こんにちは、烏丸百九です。
50回ほど配信して、多少は「Vtuber」が板についてきたかな? という私ですが、ここで皆様から嫌われそうな話をしてみます。
先日、大手Vtuberブランド『にじさんじ』の英語圏向けグループである『NIJISANJI EN』に所属していたタレントの『Selen Tatsuki』さんが、突如として契約を解除されるという事件がありました。
Selen Tatsukiさんはチャンネル登録者数78万人を誇る人気タレントで、(彼女を含む)メンバー33名中でもトップ5に位置していました。発表が突然だったこともあってかファンコミュニティは激しく動揺しており、運営批判やひいては(多くは運営に同情的な)日本側のファンに対する非難など、各地に飛び火してしまっているようです。
今回は、むやみな憶測や中傷は避けつつ(後述)、運営公式発表に見て取れた、日米のディスコミュニケーション疑惑について考えてみたいと思います。
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はじめに
まず初めに言っておきますが、以前の記事でも述べたように、これは憶測や風評の流布、ANYCOLOR社やSelen Tatsukiさんへの誹謗中傷、炎上ビジネス等を目的として書かれている記事ではありません。私は「にじさんじ」ブランドを嫌っているアンチファンではなく、またANYCOLOR社の株価の下落や、所属ライバーの方々の評判を落とそうという意図は一切ありません。そういったものをお求めの方は悪質なまとめサイトでも見ていてください。
私の目的は、「VTuberタレントの人権は(実在人物と同様に)守らなければいけない」という立場から、実際に本件トラブルの中で「人権侵害=ハラスメント」と呼びうる行為が起きていたのかどうか、演者側からの申し立てを、できるだけ客観的に検証してみることにあります。
まずは、現在つかめる唯一の公式情報として、ANYCOLOR社が出している公式ステートメントを確認していきたいと思います。こちらには日本語版と英語版があり、日本語ファンコミュニティで広まっているのは前者、英語ファンコミュニティで広まっているのは後者です。当たり前といえば当たり前ですが、ここが重要なポイントなので、最後まで覚えておいていただきたく思います。
ANYCOLOR社公式発表の「違和感」
投稿はどちらも「NIJISANJI EN」のオフィシャルアカウントとなっており、日本語公式にはリポストされていません(2月12日現在)。これが本件の日本語圏ファンと英語圏ファンの著しい温度差の原因のひとつであるようにも思います。ファン層の違い以前に、公式からのわかりやすい発表が無いため、日本語圏の「にじさんじ」ファンは殆どこの騒動を知らないと見られます。
まずは日本語版です。
次は英語版。
どちらの文章も「PDFと思われる画像をベタ貼り」「ALTテキスト無し」という「喧嘩売ってるのか?」というレベルでアクセシビリティの酷いものだったため、Googleドキュメントの機能を使って全てOCR文書化しました。もしもこちらから引用する場合は、元の公式のポストをきちんと例示した上で行うようにして下さい。
日本語版OCR
英語版OCR
「Selen Tatsuki」氏による他のライバーに対する嫌がらせはあったのか?
あまりに長大で要点を得ない内容故、気付かない方もいらっしゃったかも知れませんが、実は日本語版と英語版には決定的な違いがあり、それが文章全体の印象を大きく変えるものとなっています。
以下は日本語版文章の一部です。
一方、以下は該当する箇所の英語版の一部です。
日本語版は明確に「ANYCOLOR関係者からは「Selen Tatsuki」による嫌がらせや不適切な行為を受けている旨の相談が継続して」報告されており、最終的にTatsuki氏と周囲の関係が悪化したものの、「ANYCOLOR及び所属ライバーとして、不当な対応は取っていなかったものと確信しています」と述べて、元はと言えば「Tatsuki氏側からのハラスメントが存在した」ことが原因で、最終的に「関係悪化」が起きた、という論理構成になっています。
しかし英語版では、Tatsuki氏の「ルール違反」の一端を示すだろうこの重要な箇所が省略され、「ENライバー在籍中の(Tatsuki氏の)不適切な行為についても報告が続いております」と述べるに留まっている一方、「ANYCOLORは、私たちおよび所属する他のライバーが「Selen Tatsuki」に対して不当な行為を行っていないと固く信じています」と変更されており、感情的な揉め事や、ハラスメントの事実自体を認めていないような書き方になっています。
これはTatsuki氏側がANYCOLOR社に対して、ハラスメントに関する何らかの法的訴えを起こすことを検討する場合、無視出来ない点だと思います。日本語版の公式見解としては、「Tatsuki氏側からのハラスメントが存在し」、「(ANYCOLOR社からTatsuki氏に対する)注意等の過程で生じた」結果として、逆にTatsuki氏側からハラスメントの申し立てが行われているという流れなので、「Tatsuki氏側からのハラスメント」の程度如何によっては、ハラスメントの申し出自体が「自分でもハラスメントをしたのに不当な主張だ」と退けられかねません。
一方、英語版の公式見解としては、(Tatsuki氏とANYCOLORの)双方においてハラスメント行為は存在しておらず、Tatsuki氏はありもしない事実に関する虚偽の申し立てを(ENの評判を下げる目的で)行っていることになってしまっています。この場合、Tatsuki氏側からANYCOLOR側の行為がハラスメントであると客観的に認定させる必要が生じると思います。
一番理解に苦しむのは、今後の法的措置の展開も左右さねかねない、最も重要なポイントについてなぜ公式のステートメントが矛盾しているのか? という点です。
現状これしか情報が無い以上は、更なる憶測を重ねることは避けるべきですが、もしも何かしらの悪意によって二つのステートメントの内容を変えているのなら、Tatsuki氏側の「ANYCOLOR社はハラスメントを行っており、その事実を隠そうとしている」主張に、俄然真実味が増すことになります。
日本本社とENサイドの連携は十分だったのか?