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第十一話 クラブ経営陣はジダンとモウリーニョがお好き? 「奇襲」

1/13〜16までベルギーはシントトロイデンを訪問し、STVVの試合を観戦して来ました。まずは、滞在中お世話になったSTVVの飯塚さん村田さん、そして旅に同行させてもらった西原さん、本当にありがとうございました!そこでの皆さんとの議論内容(公開できる範囲で笑)、STVV試合当日のレポートをお届けします。

フットボールが全てではないシントトロイデン市民

大学の初めの授業でマドリードでのWorld Football Summit(WFS)に参加した際、たまたま列の後ろにいらっしゃったSTVVの飯塚さん。それがきっかけで色々フットボールビジネスに関して教えていただいております。大学の授業の一環で1つクラブを選び、授業テーマに沿ってモジュールごとにそのクラブに関して課題があります。自分はこの縁があってシントトロイデンを選択しています。ってことで勉強も兼ね(半分は楽しみのため笑)シントトロイデンを訪問して来ました。WFSに関しては飯塚さんが簡潔にまとめてくれているのでご参照を。

スタジアムや周辺施設の案内をして頂いたのですが、一緒にシントトロイデン訪問していた西原さんがとっくに詳しくまとめてくれているので、ここはサボります笑

ここでは西原さんがいらっしゃらなかった試合当日のレポート・所感を中心に。STVVの対戦相手は目下最下位のセルクール・ブルージュ。日本代表の植田直通選手が所属しています。鹿島ファンの自分にとってはマイナーカードであろうが鈴木優磨との元鹿島対決が観れるので期待値は大。14,000人収容の複合施設(スーパー、オフィス、ホテル、カフェ、スポーツ用品店など)ならではの特徴、気になった点は以下の通り。ちなみにベルギーはキャパ指定がなく、ほとんどのクラブは1万人以下。2万人超はG5(アンデルレヒト、ブルージュ、ヘンク、ヘント、スタンダール・リエージュ)のビッグクラブのみ。それを考慮するとSTVVのキャパは大きいなと。

① ゲートが少ない
② 暖かい屋内でみんな飲んで食って談笑して
③ 外にある簡易トイレ
④ オフィス等他の施設は試合3時間前までに撤退
⑤ ウルトラス大人しめ
⑥ 試合後のRVUEでは色んな出会いが

① 西側のVIP席はホテル入り口からかな?北側ゴール裏はホテルとオフィス間の2つのゲート(これが普通にマンションの入り口みたいでパッと見気づきにくい)、一番収容人数が多い東側はおもちゃ屋横の3つのゲート、あとは南側アウェー席の入り口という具合。カンプノウやサン・シーロのようにゲートで迷うことは絶対にありえないってぐらいコンパクトです。

出店はハリボーとホットドッグ、バーガーのこの3つのみ。あとファングッズも売ってました。

② 老若男女みんな飲んで話して暖をとってました。人口約4万人のこの小さな町にこんなに人がいたんだと驚き。目立ったのは50歳以上のおじさん達ですが、小さな子連れファミリーや女性だけの観戦など町の憩いの場になっているんだと感じました。この雰囲気は好き。1 Jeton(コイン)2.2ユーロだったかな、を購入しカウンターに持って行って飲み物を受け取るシステム。野球場ではビール700〜800円するのでめっちゃ安いです。自分は外の屋台で購入したホットドッグと一緒にビールを堪能。

③ 簡易トイレが外にありみんなそれを利用していました。先ほどの暖を取れる階の端に室内トイレもあるとのことですが、野郎どもは外で済ませてました笑。その他の施設やスタジアム自体が新しくキレイなので、トイレのこの雑な感じは日本人の自分には驚きでした。

④ スタジアム併設のホテルStayenに宿泊したため、施設にあるジムを無料で使えたのですが、試合当日は試合3時間前に閉まると飯塚さんに忠告されたことを忘れており利用できず。効率的な複合施設ですが、STVVの所有ではなく、試合があるために大変なことや活動にも制限があるようです。大きなスーパーがこのスタイエンにしかなく約1,000台収容可能のパーキングも週末はけっこういっぱいになるようです。その他マンション、スポーツ用品、家電、おもちゃ屋などここに来ればなんでも揃うっていう感じなので、スタジアムに来ました!っていう印象は全くなく、町の一部として自然に存在している印象でした。

