『everlasting flowers』感想
どうもです。
今回は、2024年8月29日にspriteより発売された『everlasting flowers - Where there is a will, there is a way』の感想になります。
「Convallaria」はガチ名曲。藤永龍太郎さんらしい、胸に迫るエモーショナルなメロディがドストレートな盛り上がりで流れ込んできてヤバい。プレイ後だと更に感動できましたね。歌詞も良すぎるし、サビで涙止まらん。
sprite10年ぶりの完全新作と云う事で、ファンとしてはプレイするしかない!って感じで、以前から期待していました。制作陣も大きく変わっていないですし、このブランドが打ち出している"FILMIC NOVEL"の感動をまた味わいたい!って気持ちも強かったです。
では感想に移りますが、受け取ったメッセージとそれを補強してくれそうなキーワード、キャラクターの印象を書いていきます。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。
1.受け取ったメッセージ
本作は、変わろうと最初の一歩を踏み出そうとしてる人達へのメッセージが詰まった、優しい物語でした。何かを抱え、自分を変えたい、でもそう簡単に変われる訳じゃないと足踏みしてしまっている状態の人達へ。一歩踏み出すキッカケを与えてくれるとも思ったし、ほんの僅かでも行動を起こしたのなら、それを更に推し進めてくれるエネルギーも与えてくれたなと。
心に響いた言葉も沢山ありました。上記のメッセージも踏まえて最も印象に残っているのは以下の言葉です。
最終話、深菜の卒業式ですね。変われるんじゃないか…変わろう…変わりたい。そう思った時点で、貴方は変われるよ、って。何て優しく励まされる言葉なんでしょうか。でも、確かにその気持ちすら無かったら、変わろうと行動する事も絶対に無いですからね。その意思が芽生えたのは、貴方に勇気があったから。例えそれがどんなに小さくても、芽生えたのなら、その瞬間から"変われる"はずだって。自身を卑下する必要なんて全く無いし、その人だけの意思や勇気を尊重してくれる言葉だったと思います。
"最初の一歩を踏み出すこと"、このコツを教えてくれる言葉も併せて振り返っておきたいところ。一つ選ぶなら以下。
引用したのは美智子さんの言葉ですが、蘭が深菜にも同じ様な言葉を掛けてあげてましたね。"まずはやってみる"、これが大切だって。不安や迷いがあって当然だし、最初から完璧になんて出来なくて。でも、そんな事は後にして、取り敢えず一歩踏み出してみないかと。それが大変なのも承知の上でエネルギーを消費するって正直キツイと思う。だからこそ、やってみただけ凄いって自分を励ましてあげていいのかもしれません。
自らアクションを積極的に取らない限りは、それこそ人生を変える様な機会は思ったより少ないなって年を重ねる程に思います。それに、年と共に経験を重ねているからこそ、ある程度それに基づいてアクションを起こすかどうか判断してしまう節もありますし。それが悪いとまでは思わないですが、もし迷ってる暇があるのなら、やってみるべきだよなと改めて。
変わる事って、難しいし、慣れないし、疲れる。でも、遣り甲斐を感じたのなら変わってる証拠とも思えるから。その過程で自分を変えていくのって楽しいとか思えればベストだし、あの時一歩踏み出して良かったって、後々その意味や価値に自然と気付ける日が訪れたら、素晴らしいですよね。きっと理想とした自分に近づけてるはずです。
変わろうと一歩踏み出した先で、どんな風に変わっていれば良いのか。そのゴールの一つ(通過点)も本作は魅せてくれたと思います。OGである紗波さんが深菜に掛けた言葉ですね。
"自分の人生に責任に持てる様に"、これに尽きますね。楽しい事から、そうじゃない事まで、しっかり現実と向き合って、それを招いた自分の選択とも向き合って生きていく。誰の所為でもなく、全部自分の責任。だって、自分の人生だから。幸せになりたいのなら、その為にも、もう大丈夫だと自信を持てる様になる位まで、ちゃんと考えて、ちゃんと行動して、ちゃんと自分の人生に責任を持たないとな、って。そう改めて思わされました。
世の中は自分にはどうしようもない不条理な事があるのも事実。外的要因やしがらみ等で、全部が全部を自分で決めていくのは難しいのも現実です。ただそれを盾にして何か都合よく理由を付けたりするのは違うんじゃないかなと。変えられない環境がある事とかも、受け容れた上で決めていく。自分の捉え方次第です。自分一人でどうしようもないのなら、誰かを頼る選択を取る事だって、立派な"自分で決める"事でしょう。
