ありのまま"をいつも通り刻んでおきたいですね。それこそ健全。告知もあって、来年3月に誕生日ライブを開催するとの事で楽しみです(ライブ開催しすぎて凄いわw)。改めて、素晴らしいライブをありがとうございました!