『GINKA』感想
どうもです。
今回は、2023年10月26日にFrontWingより発売された『GINKA』の感想になります。
主題歌「Star Trail」は好きです。やっぱ松本文紀先生の曲が好き。美しいピアノの旋律、爽快で開放感抜群のメロディ最高ですね。長谷川育美さんも透き通った綺麗な歌声ですわ。
プレイしたキッカケですが、2020年6月19日に発売された紺野アスタ×ゆさの による『ATRI』が面白かったから。アニメ化も決まりましたね。前情報からも『ATRI』と似た良作品な雰囲気があったのでプレイした感じです。
では、感想に移りますが、受け取ったメッセージと、雑感をなるべく簡潔に書けたらなと。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。
1.受け取ったメッセージ
単刀直入に云うと、本作は"願いの物語"でした。プロローグからラストのエンディングまで通して"願い"が中心にありました。そんな物語から受け取ったメッセージを一言にまとめると以下になります。
願いが叶う叶わないではなく、それ以前にその願いを伝えたい相手に、伝えるべき言葉で伝えられない事が最も哀しい事だと感じました。もし流星と銀花が想いを伝えられていれば、あんな事にはなっていなかったかもしれない訳で。実際、エンディングでは世界線が変わり、6年前の夏祭りでも流星と銀花が想いを直接伝え合う事ができました。
カタシロに書くだけで伝えられずに終わってしまった願い。流星が願いを伝えるべき相手は神様ではなく、銀花だったはずです。加えて、彼の願いは『壊れていない心臓がほしい』ではなく、本当はその先『生きたかったんだ、銀花と』が真っ先に伝えるべき言葉だったと思います。
銀花も同様に『流星に生きて欲しい』ではなく、『ずっとずっと、流星と一緒にいたい』が本当の想いであり、それはギンカになっても尚、新しく芽生え流星との想い出を覚えていようとしていました。お役目様だってしきたりに反して、想いを伝えるべきだったのです。物語終盤でも最後の夢を見る時にはそのような姿にしっかりなっていましたね。
前夜祭でカタシロの内容を確認するときには、ひまちゃんもギンカとのやり取りで以下の様に言っていましたね。
"ちゃんと自分の言葉で"が大切だと思います。物語に於ける神様周りの伝承や、四ノ宮一族のお役目もですが、伝わっていくうちに少しずつ変わってしまう可能性があります。
カタシロは願い(想い)を宿す器でした。でも時に願いは呪いとなります。反対に、呪いは《まじない》と読むと神秘的な力に頼った願いにもなります。詰まる所、願いと呪いは鏡像であり表裏一体のモノです。(作中では呪いの側面が大きかったですが)
願いがあるから呪いが生まれるし、同様に希望があるから絶望が生まれます。そこには比例関係もあって強い願いは、より強い呪いを生むことになる事が常です。「NEXT」以降の物語、銀花も流星もそれに苦しむ姿が沢山あったので、プレイした人なら伝わってきたはずです。
だから、"本当の想い"が違う形に変わってしまわない様に、伝えるべき言葉を持ち合わせておく必要があるはずだと思いました。ギンカが現世でカタシロから流星の前に現れたのだって、この"本当の想い"を現世の銀花と流星に忘れて欲しくなかったからに他ならないです。
続いて、伝えるべき相手ですが、リン姉の願いが最も分かりやすいと思います。彼女は『婆ちゃんさえ、いなければ』と、気持ちは解るけれども余りにも身勝手な願いを書いてしまっていました。それが叶わない願い事だったばかりに呪いに憑かれてしまったのも事実です。ここから考えられるのは、彼女は『婆ちゃんさえ、いなければ』と直接お婆さんに伝えられるでしょうか。家族想いな性格からして無理だと思います。だから、叶わない。伝えられない想いは叶わないんです。
願いがあるのであれば、それを伝えるべき相手に本当に伝えられるのか、相手のためなのか考えなければならないと思います。
最後に関連してもう一つ。生まれてきた事を呪ってさえいた流星は、銀花と出逢いもっと生きたいと願うようになりました。呪いが願いに変わった瞬間ですね。今作では流星を通して、願い(想い)を持つ事が生きる希望に繋がるとも伝えてくれていたように思います。
流星の心臓が神様に返された時にも、生まれて来た事が罪であってはならないと説いていました。生まれて来た事を呪う神様の望みを叶えるのは、俺の生まれた意味を否定するに等しいと、叶えない選択がTRUEでしたね。