深菜にも、別に継いじゃダメとは言ってないんですよね。順序が違うって話。他人よりも先ずは自分。自分の人生に責任を持てる様になって初めて、誰かの為に行動してあげていいんだと。その時には、きっと何があっても踏ん張れる位の自分が信じる大事なモノもあって。きっと誰かに必要とされて「ありがとう」って言って貰える存在にもなっているはずです。
まとめます。ザックリ大きく3つですね。
変わる為に必要な事を説教臭く教えてくれると云うよりは、もの凄く親身なメッセージだったと思います。そっとキッカケを与えてくれる面もそうだし、貴方はもう一人で立てるよって。一歩踏み出したのなら大丈夫、そのままもう一歩、また一歩、踏み出せる様に。変わっていく貴方に向けて、追い風を吹かしてくれる、そんな作品。本当に優しさに満ち溢れていました。
変わっていく為に、踏み出す強さも、速さも、方向も、自分で決めていいんだよ、って思えたし。そうやって自分の人生に、幸せに、責任を持って。自分を愛して、愛される存在になっていきたいですね。
受け取ったメッセージは以上になります。何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら、嬉しいです。
2.キーワード(キーアイテム)
メッセージを補強してくれそうなキーワード・キーアイテム的なモノがいくつかあったのでまとめてみました。
【Cafe & Restaurant ラソンブレ】
ここで彼女達が過ごした期間は、一種のモラトリアム期間だったよなと。スマホ持込禁止で、人伝の口コミのみで宣伝している。できるだけノイズを排除し外界から切り離されて、自分自身の世界で本当に大切なモノを見つめ直す機会と環境を与えてくれたなと。やっぱり環境や周囲の人の影響は良くも悪くも大きくて、変わりたくても変われないって部分は少なからずあると思ってるので、この舞台設定にも優しさを感じました。代々のOGまでいて、受け継がれている処もグッときましたね。
【高校の制服】
深菜が疑問に思ってた点ですが、"陽子さんの発案である"、それしか明かされませんでした。単純に宣伝効果もあると思いますし、やっぱり青春時代を彩る重要なアイテムとして用いられたのかなと。学生達には、"学生時代にしか着られない"、この事実に向き合って欲しかった。陽毬ちゃんには、高校生に憧れて明るい未来を見て欲しかった、そんな想いもあるかもしれません。
【カラコンを始めとしたメイク】
女の子にとっての武装。深菜にとってはお守りでもあったし、やる気スイッチみたいなモノでもあったし、変化の兆しでもあったと思います。クラスメイト達には負けないぞ…的な気持ちにもなったんじゃないかなと。自分も好きな音楽を聴いたり、好きな服を着たりすると、自然と気合いが入るし、強くなった気がしますね。そう云った、勇気を引き出す手助けをしてくれる様なアイテムは持っておくに越したことはないです。
【ハーバリウム】
花の美しい姿を保ち続けるハーバリウム。変わらない美しさも勿論存在すると思ってますが、本作では、変わる事の美しさを描いてくれました。閉じ込められた花は、人の人生に当て嵌めてみても同じなんだと思います。残したくなる様な輝く美しい瞬間を追い求めてもいい。ただ、そこに依存して同じ場所に居続けるのではなく、また次の新しい瞬間へ変えていった方がいい。この想いは、毎年夏に新しい子がやって来る、この舞台そのものにも通ずる処でした。美智子さんの言葉も引用しておきます。
【鈴蘭】
タイトル画面にも沢山映っており、陽毬ちゃんが一番好きなハーバリウムで出てきた鈴蘭。こちらの花言葉は、「幸福の再来」が有名ですね。深菜と蘭の新たな門出を送り出してあげる際、2人の元に幸福が訪れますようにと、自然とそんな想いが込められていたと思うとステキですね。
【猫の"みゃー"】
序盤で顔を見せてくれた、白黒ハチワレの猫ちゃん。スピリチュアル的には、縁起の良い猫らしく、額の模様である"八"の字から、未来を明るく照らす幸運の暗示という意味があるそう。鈴蘭の花言葉と近い処があります。
【Tomorrow is another day】
英語のことわざ。「明日は明日の風が吹く」の意ですが、もっと何事も良い意味で気楽に考えていいんでしょうね。その位人生はわからない。何か偶然めいた事だってあるだろうし、それでキッカケを掴める事もある。まずはやってみて、変わってみて、良かったとか悪かったとかも、その時また後で考えればいいんだと。蘭の言葉も改めて引用しておきます。
