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Greco EG-380 70年代ジャパンヴィンテージギターへの第一歩

国産ギターの歴史を調べているうちに、ジャパンヴィンテージと呼ばれるギターの実物に触れてみたいと思うようになった。ジャパンヴィンテージと呼ばれるギターにも大分年代の幅があるが、第一歩として1970年代のGrecoの低価格帯シリーズに手を出してみることにした。

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今回入手したGrecoは1976年製。購入時にモデル名などの記載はなかったが、ネックプレートの刻印、ピックアップ裏の刻印、ボディ構造などからEG-380だと考えられる。

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前のオーナーより前のこのギターの歴史はわからないが、製造から40年以上が経過しているとは考えられないほど綺麗な個体だ。

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このギターの塗装はポリ塗装だが、ラッカー塗装の劣化とはまた異なる塗装のひび割れが起きている。EG-380はレスポールの形をしているが、セミホロウ構造となっておりトップ面には湾曲させた薄い板で構成されている。その構造故、40年という時間の中でトップの板の伸縮や変形などがあり、塗装の割れにつながっているのだろう。

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EG-380はレスポールシェイプでありながら、ネックはデタッチャブルネックとなる。故成毛滋氏監修によるGrecoのEGシリーズのネックはそもそも非常に薄くて細いこともあり、ハイポジションを弾いた時の感覚はレスポールのそれとは大分異なる。この個体に関しては、ネックの状態は反り具合は至って良好、塗装も非常にスムーズで傷や凹みもなく、若干自分の好みよりはネックが細すぎるがプレイアビリティは想像していたよりも非常に高い。

インレイは無地のシルバーっぽいプラスチック。バインディングはGibsonのレスポールとは異なりFrets over bindingとなる。

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ピックアップはフロント/リア共にMaxon(日伸音波)製造のU-1000が搭載されていた。裏面の番号によると1976年の6月に製造された個体らしい。出力は若干低めで、比較的クセもノイズも少ない。フロントピックアップの音は「丸い」が、露骨に枯れているという感じではなく、意外にもその気になればメタルやプログレでも全然使えるサウンドが出る。ただし、いろいろ試した中では、セミホロウ構造のボディの特性と相まってか、やはりトーンとボリュームを若干絞った状態の「丸くて優しい」音がこのギターのフロントピックアップのスイートスポットだと感じた。

このギターを最初に弾いた時、大きな違和感を感じたのがリアピックアップだった。歪ませた状態で若干強めに弾くと、妙な残響音が残り非常に歯切れが悪かった。これがセミホロウ構造によるものなのか、ボディもしくは電気系統の不具合からくるものなのかわからなかったが、ピックアップを外してみたところ原因がわかった。

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ピックアップの裏に座金が貼り付いていた。おそらく前のオーナーか、あるいはそれ以前のオーナーの時代に、作業の途中で何かの拍子に磁石の力で貼り付いてしまったのだろう。


取り外して組み直してみたところ、残響音は消え、非常にキレの良い別のギターのようなサウンドになった。

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ピックアップを取り外すと、トップ板の下の隙間を確認することができる。セミホロウ構造といっても、空間は「隙間」程度であるため、これがどの程度サウンドに影響しているのかは不明だ。少なくとも、ソリッドボディのレスポールに比べて特段生音が大きい、ということはないように感じる。重量に関しては普通のレスポールよりは軽いが、ネックも薄くて細いためその影響もあるだろう。

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ブリッジ、テイルピースについては標準的なものが取り付けられている。オリジナルではない可能性があるが、前オーナーによるとそこは不明とのことである。ノブと配線については、交換されておりオリジナルではないようだ。

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ペグに関しては見慣れない形状のものがついていた。チューニングの安定性については、ペグのせいなのかナットのせいなのかわからないが、やはり最新のハイエンドギターに比べると若干不安定ではある。

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到着してまだ数週間だが、このギターは何かと予想外の連続だった。そして数週間のうちに色々な発見があった。まだ色々と見えてきそうな気がしているので、後日また追加でレポートしたい。

参考資料


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