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スタグフレーションが始まった - 自分を守るために

こんにちは。僕は仕事でテクノロジー分野の会社経営と投資をしています。いつも世の中の動きを調べて、「世の中がこう変わっていくだろう」と考えながら仕事をしています。最近、日本を含む世界全体で「スタグフレーション」という大きな世の中の流れが始まりました。

スタグフレーションは、社会全体がじりじりと貧しくなる現象です。いま生きている多くの人は、いまの暮らしが当たり前で、これからもずっと変わらないだろうと信じています。信じているからこそ、スタグフレーションに気が付かず「何か最近、余裕がないな」と思いながら過ごして、気が付いた時には犠牲になってしまいます。

この記事を読むと不安な気持ちになると思います。でも僕は、ただ何も知らないままスタグフレーションをむかえるのと比べたら、この記事を読んでもらったほうがずっとよい結果になると思っています。絶望しろ、と言いたいのではありません。社会はほぼ間違いなく大変になるけれど、考え方を変えれば個人までが不幸になるわけじゃないよ、と言いたいのです。

これから社会に出る若い人、家族を守りたい人、ひとりの自由を守りたい人、病気や逆境と戦っている人、人を導く立場の人、いろいろな人にこの記事を読んでもらいたいです。

少しでもこの記事があなた今後に役立つことを願います。


給料が上がらないのに値上げが続く

スタグフレーションとは、給料が上がらないのに、食べ物などの値段が上がる現象です。働いても働いても給料は変わらないのに、どんどん値上げが続きます。そして生活が苦しくなります。

最近のニュースをよく見ている人は気が付いているかもしれませんが、コロナウイルスのニュースに混じって、よく値上げのニュースが流れてきます。興味のある人は「2021年 値上げ」などで検索をしてみてください。

Twitterではこんな話題がありました:

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これは、これから世界中で起きることの始まりにすぎません。コンビニの食べ物だけでなく、レストラン、雑貨、スマホ、電気製品、本、ゲームや、車や住宅、家賃までもがこれから上がります。この記事は全部デタラメだと思いたくなるかもしれませんが、それでも値段はじりじりと上がります。

経済に詳しい人たちがいろいろと予想をしていますが、特に2021から3年ぐらいの間はコロナの影響もあって大きく値上がりするという意見が多いです。どのぐらい上がるかについては、1年あたり2~5%ぐらいと言われています。なので、いきなり来年から生活ができなくなる、という話ではありません。

3年より後にどうなるかについては、正直なところほとんど誰もわからない、という状況です。1年で2%ぐらいの値上がりがずっと続くという人、値上がりが加速して経済がめちゃくちゃになるという人、逆に値上がりは止まるという意見もあります。ただ、残念ながら値段が完全に元に戻ると言っている人はいません

なので、僕たちはスタグフレーションから自分の身を守らなくてはなりません。そのための第一歩として、最初にすべきことは、この「物の値段が変わらない時代は終わって、何もしなくても物の値段はだんだん上がる現象が始まった」という話を、頭に入れることです。

※なお、スタグフレーションに似た言葉にインフレーション(インフレ)というものがありますが、インフレでは給料も物の値段もどちらも上がるのですが、スタグフレーションでは給料は変わらずに物の値段だけがあがります。


ここ30年は値段が上がらない特別な時代だった

50年前、ラーメン1杯は100円でした。安いですよね。いま700円~1,000円ぐらいはします。物の値段の変化についてはこのグラフ記事がとてもわかりやすいです。

見てもらうとわかると思いますが、物の値段は長い目で見ればずっとあがっています。下がっているものはほとんどありません。これは日本でなくても同じです。つまり、物の値段はそもそも時間が経てば上がるものなのです。

実は日本は、ここ最近20~30年ぐらい、物の値段がほとんど上がらない特別な時期にありました。そして、いま生きている多くの人がその間に生まれて育ったので、物の値段が上がることを体験していない人ばかりになっています。国民全員が忘れてしまっている感じです。

だから物の値段がまた上がりはじめた今でも、気付くのが遅れています。「こんなに値上げが続くなんて異常だね」と言ったりします。でも、異常だったのはここ20-30年で、これから元に戻るだけなのです。


貯金の常識が変わる

将来が不安になると貯金をする人が多いです。貯金はよいこと、お金は貯めるべきもの、通帳にお金が貯まると嬉しくなり、逆に貯金がないことは良くないことで、他人に胸をはって言えない・・・そんな風にみんなが考えていると思います。

