『CROSS†CHANNEL』感想
どうもです。
今回は、2014年9月26日に発売された『CROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE-』の感想になります。初代は2003年9月26日にFlyingShineから発売されたものです。その後、何度か復刻版やコンシューマ版も発売され、名作として語り継がれてきました。-FINAL COMPLETE-版は移植された際の追加シナリオやサントラ、後は初代のゲームディスクも付属と、諸々揃う仕様だったのでこちらも購入しました(詳細は公式サイトへ)。
後から友人とやり取りして気付いたんですが、初代はOPボーカル曲ではなく、映像自体も全然違いますね。こっちの方が当時の味?と云うか雰囲気があって先にこっちをプレイしても良かったかもなと思ったり(笑)
でも、ボーカル曲「inertia world」もこっちはこっちでかなり良い曲で気に入っています。歌がDucaさん、作編曲が安瀬聖さんと云う神タッグなのも最高です。マジでハズレ無いと思うのよ。
では感想に移りますが、受け取ったメッセージと、キャラの印象を軽く書けたらなと思います。では、こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。
1.受け取ったメッセージ
いきなりですが、正直に言うと物語を解釈し切れてない処があります。なので、そこに付随するメッセージ性も自分の中では少しフワッとしてる状況で、乱雑な文章になるかもしれません。ご容赦ください。
メッセージとしては、やはりエンディング直前、太一の放送時の台詞に集約されるのかなと思っています。
少し長いですが、引用させて頂きました。"思い出は孤独と向き合った人の、唯一の支え"が特に好きですね。そう感じる時が自分にもあるので。太一が生まれた時の記憶を忘れていなかったのも良かったですし。
ここまで清々しく真っ直ぐなエールの言葉を投げかけられたら、誰しも何かしら感じるモノがあるんじゃないかなと思いました。この言葉を受け取った時の心境がハマったらそれこそブッ刺さる気がします。それ程に、人のやわく、脆い部分に触れている言葉選びだと思います。
"生きることは、寂しい"、もそうですが、否定的な言葉を用いながらメッセージとしては前向きで寄り添ってる感じが純粋に良いなと。紛れもなく真理で生きる上では避けては通れない"他者との関わり"を傷を癒す様に紐解いてくれた気がします。
頭では解っているんだけど思った様にいかない。どこかズレているんじゃないか…欠陥があるんじゃないか…環境が歪んでいるんじゃないか…みたいな悩みを抱え込んでしまう。そんな苦痛や不幸があるから、繋がりたくなる。でもそれが普通だから。それが人間であるから。世界はこんなに嬉しいから。と、太一達の物語を通して伝えてくれたのかなと思います。
誰もいなくなった世界から、人がいる世界へ贈る祈りの言葉。一番寂しいであろう太一からこんな言葉を贈られたら、私達は彼の為にも生きようと思わざると得ません。エピローグも帰還できたのかなと、希望を見出したくなる様な余白ある終幕は好みでした。
あと、EXTRA STORYの「CROSS†’CHANNEL(トモダチの塔)」で明かされましたが、"次はもうちょっとうまくやれると思うから"と、太一の願望によりループが発生したのも納得できるモノでした。あんなに凶暴な彼でも人なのだから、やはり私達も自己や世界に翻弄される事なく、折り合いをつけて生きていかねばならないなと此処でも思わされました。どうしたって人間は、外界の情報を認知しながら「自分らしさ」を形成していくものですし。
結局、どんな人であっても人であり、生きていい。そして、人は人にいてほしい。人として生きる事に対してのメッセージが強かったと思います。構造もキャラも少し特殊だったけど、メッセージとしてはシンプルだったのかなと。そんな感じで、受け取ったメッセージとしては以上になります。