【Where there is a will, there is a way.】
英語のことわざpart2。本作のサブタイトルです。「意志あるところに道は開ける」の意で、クリア後にはピッタリだなと思えるサブタイトルでした。最初の一歩を踏み出す、その意志を決して失わないようにしたいと思います。
【カクテルの色】
5人での乾杯シーンで出てきたカクテルと緑茶ですね。各々が手に取った色に意味があり、その人らしさを表していると思って調べました。かなり的を射てるので、良ければご自身でも調べてみて欲しいです。
合計9つですね。「1.受け取ったメッセージ」と併せて、花を添える様に各自で解釈をして頂ければと思います。
3.キャラクターの印象
【坂下 深菜(CV. 上田麗奈)】
本作で最も感情移入してしまった娘でした。『いちばん大切なもの』が『怖いもの』に変わってしまった苦しみもそうだし、蘭にピシャリと言われてしまった時は、その通りではあるけれど、キツくて泣いた。元々はちゃんと出来てる娘だったからこそ、余計に苦しかった。彼女は自分を蔑ろにしてしまう程の気遣い屋さんだった訳ですが、裏を返せば、それだけ感受性も高く繊細な、思い遣りの強い娘だったと思います。少し不器用で涙脆いのだけれど、ちゃんと辛抱強さもあって。その変わらない強さもあったから、次第に本来の自分を取り戻し、変わっていく姿が胸を打ちました。活き活きと表情豊かになり、海で笑顔を魅せてくれた時も嬉しくて。今の彼女なら、もう後ろ向きになる事も無く、きっと描いた夢を叶えられるなと、心の底からそう思えるエンディングでした。誰かの為に行動できる処がやっぱり好き。
【星野 蘭(CV. Lynn)】
何事も前向きに考え、人前では自分を包み隠す事も無い娘でした。持ち前の明るさで、周りまで明るくしてくれて。その辺りの性格は深菜とは対照的でありながら、深菜と同じ様に強い意思がありました。幼い頃から、ずっと制限されて束縛されて抑圧されて、違和感に気付くと同時に決意した、"好きなように生きていく"と云う想い。内に溜まっていた反骨精神の類もエネルギーになっていたと思うので、その想いの強さは計り知れません。だから、コントロールできない時もあっただろうし、真っ直ぐな性格も相まって、深菜には言い放ってしまった訳ですし。でも、それだけ意思が固く、ブレない芯を持っているのが彼女の魅力です。今度は私が誰かを救う番だと、深菜の為に背負っていた想いが垣間見えたのも推せましたね。我は強いけど押し付けがましくない、自然な感じ。”Rebellion”って書かれてるTシャツ好きよw
【橘 紗波(CV. 齊藤千和)】
OGとして登場したお姉さんポジ。大学生として、自己研鑽に励む傍らで、大好きな蘭の事も気に掛けてくれている優しい人でした。一見すると、お淑やかな印象でしたが、普通に可愛いらしく甘えん坊なのか?って一面が垣間見えたのも良かったです。心に深い傷を負っていますが、それと上手に付き合い生きてきたからこそ、誰とでも対峙できる心を持ってる人だったと思います。落ち着いた佇まいも頷ける。追いつきたい"あの人"は気になりましたね。齊藤千和さんのお声も最高でした…優しく𠮟られたくなるわね。
【成瀬 陽毬(CV. 富田美憂)】
まだ中学生ながら、本当に只々しっかりしてる娘でした。両親を喪った悲しみを乗り越えてきたのだから、相当です。大好きなこの店を継ぐんだと、揺るぎない固い意思が眩しく逞しく映りましたね。凄く刺激を貰えました。真面目で面倒見も良く、向上心もあって。自分の中で確かな答えを持とうとしている姿も印象的でした。その一方で、色んな事に興味関心があったり、感情を表に出してくれたりするのは年相応で、屈託の無い笑顔もとても可愛かったですね。彼女なら必ず立派な看板娘になっている事でしょう。
【柳瀬 美智子(CV. 宮寺智子)】
普段はどちらかと云えば飄々としているけど、仕事モードになるとテキパキ何でも作れちゃう凄腕料理人。メリハリある人でしたね。残され、託された側は本当に辛かったと思いますし、今でも色んなモノを背負いながら踏ん張っているはずで。でも、そんな苦悩する姿は決して見せてはいけないと、誰よりも素直かつ人間臭い人だったのかなと思います。どんな状況・相手でも柔軟に対応して、正しく言葉一つ一つを選べる人でもありました。お客様や、毎年訪れる傷ついた子達を沢山見てきたからでしょう。心に響く言葉を優しく掛けてくださって、改めてありがとうございました!