スタグフレーションでは、この常識が変わっていきます。必要以上の貯金は損失になります。

例えば将来の子供の学費のために100万円を貯金しておいたとします。子供が実際に学校に通う10年後には、学費やその他の物の値段が上がっているため、100万円では足りなくなります。

また、長期の定期預金・保険の積立・個人年金などは、頑張って貯めたところで、満期には物の値段のほうが上がっていて意味がなかった、というシナリオも考えられます。

値段があがるということは、言いかえれば、同じ金額で手に入るものがどんどん少なくなるということです。スタグフレーションでは、長い時間お金を貯めておくメリットは小さくなります。いわゆる老後の蓄えのような考え方は難しくなります。

もちろん、数か月分の生活費や、1年後に買いたいもののために貯金をするのであれば、スタグフレーションであってもメリットがあります。貯金する意味がまったくなくなるわけではありません。スタグフレーションの影響を受けるのは、遠い将来(10-20年後とか)に向けた貯金や積立です。この点は勘違いしないように注意が必要です。貯金はダメだ、という話ではありません。


投資でお金を増やすのはむずかしい 

将来、物の値段があがることにそなえて、定期預金や保険の積立、個人年金などを解約して株、金、暗号資産などの別の資産に移していくことをおすすめしている人を見ます。

僕個人の意見ですが、普通の人がスタグフレーションを避ける目的で大きな投資をはじめることについては、あまり現実的ではないと考えています。理由は次の通りです:

1. そもそも物の値段があがって生活が苦しくなるため、投資の余裕がなくなっていきます。

2. 投資には冷静さが必要です。余裕がない中で投資は危険です。利益が出た時に強気になってリスクを取りすぎます。逆に、損が出るとすぐに投資をやめてしまい、長期投資ができません。

3. 仮に投資するお金が余っていたとしても、投資でお金が増えるスピードよりも、スタグフレーションによって生活が苦しくなっていくスピードのほうが速い可能性があります。

投資の基本は「なくなってもいい金額」で「10-20年やめずにずっと続ける」です。スタグフレーションが始まってしまうと、そのどちらも難しくなります。


節約、しかも「大きな節約」が必要になる

節約は、貯金や投資をするよりも、現実的な対処方法です。ただし、ちょっとした節約する程度では、焼け石に水です。

・外食を控える
・水筒を持ち歩く
・一駅歩く

こういうわかりやすい節約は、すぐに数%の生活費を減らすことができますが、いずれ物の値上がりのスピードに負けてしまうでしょう。

結局、必要になるのは、次のような「大きな節約」です:

家賃の安い場所に引っ越す
・狭い家に引っ越す
・実家に帰る
・お金のかかる趣味をやめる
・お金のかかる人付き合いをやめる

これらの大きな節約は、普通、なかなかできません。しかし、スタグフレーションが進んでいった時に必要なのは、あなたの生活を変えるほどの大きな決断です。もちろん、いますぐに決断する必要はありませんが、もしこれから、生活が苦しくなる実感が出てきたり、悩み始めるときがきたら、その時には「大きな節約」を考えなくてはなりません。

そもそも「大きな節約」は、なぜ難しいのでしょうか? ここに、スタグフレーションから身を守る方法の答えがあります。


身を守るためのたったひとつの方法

結論から書きますが、スタグフレーションから身を守るためのたったひとつの方法は、「貧乏になることは避けられないので、お金と幸せについての考え方を変える」です。

これは決して冗談ではありません。多くの人にとって、これからでもできる根本的な対策は、これしかありません。今の生活や収入にこだわる考えを変えて、もっと小さな幸せについて向き合い、お金のかかることを諦めるしかありません。

「大きな節約」の邪魔をするのは、誰もが当たり前だと思っている、いまの生活水準・生活レベルです。いまの食べ物、遊び、医療などのレベルは、世界全体の右肩上がりの成長によって維持されていたものです。そしてスタグフレーションは、いまの生活が当たり前のものではなくなっていく流れなのです。

ですから、ちょっとした資産運用や、ちょっとした節約とか、そういうレベルではたりません。考え方を変えて、大きな節約の準備をしなくてはなりません。

「なんだ、精神論か」と言いたくなる人もいると思います。しかし、逆に言えばスタグフレーションには精神論ぐらいしか有効な対策はないのです。それほどにスタグフレーションは大きな現象です。

では、考え方を変えずにいると、どうなるのでしょうか? 実際は、スタグフレーションに気づかず耐える人がほとんどになると思いますが、いったい社会はこれからどうなるのでしょうか?


