建築家・谷口吉生さんのオフィスビル
建築家の谷口吉生さんは主に美術館を設計されていますが、オフィスビルも多く設計されています。
「美術館の設計で有名な谷口吉生さんが設計されたオフィスビルってどんな感じなんだろう?」と思われている方も多いと思います。
ぶっちゃけ美術館みたいですごいです笑
オフィスビルと聞くと事務所となる床面積をできるだけ大きくして他の空間は可能なので限り小さくすることを求められることが多いですが、谷口吉生さんのオフィスビルはオーナー様のご協力もありすごくゆったりと設計されています。
「こんな素敵な空間のオフィスビルで働けるなんてうらやましい!」と私は思います。
ということで、ここでは谷口吉生さんが設計したオフィスビルを5つ紹介したいと思います。
残念ながら私はここで紹介するオフィスビルで働く社員ではないので内部は入れません。
なので外観の写真がメインとなります。
日本IBMテクニカルセンター
千葉県の海浜幕張にあるオフィスビルです。
とても大きなカタチをしています。
海浜幕張といえば高層ビルが建ち並ぶ都市ですが、こちらのオフィスは高層ビルではなく中高層ビルを選ばれました。
建築マニアの私にはこのビルを見ると「磯崎新さんの都庁案」を思い出します。
東京都庁舎の設計コンペでは、ほとんどの建築家や設計事務所が高層ビル案を提案されたなかで、磯崎新さんだけが大型の中高層ビルを提案されました。
※設計コンペとは設計契約を結ぶ人を選ぶ際に一番優れたアイディアを提案した人を選ぶ設計競技のことをいいます。
選ばれたのは建築家の丹下健三さんの案でした。
現在建っているのが丹下健三さんの作品なので、磯崎新さんの都庁舎は建たないまま終わってしまったのですが、後に丹下健三さんはフジテレビスタジオの建築作品でそのアイディアを応用されています。
※詳細は「磯崎新の都庁」という本をお読みください。
話が飛びました笑
こちらのオフィスビルには美術館的アイディアがたくさん盛り込まれています。
エントランス前にブリッジがかけられているのですが、このブリッジがエントランスに入る前に気持ちをたかぶらせてくれます。
地上には池や竹やぶが設けられていて、ブリッジからはその光景をながめることができます。
外部階段さえも開口部の設け方や光の降り注ぎ方など凝って作られていることが伝わってきます。
この階段を見ると土門拳記念館の階段を思い出します。
こちらが土門拳記念館にある外部に設けられた階段です。色合いや階段壁の素材感など雰囲気がとても近いのではと感じました。
建物の全体姿を見ていると大きく凹んだスペースがありますが、ここはテラスになっているようです。(社員ではないのでいけないのが残念です。)
フォーラムビルディング
東京・青山の土地にそびえ立つクールな表情をしたビルディングがあります。
他のビルとは似ているようでどこか違うその姿に思わず見とれてしまいます。
「いったい何が違うんだろうか?」
よーく見て考えます。。
そしてわかったことは、とにかく柱が細い!
幅は約400ミリで、よくよく見ると梁も同じサイズです。
ちなみに柱は3.6mピッチで計画されています。
簡単なように見えますが、たぶん普通にやろうとしてもできないものです。
まず柱と梁を同じサイズに統一するのがとても難しいですから。
美しさの理由は徹底的に考えられたことから生まれたプロポーションなんですねきっと!
道路に面した建物の1階部分はピロティになっています。
他のビルを見ると道路面は店舗とかになっているんですが、ピロティのおかげで開放的ですね。
こういうところも他のビルディングとは異なるところです。
エントランス周りはタイル張りで規則正しく美しく施工されています。
規則正しいフレームとガラスの配置により夜はガラスから明かりが漏れ、街を照らす素敵な行燈となってくれることでしょう。
GC コーポレートセンター
こちらも谷口吉生さんが手がけられています。
先程のフォーラムビルディングは規則正しくフレームが計画されていましたが、このビルディングでは階ごとにフレームの高さが異なります。
ファサードのルーバーのかかった箇所は高くそびえ立っていてシンボリックな感じが印象的です。
聞くとファサードは内部空間のプログラムの違いをそのまま表現しているとのこと。
これはこれでリズミカルで面白い!
それにしてもフレームが細い!
写真を見てわかりますが、ガラスの透明度が高く正面の建物を映し出しているのがわかります。
道路に面した1階部分は若干ですがピロティのような空間になっていて、なんだか優しさが伝わってきます。
銀座シックス
銀座のど真ん中に佇む銀座シックス。
キング・オブ・銀座の名建築。
こちらの建築も谷口吉生さんが手がけています。
建物の真ん中には道路が貫通しています。
都市計画が盛り込まれているところは谷口さんの建築の特徴なので、このトンネル空間を見ると葛西臨海公園にあるクリスタルビューや広島市の清掃工場を連想します。
オフィス部分の真ん中には大きな吹抜けがあり、蔦屋書店のある6階に光が降り注ぐようにトップライトが設けられています。
なんとも贅沢な空間!
銀座の一等地なのでもっと床面積を増やしてくれという意見もある中で吹抜けを設けてくれたところが素敵ですね!
銀座シックスには世界中から観光客が訪れるので、本当に世界に誇れる建築です!
オフィスエントランスは大きな吹抜けとなっていてとても開放的です。
エレベーターホールには谷口吉生さんがよく用いているタイルが貼られています。
ちなみに銀座シックスは地下鉄ともつながっていて、地下には展示スペースもあります。
心に余白を生み出してくれるスペースがあるなんて粋ですね!
7階部分はオフィスビルのホールになっているんですが、こちらもとても豪華な空間でした。
天井が高くオフィスで働く人たちの休憩スペースとして利用されていたり、これから訪問する人たちが色々と準備する空間として利用されています。
屋上には庭園もあります。
天気の良い日はここでひと息ついたり休憩するのも良いでしょう!
ちなみにこの庭園はショップに訪れたお客さんも入れるのでお客さんにもここで働く人たちにも憩いの場所となっています。
ちなみに銀座シックスはゴミ箱まで美しい!
まるで美術館のような洗練された空間です。
こんな美しいオフィスで働けるなんてうらやましい限りです。
唯一わがままをいうのなら、オフィス棟の真ん中に庭園やテラススペースがあったら利用できたりできるのになーなんて思ってしまいます。
富山新聞高岡会館
富山県にある高岡会館です。こちらは富山新聞社のオフィスもある複合文化施設です。
谷口吉生さんの中では一番の最新作なのでファンである私は設計段階から訪れてみるのが楽しみでした。
なのに訪れてみたら休みだとは…
でも建築見学には良くあることなので、せめて外観だけでも研究して帰ることにします。。
建物の1、2階は吹抜けになっているのがわかります。
目の前が古城公園で、2階部分には水庭があります。この吹抜がゆったりと双方をつなぐ役割をはたしています。
2〜6階には太陽に合わせて日射を遮り、間接光を室内に取り込める可動アルミルーバーを設置しています。
可動式とは思えないほど繊細なルーバーデザインですね!
こちらは千本格子をイメージしたデザインとのことです。
夜になると格子から漏れる灯りがとても美しいですね。
谷口吉生さんの建築は静寂に包まれていて、その中に美しさが創られています。
今回はオフィスビルのみ紹介していますが、他にもたくさん素晴らしい作品がありますので、また紹介できればと思います。