泉絢也・藤本剛平
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暗号資産ウォレット、そのID及びパスワードを譲渡及び交付することによって暗号資産を前夫に売却し、損失が発生したという主張が認められなかった事例(所得税・国税不服審判所令和5年11月28日裁決)
本件は、審査請求人が行った暗号資産の譲渡等に係る所得について、原処分庁が雑所得に該当するとして所得税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、雑所得として課税された取引とは別の暗号資産等の売却を行ったことにより損失が発生しているから、これらの損失の金額を更正処分等における雑所得の金額から差し引くべきであるとして、原処分の一部の取消しを求めている事案です。 請求人は、各ウォレット、そのID及びパスワードを譲渡及び交付することによって暗号資産を前夫に売却し、損失が発生したと主張
暗号資産取引に係る雑所得を除外する脱税スキームを用いて所得税を免れたとして有罪となった事件(暗号資産の税金・所得税関係:東京地裁令和6年6月3日判決)
今回取り上げる東京地裁令和6年6月3日判決(TAINSコード:Z999-9178)の所得税法違反被告事件は、被告人が暗号資産(仮想通貨)取引に係る雑所得を除外する脱税スキームを用いて所得税を免れたとされるものです。 この暗号資産脱税事件において、被告人は暗号資産取引に係る雑所得を除外する方法により所得を秘匿し、虚偽の確定申告を行ったとして、懲役1年2月(執行猶予3年)及び罰金1100万円の有罪判決を受けました。 こちらも確認しておきましょう。 Ⅰ 事件の概要1 共謀
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暗号資産の雑所得を秘匿し、所得税を脱税していたとして有罪となった事件(暗号資産の税金・所得税関係)(東京地裁令和6年3月21日判決)
エイダとビットコインを保有していた被告人が、その保有する暗号資産がA社に帰属するかのように装い、暗号資産取引に係る雑所得を除外する方法により所得を秘匿して、所得税を免れたとして有罪とされた所得税法違反被告事件を紹介します。 ほ脱所得金額は約8800万円、ほ脱税額3500万円余りです。 東京地裁令和6年3月21日判決(令和4年特(わ)第1446号:TAINSコードZ999-9177)は、懲役1年及び罰金800万円(執行猶予3年)に処すると判断しました(控訴中)。 裁判所は
暗号資産(仮想通貨)に係る所得税について、個人間取引や海外取引所の取引で「損失」が出ているという主張が認められなかった事例(所得税・国税不服審判所令和5年6月15日裁決)
暗号資産の取引に係る所得を確定申告に含めていなかったとして、所得税等と過少申告加算税の課税処分を受けた請求人(個人である納税者)が、取引所を介していない個人間取引や海外取引所における取引において損失が出ているにもかかわらず、税務署長は意図的に取引を選択して課税している可能性があること及び税務署長が算定した暗号資産取引に係る雑所得の金額に誤りがあることを主張したものの認められなかった裁決事例を紹介します。 国税不服審判所令和5年6月15日裁決(高裁(所)令4第13号)は、請求
税務署に相談していた暗号資産のステーキングの税金について、無申告加算税が課された事例(国税不服審判所令和5年5月19日裁決)
暗号資産のステーキングによる所得の税金について、関与税理士とともに税務署に相談していたもののすぐには回答をもらえなかった納税者が、申告期限を過ぎた後に所得税の確定申告書を提出したことに対して、課税庁から無申告加算税を課されたため、期限までに申告書の提出がなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」に該当し、無申告加算税は課されないと主張した事案を紹介します。 国税不服審判所令和5年5月19日裁決(関裁(所)令4第37号)は、納税者の上記主張を認めませんでした。
仮想通貨(暗号資産)の売買等による所得が「納税者に帰属するか」が争われた国税不服審判所裁決(所得税事案)(国税不服審判所令和5年2月17日裁決)
仮想通貨(暗号資産)の売買等による所得が納税者に帰属するか否かが争われた国税不服審判所の未公開裁決(令和5年2月17日・東裁(所)令4第85号)を紹介します。 この事件において、個人である納税者(請求人)は、仮想通貨の管理処分を行っていたのは自分ではないと主張しました。事実関係の詳細はわかりませんが、請求人が仮想通貨を管理処分していたこと裏づける証拠がある一方で、請求人の主張を裏づけるような証拠は乏しかったのではないかと考えます。 情報公開請求で入手した裁決書は、黒塗り部
国税庁FAQ改定で、暗号資産の所得から控除できる必要経費はどうなる?(税理士報酬、情報収集費用の必要経費は認められない?)
国税庁は、令和4年12月22日付で、「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を改定しました。 アメリカの居住者が保有する暗号資産を日本の暗号資産交換業者に売却した場合に、日本での申告は不要という「1-7 非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引」が加わっていますが、この記事では、「2-2 暗号資産取引の所得区分」と「2-3 暗号資産の必要経費」を確認しましょう。 なお、このFAQ改定の背後には、雑所得に係る所得税基本通達の改正があります。この内容は、ややこしいた