4.イラスト・音楽・システム
原画(メイン)は、『蒼の彼方のフォーリズム』でもお馴染み、Suzumori先生。絵のタッチが変わっており、より線が細く、淡く柔らかくなった印象を受けました。作風にフィットさせた部分もあるかもしれませんね、個人的にはかなり好きです。他にも、一人称視点を始めとした没入感ある構図や、スクロールしていく事で全貌が見えてくる縦長・横長のイラストも多くありました。寄りと引きを行き来する緩急も良く、この辺りの工夫は差分多数、CG枚数自体も大量に用意したからこそ成せるクオリティだったなと。本作の世界や、彼女達の心の機微を丁寧に描いてくださったので、作品に浸っている時間が本当に幸せでした。どれも良かったですが、2人が手を繋いで笑顔でお祭りに行くシーンと、卒業式のシーンで陽毬ちゃんと深菜のCGの構図が重なるのヤバすぎて最高でした。ガチで涙止まらんかった…。
※Suzumori先生のコメントもし未読の方いましたら目を通して欲しいです
音楽も、『蒼の彼方のフォーリズム』でお馴染み、Elements Garden。ピアノとストリングスを中心とした美しい楽曲が揃っており、大満足です。サウンドの明瞭さも際立ってたし、感情を揺さぶられるメロディばかり。各シーンの温度感や時間の流れを感じさせてくる楽曲も多くて良かったなと…。お蔭で、最高のタイミングで最高の音楽が流れてくる最高の体験ができました。主題歌「Convallaria」は改めてガチ名曲です。Steamでゲーム購入したので、サントラをパッケージ再購入で入手するか検討中…(ゲーム内EXTRAで聴けないのは少し残念)。
システム面は十分最適。『あおかな EXTRA2』と比較して、テキストウィンドウ等が消え文字だけ浮かび上がる仕様になり(設定変更可能)、より理想とするFILMIC NOVELに近づいたのかなと。感動の瞬間が最大化する様に、冗長な部分は極力削って、テキストも地の文少な目、フルボイス会話メインなので。視覚情報としては、文字よりCGが大部分になる様になっていました。なので、フルオートだと贅沢で心地好い時間を味わう事ができますね。
5.さいごに
名作です。ライターは、sprite初となる四葩先生。初めましての方でしたが、凄く小説的で自然な文章を書かれる方でした。『あおかな』にも通ずる心を抉る様な描写もありましたが、それ以上に繊細で優しい言葉が多かったのがとても魅力的で、読み易かったです。
メッセージ性も珍しいモノでは無いのだけれども、とにかく丁寧で他には無い親身な優しさが詰まっていて。大好きになれるキャラクターが紡ぐ物語を通して、このメッセージを享受できた事が何よりも幸せです。本作に限らず、物語が完成して初めて感動とメッセージが伝わってくるモノだと思っているので。深菜や蘭を見ていたら、変われるかも、変わりたいって思えると云うか。凄く励まされるし、陽毬ちゃんが立ち直った様に勇気を貰えると云うか。そんな作品でした。プレイヤーの生い立ちや過去、タイミングによっては、ブッ刺さって響きまくる作品だったなと(現に私もその一人)。
キャラクター・ストーリー・イラスト・声優さんのお芝居、音楽。ノベルゲームを構成する要素をフルに用いて、物語の感動体験を限界まで高め上げてくれた"FILMIC NOVEL"。『あおかな EXTRA2』と同様に、この形態ならではの心に響く体験が間違いなくありました。作品に熱や魂が通っていると、画面越しに確かに感じられる処が好きです。
この体験を創り上げたspriteは、"掛け替えのない青春"を描くのが本当に素晴らしいなと改めて。プレイヤーとしても彼女達と過ごす、この時間が終わって欲しくないって思いましたから。でも、この儚さが青春そのものだし、この体験と共に絶対に忘れちゃいけない大切なモノを与えてくれたので、感謝しかないです。時折影が落ちる重めなテーマではあったのに、エンディング後に残る余韻は深くて爽やかで…極上でした。
spriteはやっぱ私の青春だなって。深菜達にとって、ラソンブレがいつでも帰ってこれる場所である様に。私にとって、いつでも帰ってこれる最高のブランドです。誰が何と言おうと、この作品もspriteも、大好きです。
とゆーことで、感想は以上になります。改めて制作に関わった全ての方々に最大級の感謝を。本当にステキな作品をありがとうございました!!!
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