故人を偲び、緊急同窓会

同級生が死んだ。
同じ理系だったこともあり同じ教室に居たのだが、彼はあまりにも頭が良く、おれはあまりにも頭が悪く、同じ教室にいても一緒に遊んだりすることは無かった。

彼が死んだことをきっかけに、昔を一所懸命脳内で掘り起こしてみた。

卒業して数年経った頃、おれは当時まだ連絡を取り合っていた同級生の一人に連れられて理科部の集まりに参加させてもらったことがあった。なんだか薄暗い感じのお店だったが、そこで一言、二言会話したことを思い出した。

当時から彼は大阪大学の研究員だったと思うが、おれのようなボンクラには説明しても理解が難しい研究をしていることだけがわかった。その研究は真空で実験しないとわからないことで、究極宇宙に行って研究しないとわからないのだと。でも、自分たちが宇宙に行くことはできないから、いつか未来にそういう時期が来て、今の研究を受け継ぐ誰かが未来の宇宙で研究してくれるように今を紡いでいるのだと。

壮大すぎる。
自分が今生きていくだけでも必死なのに、未来のために必死になれるってできない。

彼との思い出がある人間も、あまり絡みがなかった人間も、土曜の夜に集まってわいわいと楽しく過ごした。

彼との思い出話をしたり、学生生活の話をしたり、
近況を確かめ合ったりする、いたって普通の同窓会。

あるものは30頭の馬主になってたり、
あるものは家族みんなからの反対を押し切ってベンチャー企業を立ち上げてたり、
あるものは旅館を継いでコロナで鈍った客足を取り戻すために戦っていたり、
あるものは大手お笑い商社の偉いさんになっていたり、
あるものは親のあとを継いでなにかしらせわしなくしていたり、
あるものは平凡なサラリーマンしていたり、
まあ、いろいろだ。

おれなんてしがない作業員。
自分は自分だし、それについて卑屈になることもないし、ずっとこのままだとも思っていない。でも今は今でこれでいい。

いろいろあってそれでいい。
こうやってみんなであつまって、
元気で話ができるだけでおれは十分活力になった。

夜中まで騒いで、夜中まで話して、
夏祭りよりよっぽど盛り上がった。

あるものは重力がなくなったかのように何度もコケていたし、
あるものは帰るといって真っ直ぐの道をジグザグに歩いて帰っていった。

もしかしたらあれはお酒の飲みすぎではなく、彼の真空状態における実験の一つの結果だったのかもしれない。

おれの中では偉大な研究者であり、自慢の同級生の一人。
彼の短すぎる人生に献杯。

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フミ
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