生まれた来た意味を否定してはいけない。時に願いは呪いになってしまうかもしれないけれど、その覚悟も持って先述した様に伝えるべき言葉と相手を見失わなければ、生きる希望として願いを持ってよいのだと思います。それに、願いや呪いは純粋な【祈り】になる事だってありますので。祈りは常に誰かの為にあり、そこには必ず幸福があると私は思っています。
受け取ったメッセージは以上になります。何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら、嬉しいです。
2.雑感
正直に云うと、ごめん微妙でした。「NEXT」になってから余りにダレてしまった印象です、ムリな人は途中で一気にやる気なくす系。着地点がある程度視えてしまっているから余計に、鼬ごっこ的な展開が何度も続いてしまうのが読み辛く、もっとシンプルにならなかったかな…と思った次第です。
途中まではむっちゃ良かったんです。が、理由付けや辻褄合わせによって複雑になっていくに連れて、その複雑さが逆に物語を貧しくしてしまっていた、感情の流れや余韻を妨げてしまっていたように私は感じました。その辺りの物語構造の細かい分析から面白さを見出すのは幾らでもできるけれども、初手でプレイヤーにその様な事を考えさせてしまった時点で物語としては貧しく物足りなさを感じさせてしまい私の好みからは外れます。感動というものは人の本能に直接呼びかけるモノです。その感動の瞬間が勿論あったけれども、その時にはもう感情動線が既に切れてしまっていて。ここをキープさせる物語になっていればもう少し違った感想を持っていたかもしれません。また、否が応でも『ATRI』と比較してしまうので、『ATRI』のスッキリした構造と比べてもやはり見劣りしてしまう作品だったと思います。
かなり偉そうに辛口な感想になってしまいましたが、ここからはポジティブな感想を。紺野アスタ先生の文章自体は『ATRI』と同様で読みやすく、掛け合いも普通に面白かったです。キャラも可愛らしく描かれていましたし。神様を始め、願いや呪いなどの神秘的な要素(伝奇要素)によるラブストーリーや人間ドラマの彩り方も悪くは無かったです。神秘的だと自然と美しくロマンチックな雰囲気が出ますからね。作品を通したメッセージも先述したように確かに受け取る事ができました。何より流星と銀花がお互いにとって生きる希望だった気持ちを最後の最後まで大切に持ち続けていたのが伝わってきたのは良かったです。
原画は、ゆさのさん、渡辺明夫さん、ななかまいさん(SD原画)。透明感のある綺麗なイラストばかりでした。立ち絵もCGも。キャラクターも大変可愛くて、特に渡辺明夫先生のキャラデザは『グリザイアシリーズ』やアニメ『物語シリーズ』などで元から大好きだったので、可愛いキャラクター達を見れてとても満足しています。お気に入りのCGを1枚選ぶとしたら、クリア後のタイトル画面の銀花の笑顔ですかね。
声優は、メインで長谷川育美さん(ギンカ)、森嶋秀太さん(七守 草二)、長縄まりあさん(海野 ひまわり)、伊藤彩沙さん(涼代 リン)、安済知佳さん(荒羅伎 なずな)。全員素晴らしい演技でした。アニメなどでもよくお聞きする声優さんでしたし、馴染みある声をノベルゲームでも堪能できた事嬉しく思います。一人選ぶのであれば、長縄まりあさん演じるひまちゃんが好きでした。一人称"ひま"なのが狂おしいほどに好きです。
音楽は、松本文紀(szak)さん。同じFrontWingの『グリザイアシリーズ』を始め、『素晴らしき日々』や『サクラノ詩』などでお世話になっている、大好きな音楽家さんの1人なので今回もとても満足しています。夏らしい空気感と、神秘的なのにどこか懐かしい雰囲気を醸し出す楽曲が多かった印象です。「カタシロと願い」と「一葉の夢」が特に気に入っています。また、歌唱:青木陽菜、作編曲:UNDER_COVERS、作詞:midoによるEDテーマ「夢浮橋‐ユメノウキハシ‐」もむっちゃ好きです。メロディ神。
とゆーことで、感想は以上になります。
改めて制作に関わった全ての方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。"紺野アスタ"先生の作品、実は他にもいくつか積んでるので、またいつかプレイさせていただきます。
ではまた!
©Frontwing
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