Plastic Tree Live Chronicle全部聴く(8)
後半戦。
Disc 14-15 「メジャーデビュー二十周年“樹念”特別公演 於 パシフィコ横浜 第一幕【Plastic】things/1997–2006」(2017年7月29日@パシフィコ横浜 国立大ホール)
[DISC1]
〜Opening〜
眠れる森
不純物
エレジー
スピカ
ザザ降り、ザザ鳴り。
無人駅
オレンジ
Sabbath
egg
涙腺回路
黒い傘
アンドロメタモルフォーゼ
[DISC2]
うつせみ
メルト
真っ赤な糸
リプレイ
記憶行き
アルバムリクエスト後半は『ネガとポジ』。2部は『ウツセミ』と周辺シングルからということで、個人的にこの頃のプラが特別好きだということもあって非常に嬉しい選盤選曲だ。『ネガとポジ』は当時メジャーデビュー10周年だったからということもないだろうが非常に充実した作品であり、様々な試行錯誤を重ねてきた彼らにとってひとつの金字塔となるアルバムだったのではないかと思う。
当時のプラを振り返ってみて思うのはいわゆる『ロキノン系』に寄っていたなということであり、一方でその90's洋オルタナティヴに強い影響を受けたサウンドは初期と地続きでそこまで大きく変わらないということだ。
2007年には初の武道館公演も成功させ、世の中の『ネオヴィジュアル系ブーム』の流れもまた追い風となりベテランバンドとして次のディケイドへと歩を進めていく。
後にTHE NOVEMBERSやPeople In The Boxらといったバンドがトリビュート・アルバムに参加し対バンやセッションなどすることを考えても、プラスティック・トゥリーというバンドがヴィジュアル系だけではないリスペクトの対象として幅広く愛されていることがわかる。このライブで再現されたアルバム『ネガとポジ』はまさにそれがわかりやすく伝わるような作品なのではないかと思う。
今でも1曲目に演奏されることの多い代表曲にして闇のスピッツ的なシューゲイザー・ポップス「眠れる森」に始まり、耽美でありながら歯切れのいい楽曲が並ぶ。「ザザ降り、ザザ鳴り」や「無人駅」といった、元プロデューサーNARASAKIが主催しているバンドでありナカヤマアキラ自身によるサポート参加でも知られるCoaltar of The Deepersの影響下にあるようなギターロックもあれば、「スピカ」のようにJ-POP的な『(真っ当に)泣けるバラード』みたいなものもあり、「不純物」のようにNirvanaへの愛を隠さない楽曲もあったりとバラエティ豊かであり、それでいてタイトルが指すようなレトロでモノクロームな質感が支配的でもある。
本ライブでの演奏はそんなわかりやすく名盤である今作をシンプルに良い演奏によって何倍も何倍も良くしている。
中でも、参加当時は前任者の延長を意識しすぎてどこか個性を抑えていた印象のある佐藤ケンケン氏のドラムがここへ来て重要なファクターとなったことは間違いないだろう。持ち味である細やかなフレーズさばきを活かしつつもストレートな魅力を放つ太いロックドラムを力強く叩いている。良い意味ではあるがいつも通りの残りメンバーの演奏を後ろから蹴り上げるような威勢の良さがある。
第一部のラストを「アンドロメタモルフォーゼ」のライブならではの長尺なジャムと歪みで彩ったあとは、アルバム『ウツセミ』からの楽曲を中心に演奏する第二部へ。当時『ネガとポジ』本編から外れてボーナストラック的な扱いだったシングル「真っ赤な糸」もここで披露されたが、特に彼らの代表曲と言ってもいいだけに期待していたファンは多いのではないだろうか。
一つ前の『Puppet Show』再現公演と並んで頼りになるベテランとフレッシュな新人の化学反応が生まれたことをわかりやすく聴き取ることができる演奏であり作品。マニアも近作から入ったという人も一度聴いて損はないライブの名盤だ。
投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。