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マックルモア「fucked up」歌詞和訳&解説
どうもこんばんは、烏丸百九です。
先日、「HIND'S HALL」等の楽曲でパレスチナ連帯を表明してきたアメリカ人ラッパーのマックルモアが、新曲「fucked up」をリリースしました。歌詞はこちらです。
また、日本語字幕付き動画を私のチャンネルにアップロードしております。
字幕版を製作してくださったSALA様、ありがとうございました。
Macklemore の『fucked up』は今、間違いなく世界で最も重要な曲です。
— SALA (@Salalovessuga) February 16, 2025
1度で良いから聴いて下さい。
字幕つけたので、内容を把握したら次は https://t.co/lHfyoEi3tU で聴いて下さい(印税が寄付される)。
私のこの字幕動画は他のSNS掲載OK、メンション無しOK。拡散して下さい。… pic.twitter.com/VWmQ8EGbLF
今回は、SALA様の和訳を参考に、私なりに訳した「fucked up」の和訳歌詞と、和訳に合わせた簡単な解説を書いてみたいと思います。
歌詞和訳
ああ、
大義のために立ち上がるか、それとも屈するか
私は病み上がりだが、ゲームの時間だ
[第1節]
世界は燃えているのに我々は水を所有していない[註1]
みんな囚人を数ドルで雇っている
新しい時代が到来したというのに
白人至上主義は依然として社会を支配している
ホワイトハウスの芝生からガザの植民地化について語っている[註2]
でも民衆は暴徒と化し、もはや引き下がらない
ついに我々全員を支配する寡頭政治家の男たちが見えた[註3]
エリートには減税して、庶民には増税するんだ
パレスチナの子供たちを殺し、我々がその代償を被る
なんでお前らは自分の家賃も払えないと思ってるんだ?
借金しても食料品が買えないなんてどうかしているだろう
西側がどう考えているか知ってるだろ?
すべてはヨルダン川西岸のことなんだ
停戦を呼びかけ、それから西岸地区の併合を始める[註4]
イスラエルがどうやって最高の戦車を買う金を得ると思っているんだ?
ネタニヤフはトランプが大好きで「ありがとう!」って言ってる
渡したのはお前らのカネだ、そうすべては繋がっている
奴らはお前らのSNSフィード、検閲対象の情報をコントロールしている
ハッシュタグをブロックしたから、「#FreePalestine」と言うことはできない[註5]
トランプが来てから2週間が経ったけど
7月頃にはどうなってしまうか考えてみなよ
でも、アメリカ人は目に入らないものはすぐに忘れてしまう
そして奴らもそれを知っている
だから奴らは我々の命でゲームをしているんだ
[コーラス]
奴らはこの世界をめちゃくちゃにしたんだ
奴らはこの世界をめちゃくちゃにしたんだ
奴らはこの世界をめちゃくちゃにしたんだ
そしてイーロン、我々はあのジェスチャーが何だったのか正確に分かってるんだ[註6]
奴らは我々をめちゃくちゃにした
奴らは我々をめちゃくちゃにした
奴らは我々をめちゃくちゃにした
そしてイーロン、我々はあのジェスチャーが何だったのか正確に分かってるんだ
[第2節]
モスクを爆撃することはできても、信仰を破壊することはできない
人を殺すことはできるが、それをきっかけに抵抗が強まる
我々の大統領がイスラエルの金庫に何十億ドルも送っている一方で
民族浄化でシオニストが安心することは決してない
より多くの血、より多くの武器、より多くのお金、より多くの抑圧
より多くの憎悪、より多くの恐怖、より多くの壁、そしてより多くの入植地
入殖者がホワイトハウスで我々に話をした
起こると言った最悪の事態が今起こっている
それでもパレスチナ人は家に向かって行進している
そう、それが回復力だ
何百万人もの人々が
まるで世界が彼らと共に歩いているかのように祝っている
神の掌の上にいる者が信念を砕かれる様を目撃することはない
彼らの中に生きているオリーブの木を燃やすことは誰にもできない
次の4年間は、乗る切る時だ
ファック ICE! コンゴ、スーダン、パレスチナを解放しろ[註7]
もしまだ虐殺について何も言ってないなら
いつか孫たちがお前らに「なぜ?」と聞くことを知っておいてくれ[註8]
[コーラス]
奴らはこの世界をめちゃくちゃにしたんだ
奴らはこの世界をめちゃくちゃにしたんだ
奴らはこの世界をめちゃくちゃにしたんだ
そしてイーロン、我々はあのジェスチャーの意図を正確に分かってるんだ[註6]
奴らは我々をめちゃくちゃにした
奴らは我々をめちゃくちゃにした
奴らは我々をめちゃくちゃにした
そしてイーロン、次はコバルトと児童労働の話をしてやるよ[註9]
歌詞解説
