「メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実」「Qアノンの正体 / Q: INTO THE STORM」「ゴールデン・ステート・キラーを追え / I'll Be Gone in the Dark」
HBOシリーズ3作品。
メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実
すごくシリアスなのかと思っていたら、意外にコミカルなシーンもあり、割と気軽に観られた。村人全員知り合い、みたいなフィルラデルフィアの小さな町の閉塞感とコミュニティの居心地の良さを両方感じる。ストーリーはwho done it?もので、犯人捜しを楽しむタイプだけど、主人公メアのトラウマと、女性同士の友情が背骨になっている。女性刑事ものって、なんでどれも重いトラウマに苦しんでる設定なのかな。女で刑事やってますが何か?って言いたくなる。男の場合でも、中年の危機まっただなか、とか、家族とうまくいってないとか、伝統的なデフォルト設定はあるけど、女になると、精神的に崖っぷち、な場合が多い気がする。その意味で、Netflixの「The Sinner -隠された理由-」は完全に神経がまいってる男性刑事もので、珍しいな、と思う。エミー賞は主演女優、助演女優・男優の3つをこの作品が取っている。作品は面白いけど、そんなに?って感じもするなぁ。
Qアノンの正体 / Q: INTO THE STORM
なんとか全話観たけど、監督よ、お疲れさま・・と言いたくなる。よくこんなやつらに何年も取材できたなぁと感心してしまう。1日相手にしてるだけで不快感でぐったりしそうだ。監督が思わず笑ってしまっているシーンがちらほらあるのは、なんだこいつら・・的に思わずでてしまう笑いと、相手のある意味無邪気さへの親しみが混ざっているような気がする。掲示板の管理人が日本に住んでたり、親もフィリピンにいたりするのも、ああ・・・って感じ。この写真の親子、取るに足らないふざけたやつなんだけど、彼らがやってることがQアノンを生んだと思うと、きっかけと結果の乖離に気が遠くなる。陰謀論は昔から世界中にある。でもアメリカの場合は特に、「恐怖」と強く結びついてるような気がする。世界で最も強大な軍事力を持つ国は、世界中でもっとも怖がりな人たちだ。地理的に隔絶されてるからなのか、歴史が浅いので基盤がゆるいのか、アメリカってほんとビビりだな、とよく思う。この動画で、高橋ヨシキが、陰謀論を信じる人たちにとっては人生の松葉杖のようなものだから、それを奪うのは難しいと話していて、ほんとそうだな、と。
ゴールデン・ステート・キラーを追え / I'll Be Gone in the Dark
70年代から80年代にかけてカリフォルニア州北部で起こったレイプと殺人事件の真犯人を、ネットの情報網と公的機関の協力を駆使して突き止めたミシェル・マクナマラのドキュメンタリー。同名ルポのシリーズ化といってもいいけれど、著者が亡くなっているので、シリーズでは事件の被害者、警察、ミシェルの協力者たちが総出で出演してよりわかりやすく事件解明の全容を描いている。事件からかなり時間が経っているせいかもしれないが、こんなに多くの被害者や関係者が登場して率直に話すのも珍しいのでは。ミシェルが取材をとおして得た信頼のおかげなんだろなと思う。また、当事者たちの話しぶりから、製作スタッフがかなり誠実な態度で取材しているのが伺える。
こんなに昔の事件を解明できるだけの材料がネットで得られて(ネットフリックスのシリーズ「猫イジメに断固NO!: 虐待動画の犯人を追え」にもでてきたサイバー素人探偵も含めて)、警察などの公的機関へのアクセスも可能なことにびっくりする。そしてこのシリーズを見ていて感じるのは、当時のレイプに対する扱いのひどさ。捜査はいい加減だし、被害者への配慮もない。今でもこの風潮は残っているけど、当時の様子を証言する女性の話を聞いていると、世の中は確実にましにはなっているんだな、と。
このシーンに、ダニエル・クロウズが描いたミシェルとパットン・オズワルトのイラストを見逃さなかったよ。
最近まとめて観たQアノン、ゴールデンキラー、アレンVSファローなどのHBOドキュメンタリーを見てて共通してるのが、シャープできれいな映像と、徹底した取材力。特にゴールデンキラーとアレンVSファローは、映像がとてもきれいで、被写体への寄り方とか、画面の中心に据えてるのが印象的。