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ればと思います?

最近、よく耳にするビジネス用語? があるのですが、もしかしたらこんな辺鄙なところの記事を読んでいるあなたも、職場で使っているかもしれませんね。「ればと思います」と。
なんですか、これ。

私が一番最初に「ればと思われた」のは、第二王子を動物病院に連れて行った時でした。(※注 トップ画像は素材です。第二王子ではありません!)たぶん、生まれたばかりの小さい頃に、ウイルス性の結膜炎にかかったと推測され、今でもたびたび涙が出てしまうのです。病院で処方された二種類の目薬を点眼し、左目は治ったと言っていいくらいになりましたが、右目はずっと付き合っていくしかないようです。幸い、第二王子本猫は全く目を気にすることなく、毎日元気に過ごしています。

その日は、第二王子がくしゃみをしていたのが気になり、バスと徒歩で20分ほどの動物病院を受診しました。「気管支の薬を出しておきますね」と先生が言うので、ついでに「いつもの目薬もお願いします」と、短い診察を終え、私は待合室に戻りました。
第二王子は、移動中も大きな声で鳴くこともなく、とってもいい子です。くしゃみも、家で何度かしただけなので、そのまま症状が収まれば、薬は飲まなくてもいいかな……と、考えていた時でした。受付の女性に呼ばれ、私は会計をしにそこに向かいます。
受付の女性は、まず薬の説明をしてくれました。
「こちらが気管支のお薬となっております。昼と夜に一日二回、飲ませて頂ければと思います。あと、こちらがいつもの目薬ですね。二液は、一液を点眼後、五分程度間隔を空けてからして頂ければと思います。本日のお会計は、○×円になります」
一年以上前のことなので、一言一句正確ではありませんが、たしかこんな感じでした。
はい、はい、と相槌を打ちながら、私は脳内で首を傾げます。「薬を飲ませてください」「二液は一液のあと、五分以上空けてから点眼してください」でいいところを、「ればと思います」とは、何ぞや?

一度気になってしまうと、あたかもその言葉が、文章で言うと太字になったり、強調の傍点がついているかのごとく、私を襲い始めます。
それ以来、映画館に行ったら行ったで、カウンターに早く来すぎてしまったカップルが「上映開始10分前に来て頂ければと思います」と言われていたり、わたくし薫野みるく、三月後半に大規模な引越しイベントがあったのですが、人の大切な荷物を何箱もなくす最低な引越し業者の営業の奴は、「お部屋を拝見させて頂ければと思います」、不動産屋の担当の人は、複数の書類を準備しながら、「こちらにご記入と捺印を頂ければと思います」、住所が変わるからと連絡後、折り返し電話をくれた生協のおじさんも、「これからもご利用頂ければと思います」、最初に申し込んだものの、開通が遅いから断ったプロバイダの電話窓口の男も「ればと思います」

ればと思います
ればと思います

そろそろゲシュタルト崩壊して来ましたよね。それくらい、私はればと思われてしまったんです。何度も何度も。「いらしてください」「ご利用ください」と、丁寧にお願いすべきところを、奴らは決まって「ればと思う」んですよ。そいつら自身が「(客に対して)こうしてくれと思った」ことを言ったに過ぎないんです。

まぁ、これに限らず、ビジネスシーンでも、はっきりと明確な言葉で伝えられない人の方が多いです。年齢、男女問わず、今はそういう時代なんでしょうね。でも、「時代」と片づけて日本語を滅ばせてしまったら、先人たちに申し訳が立たないではありませんか。

当たり障りのない人付き合いをするうえでは、曖昧な表現が好ましいシーンもあるかもしれません。だから今は、ビジネスに的を絞って言うのですが、「ればと思います」は、やめた方がいいでしょう。理由は、はっきりと誤解のない敬語で話すことが、その本人、背負っている職場(会社)の信頼に繋がるからです。
 
もしも「ればと思って」いたあなたは、まずその人に伝えたいことが何かを見極めます。たとえば、動物病院の受付の女性は、私にこう告げるべきでした。
「こちら、気管支のお薬が一週間分です。昼と夜に一日二回、飲ませてあげてください。それから、こちらがいつもの目薬ですね。一液と二液は、間隔を五分程度空けてから差してください」

こうして書きながら思ったのですが、「○○ください」と相手に言うのって、そんなにハードルが高いことなんでしょうか。私は今まで、外で働くたびにセクハラ・パワハラに遭ってやめていますが、お客さんに対してはいつもはっきりと、笑顔で受け答えをしていました。なぜかそれがセクハラに繋がってしまったりもしたのですが……。そうだ、「それはセクハラですよ」ときっぱり言えなかった、自分にも原因があったのは事実なんですよね。
そう、だから、いかなる時でも強く正しく。変な客、迷惑な○○人もいるでしょうが、働く人がたくさんいてこそ、世の中は回っていくのですから。
今日もあなたのがんばりに、ありがとう。

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薫野みるく
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