[註1]:マックルモアは、数十万人が避難を余儀なくされ、住宅を含む数千の建物が破壊された2025年1月のロサンゼルス山火事に言及している。この事故では、ワンダフル・カンパニーの億万長者のオーナーであるスチュワート&リンダ・レズニック(レズニック家)が、カリフォルニアの水供給の「ほとんど」を所有し、管理しているという主張がソーシャルメディア上で広まっていた。この見解には誇張が含まれているが、億万長者と企業の利益が水のような公共財を管理していることが、気候変動と混乱を助長しているという訴えである。
[註2]:マックルモアは、ガザ地区からすべてのパレスチナ人を追放し、アメリカが管理する「中東のリビエラ」にするというドナルド・トランプ大統領の計画に言及している。(アルジャジーラ報道)
BBCニュースによると、トランプ大統領は2025年に大統領官邸に戻った後、紛争が終結したら、イスラエルはガザを米国に引き渡すと述べた。しかし、ホワイトハウスの報道官カロリン・リービット氏は、この提案に米軍や資金が関与することはないと否定した。この矛盾を踏まえ、バイライン・タイムズなどのメディアは「トランプのホワイトハウスに対する、白人至上主義思想の影響は今や明白だ」と主張した。
マックルモアは、世界が変革の大義のために立ち上がる新たな時代が到来したにもかかわらず、抑圧的な勢力は依然として同じままであり、唯一の違いは、彼らがより大きな権力の座を占めているということだと強調している。
[註3]:今や「影の大統領」と呼ばれるイーロン・マスクやジェブ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグら米テック大手の大富豪は、トランプの大統領就任式にこぞって出席し、媚びへつらうような笑顔を浮かべているのが世界中で報道された。
ベゾスは所有するワシントン・ポストへの表現規制を強め、ザッカーバーグもMetaのSNSプラットフォームに関してモデレーションの廃止を進めるなど、強欲な資本家が民主主義を毀損する姿勢はますますあからさまとなっている。
[註4]:イスラエル軍は1月から、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸北部のジェニンなど3か所の難民キャンプで軍事作戦を続け、キャンプの住民計4万人超が避難民となっている。
作戦の狙いは表向き「武装勢力の掃討」だが、2000年代初頭の第2次インティファーダ(反イスラエル蜂起)以来、最も長い侵攻となり、02年以来初めて戦車も展開された。ガザ地区をスケープゴートとして、西岸地区の併合を進めるイスラエルの計画は明らかだと言える。
[註5]:YouTubeの本作公式MVには年齢制限と暴力表現の規制がかけられており、烏丸の投稿した日本語字幕版も同様の処置を受けている。YouTubeはこれらの措置について理由を説明していない。
[註6]:マックルモアは、 2025年1月20日の米国大統領就任式の直後に行われた集会でイーロン・マスクが(2回)行うことにした明らかなナチス式敬礼に言及している。この敬礼は、マスクの発達障害などの言い訳とともに、多くのマスコミやテレビの解説で軽視され、ナチズムの宣言であることを否定された。
ちなみに烏丸も発達障害であるが、突然ナチのポーズを取ったことは人生で一度も無い。
[註7]:「ICE」はアメリカ合衆国移民・関税執行局の通称であり、トランプ政権発足後、”不法移民の強制送還”を旗印に、極めて強引な手段を用いて外国籍者の強制排除を押し進めている。
「コンゴ民主共和国」は資源などを巡る内戦状態にあり、米国寄り政府の隣国・ルワンダが反政府武装勢力を支援しているとされている(後述の[註9]も参照。)
「スーダン共和国」ではロシアやUAE等の影響下にある反政府武装勢力「即応支援部隊(RSF)」と国軍が激しい衝突を繰り返しており、RSFは多数の民間人を殺傷していると言われている。
コンゴ解放運動とスーダン解放運動の活動家はパレスチナ解放運動家を兼ねている場合も多いが、政治的党派性を問わず全ての抑圧と暴力を否定するのがマックルモアの姿勢である。
[註8]:平和を求めるユダヤ人団体は繰り返しガザのジェノサイドを非難しているが、マックルモアはここであえてユダヤ人の子どもとガザの子どものイメージを重ね合わせている。
[註9]:電気自動車(EV)やスマートフォンに使用されるリチウムイオン電池にはレアメタルのコバルトが使用されている。世界のコバルトの70%以上はコンゴ民主共和国で採掘されているが、その採掘現場は、児童労働などの深刻な人道上の問題をはらんでいると指摘されている。
イーロン・マスクは23年5月のテスラの株主総会で、コバルト鉱山の児童労働問題に触れ、外部機関による監査や監視カメラの設置を行うと宣言した。
しかし、フォーブスの調査によると、それから1年以上が経過した今も、マスクが約束した監視カメラは鉱山に設置されていない。