余談ですが、最後にいくつか気に入っている言葉も書き残しておきます。
懸命に生きようとする者達へ贈る素敵な言葉でした。七香は母親かもと早い段階で気付いてしまったのもあって、もうちょっと掘り下げてくれたら嬉しかったなと。
作中で一番気に入っています。本当に文章表現が巧み。ED歌詞の、"絶望で良かった 虚無だけを望んだ"もそうですが、絶望を絶望だと捉えてはいないのが好感が持てる云うか、勇気づけられる感じがある。
友情や愛情に限らない、人として根源的な事だよなと改めて思わされる言葉が目立ちました。男3人のやり取りはしつこい程に聞きましたし(笑) でもホント笑い事ではなく、人の優しさはこーゆー処に一番出ると思います。
2.キャラクターの印象
記事冒頭に貼った感想ツイートにも書いた通り、キャラには殆ど感情移入できませんでした。と云うより核心を掴み切れないまま終わってしまったが正しいかも。なので、軽く正直な印象を書き残しておけたらなと。
・宮澄見里
何かを知るのが、触れるのが恐い。一定の距離を保ちたがる臆病な娘でした。でも臆病だからこそ、ずっと他人想いな娘でもあった様に思います。自責の念に駆られて、1人で何とかしてみせようとする姿とかも印象的。良くなかったのは、それを盾にする様に扱ってしまった処かなと。逃げて自分を守ってるつもりのはずが、自分を痛めつける結果にもなって。自分の行いに自信が持てず、他人の考えや規律を優先しすぎたのが要因でした。恐怖心を少しずつ克服していけたら、他人に流されない位の自信も勝手に身に付きそうです。多くを参考に、尊重する姿勢はそのままで。
・桐原冬子
ヤンデレ娘。甘えてる時がデレデレなので、ヒロインの中では一番可愛げがあったかな。依存性ではあるけど、執着心は強くなかった様に思います。相反する感情を抱えながら、不器用にしか生きられない姿が印象に残っています。彼女は与えられたモノからしか考えや行動が生まれなかったので、もっと視野を広く持って、自分の事も大事にしていけたら強い女性になれそうです。誰かに価値を見出して貰う前に、自分で自分の価値を見出すトコからスタート。好きな人の為にちゃんと涙を流せる彼女は絶対に優しい人です。想像力も豊かで、共感力高いのは十分魅力的。
・佐倉霧
自分を維持できない芯がブレブレで、且つ極端な娘だったかなと。その自覚も少なからずあるから、攻撃的な態度で覆い隠そうとする姿も印象的。でもそれだけ豊の存在が彼女の中で大きかったんだろうなと云うのは伝わってきました。何かに囚われた感情によって余裕が無くなる事はよくあります。少し考え方を見直してみるだけで、解放される事はあるので、その辺りの発想力とかが備われば良いなぁと。折角、感情の機微に敏感な娘なので、その一歩先で、考えの指針となる様な揺るがない大切なモノを見つけてくれたら嬉しいです。EXTRAで四苦八苦する姿は地味に良かった(笑)
・山辺美希
自分が可愛いと解ってるタイプの娘。コミュニケーションも上手で賢い。やろうと思えば上手くやれる自信があるから、反対に切り捨てる事だって容易く選択できてしまう。霧とは対照的に、切り捨てられた側の気持ちをあまり鑑みない心があったと思います。でも一人きりの寂しさも知らない訳じゃない、寧ろよく解ってて。自分が経験した苦悩や喜びを誰かに分かつ事ができる様な想像力が膨らめば素敵だなと思います。彼女の明るい性格や、活躍ぶりには助けられましたし。こうやって書いてみると、太一に一番近い人間だった気もします。
・支倉曜子
自尊心が低く、太一しか見てない盲目的な娘でした。感情表現に乏しく、何か大事なモノが抜け落ちてしまった感じがあってどこか寂しげ。でも、太一と喋っている時、世話を焼いてあげてる時は女の子らしい可愛さがありました。これだけ純粋に頑張れる素質がある一方で、自身をコントロールできず、すぐ自分の所為にする。心の受け皿が大きい訳でもないのに。その辺りの繊細的な部分が成長すればきっと素敵な女性になれるんじゃないかなぁと思います。弱さを克服しようとする意思や、太一への好意は本物でしたし。何より美人さんでした。