スタグフレーションで本当に怖いこと

スタグフレーションとは、つまり、国民全体が貧乏になる現象です。

人は、いったんいい生活をすると、貧乏に戻ることができません。いい家に住むと、そこから引っ越すことができません。高い服を着ると、高い服を着るのをやめられなくなります。仕事でいい立場でいいお給料をもらうと、低い立場や低い給料が怖くなります。自分の子供にも同じ価値観を求めるあまり、子供の幸せよりも学歴や地位への執着によって教育やしつけをしてしまったりします。

それでもスタグフレーションは止まりません。いまの生活にしがみつけばしがみつくほど、イライラしたり、絶望したり、他人にあたったり、家族や子供と心が離れたり、ストレスが溜まっていきます。

つまり、スタグフレーションで本当に怖いことは、物の値段が上がること自体ではなく、それによって、人々の心が壊れていくことなのです。

何かのきっかけでお金を手に入れて、それによって楽しい体験をして、さらにお金を求め、お金がなくなることに恐怖を感じ、必死にお金を集めようとしてしまう─── これは、いわゆる依存症と呼ばれる構造です。豊かな社会で生まれ育った僕たちは、人によって程度の差はありますが、無意識にお金に依存しています。そのため、スタグフレーションになると、お金の禁断症状と戦うことになります。依存症から抜け出すには、自分が依存症であることを知るところから始めなくてはなりません。いまの生活レベルにこだわろうとする自分を見つめることが第一歩です。いまの生活にしがみつくよりも、あなたの心が壊れないことのほうが大切です。お金のためにあなた自身が犠牲になるべきではありません。

そもそも、スタグフレーションがなくても、いまの社会にはあらゆるところに心の病が広がってきています。コロナに関するいろいろなニュースを見て「何か世の中がおかしい」と気付いた人も多いのではないかと思います。ネットの炎上・叩き・差別は異様な状況です。犯罪についてもいわゆる無敵の人と呼ばれるタイプのニュースが耳に入ってきます。社会全体に余裕がなくなってきています。

これは、まだまだ入り口にすぎません。人の歴史ではだいたい、庶民の生活が苦しくなり、ひとたび国が乱れ始めると、戦争が起きるまで乱れていきます。


時代の終わりは新しい時代の始まり

繰り返しになりますが、スタグフレーションの犠牲になるのは、生活レベルを下げられない人、お金や地位にこだわる人です。逆に「こういう時もあるから、諦めよう」「お金にこだわっても先がないな」と割り切った人が生き残っていきます。

生活レベルを下げることが難しい原因の多くは、他人の目、恥ずかしさ、プライド・自尊心といったものです。人は無意識に「生活レベルが下がると、恥ずかしい、自分自身の価値が落ちた気がする」と考えてしまいます。

大切なのは、スタグフレーションは災害のようなものであって、あなた個人の努力とは関係がないという理解です。物の値段が上がって貧乏になったとしても、あなたが悪いのではありません。お金のあるなしと、あなたの人間としての価値には関係はありません。また、あなたの周りにも貧乏になっていく人がどんどん出てくると思いますが、それはその人が悪いのではありません。その人の人間としての価値には何ら変わりはありません。貧乏になっていく人を笑ったり見下したりするのは、被災者を笑うようなものです。

そして、使えるお金が少なくなることによって不自由は増えますが、100%不幸になるわけではありません。もし貧乏で100%不幸になるなら、日本がまだお金持ちではないアジアの島国だった頃に、国民には一切の幸せがなかったのでしょうか?  そのころの人々はみんなお金がなくて苦しんでいて、みんなが精神を病んでいたのでしょうか?

