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バンドリアニメMyGO感想4 椎名立希と要楽奈について

この二人についてはまとめて語ってしまおう
いずれも背景について不明な点が多く、今多くを語ることが出来ないから
また、この二人は絡みも多くて、まとめると語りやすい部分もあるので

1)椎名立希について

立希は旧「CRYCHIC」のメンバーだが、CRYCHICが燈を起因にして始まった月ノ森生徒が中心のバンドだとすれば、その能力を買われて学外から一人選抜されたメンバーであるため、最も関係性の薄い傭兵的なメンバーだったと言えるだろう
また、本人は人を寄せ付けない性格をしていて、その点からも月ノ森メンバーとは特別深い付き合いをしていた訳ではない様だ
ただ、このバンド一回だけのライブ成功の時、ボーカル燈の歌に深く感動した様で、その燈に対してだけは心酔とも言える好意を寄せていたが、それも解散までの短い期間の事であり、当時は当の燈本人から全く認知されていなかった様だ

立希の人を寄せ付けない性格の原因は、出来の良い姉へのコンプレックスから来ている様だ
立希の姉は月ノ森の吹奏楽部出身の有名人で、恐らく演奏者としても全国クラスの才能の持ち主と思われる
立希は常にその姉と比較されて育った事で常に劣等感に苛まれ、人を寄せ付けず、姉と比較されると攻撃的になる、正に一匹狼を気取る様な性格になっているらしい

しかし、燈に対して心酔とも言える好意を持った後は、燈にだけは非常に不器用ながらも優しく接しようとする
また、常識的な行動をしない要楽奈に対する態度など、文句を言いつつも世話焼きな側面もある
その本性は、可愛いモノが好きで実は情の厚い、不器用な少女と言えるだろう

心酔

2)立希の進学

祥子が「CRYCHIC」脱退を宣言し解散した件について、立希は自身が行かなくなった理由は、燈が来なくなったからだと語っている
関係の薄かった立希にとって、「CRYCHIC」は発起人の祥子が抜けた時点で「終わった」存在となっており、ただ、燈の歌だけが諦められないモノだったのだろう

立希の進学は少し不思議なことになっている
元々進学校の羽丘から、中高一貫にも関わらず花咲川に転校したのだ
進学校からランクを落として転校することなど通常はないだろう
考えられるのは、学内進学にも成績がある程度関係し、立希は学業とは別の何かに没頭し成績を落としていたのかもしれない
また、自分の姉を知っている存在を少しでも減らしたいと、知人の少ない学校に転校したのかもしれない
そしてもう一つの理由として、もしかしたら恐らく公立中学に通っていたであろう燈の進学先として、最も可能性が高いところが花咲川であり、そこに進学すれば「偶然」燈とクラスメイトになれるかもと夢見ていたのかもしれない
おしゃべりの苦手な燈だが思いのほか学業は出来るらしく、進学校の羽丘に進学して羽丘の中学だった立希とは完全にすれ違ってしまったのだが

ともあれ、中学3年生だった立希の興味は進学にはなく、完全に燈一色だった可能性がある
立希は、受験勉強すべき時期に作曲の勉強にのめりこんでいたらしい
それは、燈の歌に曲をつけるため
バンド「CRYCHIC」の音楽は、燈の歌詞とそれを見出して曲も付けた名プロデューサー兼天才コンポーザーの祥子の二人によって生まれていた
しかし、その祥子がいない今、燈の歌詞を曲にするためには作曲家が必要で、それを自分が担うという決心からの行動だろう
立希は、燈にまた会えるかどうかすら分からない状況の中で、そのように決心し努力していた
それは恐らく熱に浮かされた様なもので、学業にも身が入らず、学校側とも衝突して荒れた状態となり、その結果が進学にも影響したのでは無いかと思える
そう想像すると、立希の燈に対する気持ちの大きさが感じられる
そして、その多くを犠牲にした努力は、新バンドの結成に際し充分役に立つことになる

