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ドイツの歯科事情
プロローグ
最近めっきり歯が弱くなってしまった。
小さい頃は虫歯などほとんどできたことがなく、歯医者に通い詰めの母を子供ながらかわいそうに思っていた。
抜歯やら神経の手術やら、想像するだけで寒気がするような長時間の施術を受ける必要があったため、子供の私は待合室で結構な時間待っていた。
行きつけの歯科医院ではクラシック音楽が流れ、本も沢山置いてあって、当時本の虫だった私にとっては苦ではなかった。
父は歯が強い人で、物心ついたときから歯医者とは無縁に過ごしてきたのが自慢だった。勝手ながら、きっと私の歯は父似だから、歯医者とは無縁の日々を過ごすのだと子供心に思っていた。
ドイツでの歯科治療あれこれ
しかしながら、20代後半から30歳を迎え、様子はだいぶ様変わりした。
2021年の冬にドイツで受けた歯科検診で、虫歯がなんと8、9個は軽く見つかり、2000ユーロ以上の治療費がかかるということで目が飛び出る思いをした。
ドイツでは高額治療となる場合は、Kostenvorschlagといって見積書を出してもらうのが通常だ。それを保険会社に送り、何%がカバーされるのか事前に確認してから施術を受ける。
幸い当時は奨学金の関係でプライベート保険に入っていたので、どうにか難を逃れたが、前払いの建て替えが必要になり冷や汗をかいた。
ここで初めてドイツにも分割払いという制度があることを知った。
テレフォンセンターのお姉さんが天使に思えた。
という前置きはさておき、そんな痛い目にあってから、とにかく歯のクリーニングは最低年に2回行くようにしている。
基本的には前述のクリニックで満足していたのだが、就職を機に国民皆保険に移り、歯科治療のカバー範囲が狭くなると、経済的負担が増えた。
1回90ユーロだったクリーニングは、年々値上げしていき、前回はなんと180ユーロまで跳ね上がっていた。
しかもそれを施術当日の、直前にいうものだから、こっちはクリーニングする気まんまんで来た手前、結局施術を受けることになり、
国民皆保険および補助保険のキャップは優に超えて、なんだかクリーニングに行くのが億劫になってしまった。
そもそも日本の歯医者はクオリティが高いうえにとても安いので、
どうしてもそちらの感覚に流されてしまうのだ。
しかしながら、最近ドイツ人の友達に良い家族経営のクリニックがあると聞き、重い腰をあげて行ってきた。
確かに前のクリニックに比べると、普通のアパートを改装したつくりで
モダンな雰囲気ではないが、クリーニングは1時間で90ユーロ。
お手並み拝見ということで施術を受けたが、これがまた良かったのだ。
前の歯科衛生士に比べて、いろいろ喋らず黙々と仕事をする。
前のところはとにかくあれをしなさいこれをしなさい、仕事は何をしている、どこに住んでいるなどなどお説教と質問のラッシュで、
こっちは口をあけながら話しにくいのもおかまいなしで、早く終わってくれと願いながら施術を受けたものだ。
そもそも、50年前はフロスや歯間ブラシという概念もなかったはずなのに、どうして現代に生きる私たちはそうしたお手入れが、まるで必要不可欠かのように語られるのだろう。
今後期高齢者の方々はみんな総入れ歯とでもいうのだろうか。いや、お年寄りでも歯がたくさんある人はたくさんいるはずなのに。
兎に角、今回の歯科衛生士さんは淡々と仕事を済ませ、しかも水しぶきが飛ばないように気をつかってくれ、(ドイツのワイルドな施術は、とにかくこれが不快なのだ。)すっかり気に入ってしまった。
だいたいクリーニングによって歯がある程度きれいになる、という結果は変わらないのに、2倍の金額を払っていたのが少し馬鹿らしくなった。
歯医者関連だと、私はドイツで親知らずも抜いたことがある。
私の場合は少し特殊で、持病の関係上いわゆる血液がさらさらになる薬を飲んでいるため、抜歯の際に大量出血しないよう、通っている病院の主治医を通して薬の調整、血液検査による数値の確認を事前にする必要があった。
親知らずを抜くのは歯医者ではなく、口腔外科が専門で、紹介状を書いてもらい、面談をうけた。
ここの先生は、なんとも人柄の良い、はっきりした先生で、
「あなたのケースは全然お金にならないんだけど、ほかのクリニックでもきっとやってくれないだろうから、僕がやるわ。」と堂々と言い放った。
普通は主治医とのやりとりも患者がやらなければいけないのだが、全部自分に任せてくれてかまわないと。
ドイツ人のパートナーも、「それは良い先生だね、なかなかないよそんなこと。」と驚いていた。
初めてのオペだったので不安もあったが、もうすべてお任せした。
ドイツと日本の歯科治療の違い
ドイツの歯医者と日本の歯医者の大きな違いは、施術のワイルドさもあるが、麻酔の対応も結構大きいと思っている。ドイツでは特に質問されることはないし、さすがに親知らずのオペの時は同意書も書いたが、基本的には医師の判断で、有無も言わさずプチっとやられることの方が多い。(経験上)
これは、逆に日本在住のドイツ人的には非常に困惑するようで、歯医者から「麻酔をかけてもよろしいでしょうか?」などと聞かれても、
「それを決めるのはプロのあんたでしょうが!私に聞くな!」と思ってしまうらしい。
あとは、施術の効率性。ドイツは一回の予約でだいたい1、2本の歯をまとめて最後まで施術しきるのが普通。日本の場合は、複雑なケースだと削るのに予約、フィリングを入れるのに予約、その後の経過観察に予約、と非常に時間がかかる場合がある。これも、日本在住のドイツ人的には「さっさと終わらせてくれ!」となるようだ。そもそも仕事していたらそんなに歯医者にかけられる時間も限られている。
まあそんなこんなでクリーニングは無事に終わったが、新たな虫歯が4本見つかってしまったため、しばらく歯医者通いとなりそうだ。
お家ケアの基本(ドイツ版)
私がドイツの歯医者で口酸っぱく言われるお家ケアを書き残しておきます。
電動歯ブラシ使え(本当は丸形がベター)
フロス使え
歯間ブラシ使え
週に1回フッ素ジェル使え
の4本柱です。
1と2については言わずもがな。
3の歯間ブラシは色々ありますが、私はプラスチックのものを使っています。針金っぽいやつはどうしても歯茎に刺さったりすると痛いのですが、プラスチック製のものはわりとしなやかに曲がってくれるので痛みが少ないです。ドイツの薬局でもお手軽に購入できます。
4.フッ素ジェルはこちら。
elmex gelée Fluorid Zahnpasta
週に一回、夜は磨きをした後にこのジェルを使って歯を磨き、1分程度置いた後に洗い流します。私の同僚はこれを使うようになってから全然虫歯ができなくなったと言っていました。私はどうしても週1のケアが続かなくて挫折しがちですが。。今年はもう少し粘りたいですね。
ドイツ※ハンブルクで私がお世話になった(いる)クリニック
Zahnarztpraxis Axel Wölfle…コスパ良し、クリーニングの腕良し。オンラインで予約可能。
EFK Hamburg…割高、でも医師のレベルは高い。ドイツ語英語両方ok。クリーニングはそこそこ。モダンなクリニック。
MKG Rödingsmarkt…親知らずを抜いた口腔外科。腕ぴか一。とてもモダンで清潔感のあるクリニック。