「貧乏は100%不幸になる」これは嘘です。
「貧乏は100%幸せになることはできない」これも嘘です。
「お金もちは100%幸せになる」これも嘘です。
「お金持ちは100%不幸になることはない」これも嘘です。

これから社会全体が貧しくなっていく中で、お金や地位で比べたり悩んだりする文化は、それにこだわる人と共に、スタグフレーションの犠牲となって消えていくでしょう。お金ではない楽しみを持っている人が強い時代がやってきます


努力してもっとお金を稼げばいいじゃないか

と言う人もいるかと思います。これは飛びぬけて才能のある人にはYESかもしれませんが、僕は大多数の人に向けておすすめすることは難しいと思っています。

なにも努力に意味がないと言いたいのではありません。向上心は大切ですし、自分の能力を磨いて、出世して、社会の役に立っていこうという気持ちは大切で素晴らしいことです。

でも、それを目指す人には、いまから個人の能力や環境ではどうにもならないような現象が襲いはじめたことを、決して忘れないでほしいです。あなた個人の能力では到底どうにもできない状況になる可能性があることを、決して忘れないでください。それを忘れてしまい、うまくいかない時に、自分の能力だ・責任だと決めつけると、あなたはスタグフレーションの餌食となって精神を病むでしょう。

例えば、あなたの成長のスピードより、生活が苦しくなるスピードのほうが速い可能性があります。また、自分が努力しようとしても、家族・友人・チーム・スタッフがスタグフレーションに倒れていき、自分の成長に投資できなくなることも出てくるかと思います。その覚悟が必要です。

これまで自己研磨には豊かな時代の後押しがありました。私たちがこれから向かう世界は、成長が頭打ちとなった世界です。その中で、いままでと同じように努力をしても、成功しにくくなっていきます。

努力は尊いものです。チャレンジに対しては敬意が払われるべきです。でも犠牲者にならないでください。幸せになるための努力です。努力の奴隷にならないでください。努力をしなければ価値がないという思考にとらわれないでください。努力をしてもしなくても、人の価値は変わりません。


投資・商売をしている人へ

マクロな状況は技術革新とグローバル化をベースにしたメガトレンドのピークアウトと長期調整局面入りです。国家と技術資本の対立および主義の分断によるブロック経済化によって成長の前提は崩れようとしています。次の20-30年は強烈なダウントレンドを読みます。

数字は緩和で抑え込んでいますが、緩和の実体は家計・企業から国への債務転換です。結末はソブリン債=通貨の崩壊=インフレ・スタグフレーションです。どこの国が引き金を引くかはわかりませんが、一国で食い止められずに最後はドルを巻き込んだ世界同時多発的な現象になるでしょう。あとは時間稼ぎの問題です。債権国である我が国はグローバルのババを引いた状態です。北斗の拳やジンバブエのようにはならなくても、この記事で書いたように労働市場に大きなストレスを与えることになるでしょう。また民衆と共振して政治も乱れるでしょう。

バブル後の下げ相場の犠牲になるのは、長期トレンドの転換を認められずに、引き続きロングで立ち向かう人です。これは、バブルを忘れられず、生活水準を下げられない人です。逆に言えば、長期トレンドの転換をすみやかに認められれば、下げ相場でも十分に幸せになれます。

債権と通貨を利確し、現物資産を買いましょう。個人の生活のプットを買いましょう。商売をしている人であれば、カバードコールを売りましょう。

僕たちは、「あの時代は狂っていた」と振り返ることになると思います。


少しでも多くの人を救うために

スタグフレーションという言葉は、一般の人にはほとんど知られていません。あなたの家族や友人やチームやスタッフ、まわりのほとんどの人がスタグフレーションや、この先に何が起きるかをよく知らないと思います。何も知らないままに物の値段は上がっていきます。一体何が起きているのかわからないまま、心の準備や大きな節約ができず、今の生活にしがみついてしまい、犠牲になりかねません。

スタグフレーションを多くの人が知るためには、あなたがスタグフレーションについて話題にすることが一番簡単な方法です。これから、いろいろなところから値上げのニュースが入ってきます。知らないうちに、ひっそりと値上げされていることも増えるとおもいます。その時に、この記事のことを思い出してください。そして、一言でもよいので「これってスタグフレーションって言うらしいよ」と教えてあげてください。

おそらくこの記事を読んでいる人は、情報のアンテナが高い人だと思います。しかし、ほとんどの人はそうではありません。ぜひ近しい人に教えてあげてください。たとえ小さなコメントやメッセージでも、それがきっかけとなって、スタグフレーションを知る人が増えていきます。あなたの小さな行動が社会への貢献となります。「あれがきっかけで知っておいてよかった」と、救われる人が増えれば幸いです。


この記事のまとめ

(1) スタグフレーションによって社会全体がどんどん貧乏になっていきます

(2) 貧乏になる中で、人々が精神を病んでいきます

(3) 身を守るためのたったひとつの方法は「お金と幸せについての考え方を変える」です。


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