焦り

3)バンド「MyGO!!!!!」の立役者

新バンドでの最初の作曲、そこでは時間が無く、バンドメンバーも流動的、要楽奈という才能あるギタリストが表れ、それが自分よりも明らかに音楽的に優れた存在で、立希はその才を活かそうとそのギターアレンジを曲に取り入れようとする

バンドの曲を調整し、自分がバンドの音楽を管理しているというプレッシャーを感じ始める中、それがかつての「CRYCHIC」の祥子と同じ立ち位置であり祥子がそれを軽々とこなしていたことを思い出す
それを自分の中に元々ある姉へのコンプレックスの感情と重ね合わせてついバンドメンバーに当たってしまい、自分も逃げ出してしまう
自分にも他人にもより多くのものを求めてしまう立希の想いの強さ故の逃亡と言えるだろう

それでも、愛音の無神経で強引な最強の対人スキルで説得され、結果的には曲を形にすることに成功する
それはたった一つの望み、燈の歌詞を曲にするため
その自分の望みを、他の全てを捨てるかの様な努力によってでも形にする意志力の高さは、人にも自分にも厳しい立希ならではの才能だろう

その後も新バンドは時間のないドタバタの中で曲を作ることになり、次のライブのために、そして出来てしまった燈の歌詞のために、丸一日で二曲もの作曲をすることまで為し遂げてしまう
この立希がいなければ新バンド「MyGO!!!!!」は形にならなかったと思えるほどの努力と成果であり、正に立希こそ「MyGO!!!!!」の立て役者と言ってもよいだろう

特にリーダーを定めた様子が無い「MyGO!!!!!」だが、燈がバンドの精神的な支柱だとすれば、バンドの音楽性を全て引き受けているのは立希であり、それはそのままバンドマスター=リーダーと言えるだろう

努力

4)立希と燈

立希は燈をバンドに呼び戻そうとする際(4話)、そよに対して燈の歌詞への想いを赤裸々に語っている
「自分のことだ」「こんな私でも生きてて良いんだ」
立希は決してそよに対し全面の信頼を寄せてはいない筈だ
それでも「CRYCHIC」の数少ない居残りメンバーとして、かつて燈の歌の良さを共有した仲間として、自身の一番弱い部分を曝け出して互いの意識を一つにしようとしている(この時のそよの側の受け取りについては感想3参照)
その位、立希にとって燈の歌は、常に真剣に向き合うべき大切なものなのだろう

立希は、燈を練習日に毎回自宅まで送っている様だ
燈を「かわいい」と言って憚らず、燈の言葉は絶対だ
立希の心酔は歌詞のみに留まらず、燈という人格の全ての神格化にまで及んでいるのではないかと思える程だ
しかし、燈の方は立希から受ける愛情に対して戸惑いを感じている様だ

そもそも燈は自身へ向けられる愛情に対しては全て懐疑的だ
それは燈自身が自分の持つ愛情に対してすら実感を持っておらず、自分が感じる愛情と言う感情について自分のものと世界のものとは別のものなのでは無いかと疑っているからだろう
燈にこの感覚があり続けるからこそ、彼女の歌は未だ渇望を湛えたものになるのだろうが
そんな愛情に現感の無い燈にとって、他人への攻撃性はより理解し難い事かもしれない
人との関係が愛情の有無に依らないのであれば、人と接するのにわざわざ攻撃的になるのは全く無意味な事であり、理解不能な行動だろうから

普段から攻撃的な雰囲気を纏っている立希は燈にとって元々理解不能な存在なのかもしれないし、その立希が燈に対してだけ優しい事も、理解し難いことなのかもしれない
立希は燈を毎回自宅まで送るが、立希自身も燈の立希に対する無理解を感じているのか、自宅の手前の陸橋までしか送る事が出来ない