⑤ アウェーのセルクールファンが緑のユニで統一され、声援も圧倒的に大きかった一方で、STVVのウルトラスは複数存在しあまり統一感はなさそうでした…黒の服を着ておりユニフォームなのか上着なのかもわからず。イタリアやドイツで観た過激さは感じられず。代わりに周りの紳士や男女問わず若者が汚い言葉を相手選手や審判に投げかけてました笑。

他に気になったのはけっこうみんな喫煙していること。カンプノウやイングランドは禁止ですが、欧州ではけっこう当たり前。タバコ嫌いな自分にはつらい…。あとはピッチサイドに水撒きの装置があり、かなりの勢いで観客席にまで水が来る笑。子供たちはそれをアトラクション的に楽しんでいました。

試合のレベルはお世辞にも他の主要リーグに比べたら高いとは思えませんでした。むしろJリーグの方が高いかと。そこでもがき苦しむ代表候補達。歯がゆさをすごく感じましたが、早くこの2人には羽ばたいて欲しい。

⑥ 試合後はRVUEというクラブのような飲みスペースに行きました。ここでは先ほど紹介したJentonを購入し、みんなお酒を飲みながら試合後にあーだこーだ話していました。ビールだけでなくワインやシャンパンも安く楽しめます。家族連れがいたり、選手が試合後に家族や友人と待ち合わせしていたり、試合観ていない地元の若者が飲みに来たりもしていました。自分も超大物に出会い挨拶しましたが、運が良ければ色んな出会いがあるのではないでしょうか。

メソッド、理念、合理化だけでは成し遂げられない成功

試合後に飯塚さんと少しお話をし、その時に「この選手にはもっとこうして欲しい」、「こういう所は直して欲しい」、「ここは良い所なんだけどそれだけではダメなんだ」というような言葉が印象的でした。当たり前かもしれませんが、経営側の人間は試合結果がいかに大切かということを身を以て理解されている。ベルギーでは1〜6位のプレーオフ1に進出するのか下位のプレーオフ2に進出するかでクラブ収入も大きく変わる。例えば過去5年の成績で配分が決定される今後の放映権収入。そりゃ楽しんでる暇はないよな…では成功はどうやって手に入れられるのか?

例えば、今日本で話題になっているサンガの新しいスタジアム。帰国の際にこけら落としゲームを観て来ました。本当に素晴らしいスタジアムです。町興しの一環として地域とも協力し、またチームとしても元代表やJで実績がある外国籍選手を取り、サンガを変えようというのがひしひしと伝わります。でも成功するかどうかなんてわかりません。世界一と言われるバルサですら、経営や戦術のメソッド本を世に出していますが、今苦しんでいます。飯塚さん、西原さんが絶賛するビジャレアルがなぜ成功しているのか?メソッドのようなものがあるけどそれもマニュアルとして誰もが扱えるかといえばそうではないよねって話になりました。不確定要素があまりにも多いフットボールのビジネスでは経営・運営者ができることは限られていて、立地、時勢、人の流れなどあらゆる要素が絶妙に組み合わさって成功が得られるというのがみなさんと話して得た今の自論です。だからこそ理想ではなく、その不確実性を少しでも低くするため、結果にこだわるジダンやモウリーニョを好みたくなる気持ちがあるのかもしれません。美しいフットボール標榜する人や戦術マニアからしたら批判的な声があがる彼らのフットボールですが、今回の出会いでは彼らがいかに優れた監督かというポジティブな話ができて新鮮でした。

結局「運」ってことになれば投げやりになってしまいそうですが、そこは違うと思います。その運を掴むために理念を掲げ、メソッド構築のために研究し、合理化を図り健全なクラブ運営をすることが大事なんだと信じています。それでも成功するわけではないのが面白いんだと割り切り、どういう態度で臨めるか、今後この世界に足を入れる上で自分にとって大きな課題となりそうです。それではこの辺で、Adéu!

ホテルのロビーで奇襲を食らいました。突然現れたので驚きましたが、敗戦に肩を落とすマスコットのビンキー。次回は彼の喜ぶ姿が見たい笑。





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