見出し画像

深夜特急6 南ヨーロッパ・ロンドン 第17章 果ての岬 南ヨーロッパⅡ

気になったキーワード
カメラがストライキ バルセロナ1日は勿体無い スケッチ パートタイムの絵描き 狸のような日本の犬 旅人の相手をしてくれるのは老人と子供だけ バレンシアの市場は水に濡れた新鮮な魚介類があり、それだけで嬉しくなる おっかなびっくり やれやれ 酒場を楽しむ 必ず誰かが話しかけてくれる 夜中で宿を締め出される ヨーロッパの日曜日は魔の日 まったく独りきり 露天主とマニアの騙し合い 現代のスペインにおける年齢差の違い ロルカ 他の日本人 視線をそらす理由は自分の姿を見ているようだから 経験は常に一面的 わかっているのはわからないということだけ 旅の話をする芸人 あら晩から旅の話をしなくなった 年にはゲームセンターが必要 歓待をぎこちなくうける ナーダ・イ・ナーダ マドリードの別れはささくれ立つ気分 荷馬車をひいた驢馬 なぜ旅をしているのか ロンドンからむしろ離れていっている 国を忘れた若者 のっぺらぼう リスボンは潮の香りがしない ポルトガルはすべて海が関係している 河のプラチナのような輝きと瓦屋根のオレンジの輝き 船の動静欄 天正の遣欧使節団と同じコース サグレスという名のビールをサグレス岬という果ての地で飲むという浅薄さ 偶然の神 茶についてアジアはCHA、ヨーロッパはTEAと話を聞いたが、ポルトガルはCHAで「C」の仲間


旅の軌跡
香港→マカオ→香港→バンコク→チュンポーン→ソンクラー→ハジャイ→バターワース→ペナン→バターワース→クアラルンプール→マラッカ→ジョホールバル→シンガポール→カルカッタ→キウル→ガヤ→ブッダガヤ→パトナ→ラクソール→ビルガンジ→カトマンズ→ビルガンジ→ラクソール→パトナ→ベナレス→サトナ→カジュラホ→ジャンシー→デリー→アムリトサル→ラホール→ラワルピンディ→タクシラ→ペシャワール→カイバル峠→ジャララバード→カブール→カンダハル→ヘラート→イスラムカラー→カルカレフ→テヘラン→シラーズ→ペルセポリス→イスファハン→テヘラン→コム→バザルガン→エルズルム→トラブゾン→アンカラ→サムスン→イスタンブール→ケシャン→イプサラ→アレクサンドロポリス→テサロニキ→アテネ→ミケーネ→スパルタ→ミストラ→トリポリ→オリンピア→アルゴス→ブリンディジ→バーリ→モルフェッタ→トラーニ→バルレッタ→フォッジア→ローマ→フィレンツェ→ピサ→ジェノヴァ→モナコ→マルセーユ→バルセロナ→バレンシア→マドリード→バダホス→カヤ→エルヴァス→リスボン→ラゴス→サグレス

スペインのバルセロナに入って幾分気分が晴れやかになってきた主人公。久しぶりにカメラで写真を取りたくなる光景に出くわすがカメラがストライキを起こす。
そのあとバレンシアやマドリードでも多くの人と出会い、心を通わせ、思考を巡らす。

マドリードの蚤の市では有名な画家の絵画の真贋がわからない話があったが、この真髄は売る側も買う側も商談が成立したら後腐れない関係になるということだ。

マドリードの別れは宿屋の女主人と料金について一悶着があり、
バスターミナルに向かう際のタクシーとも揉めることもあり、
ささくれだった気分でポルトガルに行く。
旅の途中は本当に感情の振れ幅が大きくなるし、自分でもそんな感情や思考を持つものなのかと驚くこともある。

自分は脳を使っているんじゃない、感情をコントロールしてるんじゃない、その逆だと気付かされる。

スペインからユーラシ大陸の西の果てであるポルトガルに入る。
ポルトガルは過去には栄光を輝かせた時代もあったが、
いまはだいぶ見窄らしく往時の繁栄はあまり感じない。
かつては歴史の絶頂を極めたポルトガル、いまは煌びやかさは消え、
スペインよりも物価が安い。人々は陽気ではあるものの穏やかでギスギスしていない。しかしそれは裏を返せが活気に乏しいとも言える。


ポルトガルの首都リスボンに着いて、ある港でアジアに向かう長距離船を見つける。香港や台湾の基隆(キールン)行き、横浜に向かう船もあったた。
特にこの横浜行きの船は290ドルというかかにも関わらず、南アフリカの最南端喜望峰→ボンベイ→シンガポール→マニラ→神戸→横浜という航路を進む。言ってみれば、この船に乗ってしまえば日本に帰れてしまうのだ。51日間かけて喜望峰を回るルートは天正遣欧少年使節団と同じ航路、ワクワクしないはずはない。ここで主人公は心が揺れる。

街を歩きポルトガルの演歌ファドを聴かせてくれる飲食店に寄ることになり、いろいろ親切にしてもらい、店の親父と会話をする。
仕事を聞かれ「ナーダ(なにもない)」と答える
ビールを頼み、そのビールの名前がサグレスという。
サグレスはリスボンよりさらに西の果ての岬の名前だという。
そこに何があるのかと主人公が尋ねると「ナーダ」と返ってくる。

サグレスの話を聞き、旅の終わりはまだリスボンではないと再確認する。
船を動静欄をぐちゃぐちゃに丸めて捨てた。
旅の終わらせかたは難しい。
サグレスにつき街灯のない真っ暗な野原の一本道を教えてもらったユースホステルを求めて歩く主人公。
人気(ひとけ)もなくなり、野犬の吠え声が聞こえる。
ここで襲われても助けを求めようがない。
夜空には今まで見たこともないほど光が突き刺さるほどの綺麗な満天の星があった。遠くに白の壁のようなものが見えるが、蜃気楼にも見える。そして正面に犬がいるのがわかり、恐怖を感じ引き返す。
バス停まで戻っても街に引き返す最後のバスは行ってしまっていて、ここで野宿をする他ない。そうこうしているうちに商店を見つけ、ノックをし、この辺で泊まれる場所はないかと尋ねる。話をしているうちに破格の値段で泊まれることになり安心して笑みが溢れる。
この商店の名前はRESTAURANTE E CASA DE CHA、レストランと紅茶の家で主人子はお茶の話を思い出した。
アジアではCHA、つまりCのお茶。
ヨーロッパではTEA、つまりのお茶。
ギリシア、イタリア、スペインとヨーロッパを移動し続けてきて、またアジアのCのお茶に戻ってきてしまった。
ここで旅の終わりを意識し始める。

しかしそれにしても沢木という主人公、
度胸というか退廃的というかとにかく行動が無鉄砲だ。
ここまでネットのない時代に行き先の情報を仕入れないで進んでいく勇気を多くの人は持ち得ていないのではないか?
数多くのトラブルに巻き込まれながらもここまで来れた主人公は並々ならぬ運を持っている。

だからこそこの小説は事実のようなファンタジーのような旅のバイブルとして多くの人に読まれているのだろう。


深夜特急6  南ヨーロッパ・ロンドン 第18章 飛行よ、飛行よ 集結 に続く
ついに最終章か・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?