ただ、立希は燈の歌詞に曲をつける事で、燈と接する事が出来る
燈は立希の歌詞を「あったかい」と表現した
それは燈が普段立希本人に対して感じている雰囲気とは正反対のもので、燈にとっては意外なものだったかもしれない
しかし、そんな風に立希の作曲が燈に認められ続け、燈の歌詞との共同作業が続けば、何時か燈にも立希の内なる気持ちが伝わるかもしれない

不器用な想い

5)要楽奈について

要楽奈はバンド「MyGO!!!!!」メンバーにおいて最も描写が少ないキャラクターだ
その割にはそのエキセントリックな行動と見た目、ギター技術の高さと中の人の人気からか人気が高い
その為もあってか、今後予定されている劇場版では追加描写が予定されていたりもする
なので今は語るべき時期でないのだが、出来る限りのことは書き留めておきたい

楽奈はRiNGに自由気ままに入り浸り、気が向いた時にギターを引き、それを誰からも咎められない、という行動を続けている
ついた渾名は「RiNGの野良猫」
その正体は、RiNGの前身の前身、大ガールズバンド時代における伝説のライブハウスSPACEの元オーナーであり、ミラキュラスカーレットというバンドを組んでいた伝説のバンドマンである都築詩船の孫娘であることが分かっている

なお、姓が違う事から楽奈の母が元オーナーの娘である可能性が高い
楽奈がおばあちゃん子である所から、楽奈の母の存在はかなり気になる
楽奈の母はバンドをしていなかったのか?
今はどうしているのか?

ともあれ、楽奈は元オーナーから溺愛されているらしく、ライブハウスの店員からも覚えられている為に、RiNGにも自由に出入り出来るらしい

楽奈のギターは元オーナーのヴィンテージギターの逸品で、恐らく非常に高額だろうが勝手に持ち出して自分のモノにしてしまったらしい
そのギター技術は確かで、ちょっと見た楽譜からアドリブ演奏が出来て、感覚的に超絶テクを披露する
それだけの腕がありながら、今までどのバンドにも属さず、気ままに行動していた様だ

しかし、燈を中心とする新バンド結成の際、偶然その場にいた楽奈は、燈の「一生バンドする」と言う言葉に強く惹かれたらしい
燈達の練習現場にいきなり入り込み、ギターを披露し、自分もバンドに入りたいという意志を行動で示す

楽奈にとってバンドは何よりも優先すべきモノで、それ以外の価値はどうでも良いモノなのだろう
その価値観を有している人物は、今まで自分の祖母以外に見当たらず、バンドに所属する理由がなかった
しかし、燈のバンドへの想いに楽奈は共感し、そこに自分の居場所の可能性を見出した様だ

ルーツ

6)バンドの色を作る

新バンド「MyGO!!!!!」は「CRYCHIC」の元メンバーの三人が中心となって結成したバンドだ
燈の歌詞が基になり、不在となった祥子に替わって立希が作曲し、楽曲が出来る
しかしその立希と祥子の作曲の違いは、立希の曲にはギター楽奈のアレンジが多く取り入れられていること
完璧超人だった祥子は作曲を完全に一人でコントロールしていた様だ
しかし、立希の作曲は恐らく初めての付け焼き刃であり、決して音楽的に高度なモノでは無いのだろう
立希自身もそれを自覚しているらしく、楽奈が自分の作曲を超えるアレンジで演奏を始めると、楽奈の音楽性の高さを即座に認め、そのアレンジを曲に取り入れている

楽奈のギターアレンジを加え、バンドがツインギターとなった時、旧「CRYCHIC」は完全に新しいバンドに生まれ変わったと言っても良いだろう
自信と余裕にあふれた祥子のピアノが華やかさも穏やかさも表現する安定したサウンドの「CRYCHIC」に対し、愛情の渇望を湛えた燈の感性をリスペクトする楽奈によるゴリゴリのギターがサウンドの中心を駆け抜ける、感性で全てを捻じ伏せる様な新バンド
楽奈のギターの才能が、新バンド「MyGO!!!!!」の新たな楽曲の色を決めたといえるだろう
それは、バンドのメインの目的でもある「燈の歌を表現する」という点においても、より相応しいサウンドになっている様に思える