・島友貴
この中では普通に最も近い、没個性な人。没個性と云うと彼に失礼なので、現実的で正常な判断ができる人。置かれた状況に対する反応も、思考原理も至って理解できるモノでした。姉や太一に対する向き合い方も行き過ぎた時はあっても頷ける程度。(周りが異常なので仕方ない処もあるが)理解できない、理解されなくても、彼は彼なりに筋を通していたと思います。最終的に落ち着く地点としても、単純な事に気付くと云う彼らしい考えで良かったです。太一とじゃれ合ってるのは微笑までした。パワーパフガールズも元々好きなので(笑)
・桜庭浩
この作品で一番好きです。むっちゃバカだけど(笑) でもバカだからこそ一番まとも?だった気がしますし、彼がいる場は謎の安心感がありました。送還される時の"一番ショックなことは、おまえが追いつめられているのに、何もできない"や、エピローグの、”彼の心はそれで満ちて、幸せになった”とか、彼の人間性がそのまま表に出てる感じが特に好きです。AFTER STORYでは色々キャラ変しすぎた感じがありましたが、太一の代わりを演じているつもりなのか…とか思ったり。場を和ませるだけでなく、最後まで本当に良い奴でした。
キャラクターについては以上です。ヒロインに関しては全体的に役割重視でどちらかというと記号的。人ってこーゆー欠陥があるよね?って云う部分を尖らせていたのかなと思います。それが解らんでもないので、嫌悪感の類を抱かなかっただけ良かったです(笑)
3.さいごに
まとめになります。
改めて、名作として期待し過ぎてしまったかもしれない…が正直な感想です。心に刺さる様な感動があったかと言われると難しい処。でも、何とも言えない読後感はありましたし、物語に引き込む力は凄まじかった。構成や要素だけでなく、感覚的にも節々で名作と言われる所以を感じる事ができたので、それだけでもプレイした価値があったなと思います。
あとは何と言っても言葉選びや言葉遊びが多用されてる文章はとても好みでした。名言をいくつか挙げる位にはキレがあった。ちょっと引いてしまう処や、ギャグも当たり外れはあるけど、何度か笑わされました。
反対に気になったのは、ギャグとシリアスの温度差が激しいのに加えて、日常シーンが日常シーンとして機能していなかった事。もう少し繋ぎがなだらかな方が好みで、日常シーンもギャグやセクハラを連発するのではなく、EXTRA STORYっぽいキャラの自然な感じがもっと見れたら嬉しかったかなと。逆にEXTRAがあったお陰でキャラの理解が何とかできました(笑)
イラストや音楽は作品の雰囲気重視で非常にまとまりがあって良かったです。かなり淡い塗りがやっぱ特徴的でした。時代性も感じて、味がある。音楽は今でも全然通用すると云うか、良曲揃い。「Crisscross」「school days」「Diarize」「Fragile」「Daylight」が特に好きです。どれも聴いてると、何か帰ってきたな…っていうノスタルジーに浸れる。この作品が好きな人程堪らないんじゃないかと思います。
とゆーことで、感想は以上になります。
とりあえず、やっと名作をプレイできて良かったです。これが後々、あの作品やあのライターに影響を与えてたんだなぁと思えました。田中ロミオ先生の文章も合わなかったらどうしよ…と不安があったけど終わってみると、全然大丈夫だった。『最果てのイマ』も購入済みで積んでる状態ですし、今年春にはKeyから『終のステラ』の発売がされるそうなので、楽しみです。改めて制作に関わった皆さん、ありがとうございました。
ではまた!
©WillPlus / CROSS†CHANNEL