映画『泣きたい私は猫をかぶる』感想
2020年6月18日(木)よりNETFLIXにて全世界独占配信された『泣きたい私は猫をかぶる』を先ほど見終えたので、想ったことを書き留めておこうと、この記事を書いております。
見よう見ようと思いながら先延ばしにしてたら、こんな時期になってました…申し訳ない。それで、今回たまたま時間に余裕ができて、ふと映画を見たくなって、「あ、そういえば見てなかった」と思い出して、見始めたって感じです。
先に率直な感想を言うと、良い作品でした。特に大きな不満とかもなく楽しめました。ただまぁ裏を返すと、大好きになれる点もそんな多くはなかったので、自分の中では無難な位置に落ち着いた作品になりました。
では、以下からネタバレありで少し書いていくので、まだ作品をご覧になっていない方は是非見てから帰ってきて頂ければなと。
1.個人的ピーク
一番感情が動かされたのは、教室での手紙のやり取りから、ムゲが1人泣いてるとこまでのシーンでした。丁度中盤差し掛かる辺り。正直、完全に油断してたので、この展開は大分涙腺にもきた…。
「大嫌い」と言われて泣くムゲの表情もよかったですが、流れがよかった。嫌な感じなんだけど、それがよかった(伝われ)。
一途な女の子、男の子の気持ちが好きなので、それがああいう形で散ってしまうのはやっぱり悲しくて…。それと、性格悪いクラスメイトを描いてから、自分のことのように泣いてくれるヨリちゃんを描くことで、彼女の存在、2人がどういう関係か伝わってきたこと。けど、そこで泣いてるヨリちゃんにも決して涙を見せずに、家に帰ってから1人でめちゃくちゃ泣く(公園まで脱走してからも)のが、ムゲという女の子だということ(勿論ヨリちゃんもそういう子だと知っている)。ヨリちゃんには心配かけちゃダメだと必死に涙堪えてたんだなぁと思うと、あの涙はより一層胸にくるものがった。そしてそれが、ムゲの強さでもあり、1人抱えてる弱さでもあると身に染みて伝わってきた、いい流れでした。
ちょっと戻るけど、教室でのやり取りは本当に思春期真っ盛りの中学生だったのも良かったかな。人前の、からかいに対する恥ずかしさというか。他人の恋愛に対してのイジリ方が。やっぱり見てていい気分はしないけれど…それもあってヨリちゃんの「タヒね!」はよく言った!って感じだった(笑) 想像を膨らませると、彼女の旦那さんになる人は大変だろうなぁとか考えたり…。面倒見はいいけど、気が強いので拗らせると厄介というか…でもこの先もずっと頼りになりそうな、いい子ではあることは間違いないです。
2.最終的に受け取れたもの
最後まで見終わって、初めに想ったのは
「問題の根本的解決には、やっぱり当事者同士が真正面から向き合わないといけないよな」
っていうこと。当たり前っちゃ当たり前でもあるんですけど。改めて。
嫌なことも、苦しいことも、辛いことも、いつかはそれの発生源と向き合わないと、ただの先送りというか、その場しのぎにしかならなくて。何か他のもので解消できるように埋め合わせをしたり、当事者ではないモノや人を間に一枚挟んだりしたりしては根本的解決には至らない。
人には見せない部分があることが悪いんじゃなくて、もしそれが原因で問題が起きてるなら、それを見せずして解決することはやっぱり不可能に近いということ。私を見せずして、私を伝えることは不可能。猫をかぶっていては、違う形のその瞬間だけの満足感しか得られない。形だけでなく、気持ちまでもその境界線が曖昧になって違うものになる前に、少なくともそういう問題が起きてしまってることだけは気づいておかなきゃいけないよなと。上手く纏らないけれど、そういうものを僕は最終的に受け取りました。
例えば、作品内(エピローグ以外)ではムゲの実母である美紀さんと義母である薫さんが取っ組み合うシーン。それと、幼少期のムゲとヨリちゃんが泣きながら走ってる(恐らくあの後仲直りした)シーン。この2つが特に印象的でした。
メールや夫を通してのやり取りじゃ解決しない、他人の言葉を通してや感情を見せないやり取りじゃ解決しない。だから、嫌でもキツくても真っ正面からあのシーンを描いて、これが一番の近道だと示しているように感じた。大切な人やモノが関係しているなら尚更だと思うし。ついでに言うと、見終わった後に、脚本が岡田磨里さんで納得しました(笑) 見ててウッ…となるところを確実に突いてくるの本当にいつまでも上手で怖いわ、この方。
でも、大人でさえ近道だとわかってはいても、ああなっちゃうんだから、中学生じゃほぼ無理な話で。それで、猫の姿になれる、というこの作品ならではのギミックで、この問題に気付かせて、周りの助けもあって解決へと導いていく流れは素直に気持ちよかったです。エピローグ風のエンドロールもよかったし。美紀さんとアドレス交換してるのが心温まって好きでした。嬉しそうだけど、ちょっと寂しそうな表情で手を振る姿が沁みる…。
3.さいごに
特に書きたかった、2点だけ大きく書けたので、早いですがまとめに。
後半、ムゲが人間に戻って想いを伝えたい!ってなってからは正直ハッピーエンドへ向けて見守る感じになっちゃったので、前半ほどはのめり込んで楽しめなかったんですけど、ハッピーエンド自体は好きなので、その点はよかったです。繰り返しになりますが、綺麗なストーリーで見終わった後は普通に気持ちよかったので。変にモヤモヤするより全然いい(笑)
作品の雰囲気もどちらかといえば好きな感じでした。ファンタジーものは元々好きだし、音楽も優しくて、街並みもなんだか懐かしくて安心する。キャラデザも可愛いし、特に日之出のお姉ちゃん、優美ちゃん振る舞いが好きでした。残念だったけど、いつかいい旦那さん見つけてな(笑) 美紀さんもCV.大原さやかさんということで、中々よかったです。まじでいつ聴いても𠮟られたいボイスで好き。猫もめっちゃフワフワな感じが出てて可愛かったし、蒼い瞳も凄い綺麗でよかった。反射して映ってたのとかがめっちゃ綺麗だった。猫いつか飼ってみたいの…。
ということで、感想は以上になります。
普段の生活の中でトラブルやストレスはつきものですが、変わらず趣味とかで(一時的だけど)解消しつつ、それをバネにしてこれからも少しずつ様々な問題と向き合っていかなきゃなぁと改めて思えました。この作品もそんなバネの1つになったので。
劇場で見たかった気持ちも勿論ありますが、それ以上に、この作品を世に送り出すことを優先して配信という決断してくださった制作陣、関係者の皆様、心温まる素敵な作品をありがとうございました。
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