新バンドが「春日影」を演奏し、燈がそよの怒りに戸惑い迷った際、楽奈は即座に燈から興味を無くし、バンドからも去る

しかし、燈がバンドメンバーを呼び戻すため、たった一人でステージに立った時、一番最初に燈に寄り添ったのも楽奈だった
楽奈にとって、たった一人でステージに立つという、誰も想像出来ない様な燈の行動こそ、正に自分が燈に期待していた「バンドへの強い想い」の表れた行動だったに違いない

燈の歌に対して、まずは楽奈がギターで寄り添い、そこにそっと添える形で立希のドラムが入る
ほんの少し前まで素人だった愛音も練習したギターで参加し、そこに意を決したそよが強い意志力を持ったベースで入り、その楽曲が完成する
この楽曲の成り立ちこそ、バンド「MyGO!!!!!」の楽曲全ての音楽性そのものに通じているように思う

次のライブに向けてのバンド仲間同士の練習の際、楽奈はポツリと自分の想いを口にする
「居場所は誰かが作るもの」
楽奈のとことん自由な性格を許容し、それでいてバンドが何より一番で、自分の音楽性を充分汲み取って活用してくれる場所
楽奈は燈の「一生バンドする」という想いから生まれた「MyGO!!!!!」に、自分の居場所を見出し、改めて居座ることに決めたのだろう

音楽の申し子

7)燈と立希と楽奈と

楽奈は燈を「おもしれー女」と評する
バンド第一主義の楽奈にとって、燈の歌に対する想いの強さは好ましいモノだろう
しかしそれだけが楽奈が燈に対して興味を持った理由だろうか
楽奈のバンド第一主義の想いは、他の誰もが理解し難い程の独特なモノだ
彼女は常に力を抜き、自分の好きなことだけをするが、それは自分の考えが他者から理解されないであろう諦めの結果である様にも思う

誰にも理解出来ない心を持ち、自分の内なる感情を音楽に変え、バンドの中で昇華する
その熱情の姿は、燈と楽奈、二人に共通するモノだ

楽奈は燈の中に自分と同じモノを感じたからこそ、自分と同じ様に変な存在を「おもしれー女」と評したのだろう
だから、楽奈にとって燈は、ただそこに居てくれて自分と同じ想いを歌として表現してくれるだけで良い存在
二人の間には特に会話は無くても良く、それでも音楽の中では魂が重なり合うが如く互いに絡みながら楽曲を奏でている様に思う

対して、楽奈にとっての立希は、バンド「MyGO!!!!!」という居場所の庇護者に思えているだろう
立希が燈の歌が大事なら、MyGOも大事なはず
立希が自分と同じ存在である燈を守りたいなら、MyGOという自分の場所も、引いては楽奈も守ってくれる

楽奈にとって、かつての居場所であったライブハウスSPACEの代わりがバンドMyGOだとすれば、SPACEの元オーナーである祖母と、MyGOのバンマス的存在の立希はイメージが重なっているのかもしれない
楽奈にとっての立希は甘えるべき存在であり、立希にしてみればその楽奈の行動は戸惑うものだろう

燈と立希と楽奈、この三人はその生き方が、魂の在り方そのものが人より不器用な存在であり、だからこそ互いに寄り添いながら、その内なるモノを音楽として吐き出して、バンド「MyGO!!!!!」の楽曲を作っている様に思う

居場所

おわり

さて、MyGOメンバー一人一人に対する深掘り感想は一旦ここまで
物語「It's MyGO!!!!!」における登場人物の設定は非常に良く出来てると感じていて、それこそいくらでも深掘り出来てしまう
なので、このMyGOメンバー五人についても未だ書き足りない位なのだが、キリが無いのでこの辺りで一区切りとする

次は、一番書きたかった祥子について書くつもり

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