[DTM]Neutron 4のUnmask機能がかなり使える
昨年、ミキシングプラグインのNeutron 3を購入してからもうすぐ一年になる。当時このプラグインにはかなり期待をしており、購入から数ヶ月はそれなりの頻度で実際に活用していたのだが、最近ではほとんど使用しなくなっていた。各トラックにプラグインを差し込んで設定する作業が面倒くさいことと、自分自身がミキシング作業に慣れてきてプラグインを使わなくてもラフなミックスであれば短時間でそこそこ納得感があるものを作れるようになってきたということが大きい。
そういったこともあり2022年の夏にNeutron 4が発表された時も購入を見送っていたのだが、ブラックフライデーから年始にかけてセールでかなり安くなっていたので購入してみた。
Neutron 4ではNeutron 3に比べて若干ではあるがトラックへの設定の手間が簡素化されていたり、UIがわかりやすくアップデートされている。基本機能である各トラックの音作りとトラックのバランス調整の仕上がりに関しては、Neutron 3に比べてわかりやすく変化している訳ではないように感じる。
そんな中で、今回Neutron 4の新機能で最も気になっていたのがUnmaskモジュールだ。トラック間の音域の被り(マスキング)を解消して、目立たせたいトラックが埋もれるのを防いでくれる機能だ。Neutron 3にもトラック間の音域の被りを可視化してくれる機能や、そこに対してイコライジングをかける機能はあったが、Neutron 4のUnmaskでは自動的にマスキングが起きた音域のボリュームを一時的に下げるということが可能になっている。
個人的にミックス作業の肝は、まず音量バランス調整、次がマスキング問題の処理だと考えている。マスキング問題は、イコライザーで衝突している音域をカットするのが一般的な処理方法だと思われるが、イコライザーで音域をカットするとマスキングが起きていない時の音の印象も少なからず変化してしまう。聴覚上変化があまりない範囲で、衝突している音域をカットするというのがある意味腕の見せ所になるが、その感覚を得るのはなかなか難しい。
別のアプローチとして、コンプレッサーのサイドチェインを使って例えばキックが鳴った瞬間にベースを少し下げる、というダッキングという方法もある。テレビなどでナレーションのタイミングでBGMの音量が下がるのと同じ仕組みだが、これはこれで掛け具合をうまく調整しないと「加工されている」感が強く出て不自然になってしまう。
Neutron 4のUnmaskモジュールは、この二つの手法を掛け合わせたような機能を持っている。サイドチェインの機能を使い、目立たせたい方のトラックが鳴った瞬間に目立たせたくない方のトラックに対して処理を加えるという点ではダッキング処理に近いのだが、トラック全体のボリュームを落とすのではなく衝突が起きている音域を自動で検知して、その音域のボリュームだけを下げてくれる。低音域で衝突が起きるような場合では、衝突が起きた瞬間に低音域だけがカットされ中音域・高音域は維持される。これによって普通のダッキングほど不自然になることなく、マスキングを緩和することができるのが特徴だ。
掛かり具合の調整は必要だが、イコライザーや普通のダッキングに比べるとかなり自然にマスキングの緩和ができるように感じる。マルチバンドコンプとサイドチェインを使えばある程度似たようなことが可能かもしれないが、Unmaskモジュールの場合、音域の調整も自動でやってくれるため何よりも手軽だ。
この機能を使い始めて間もないが、すぐに効果を実感できた。ボーカルがオケに埋もれないようにするというような場面ではもちろん、ギターとベースの間を埋めるエレピやパッド系の音がギター・ベースを邪魔しないようにする、という使い方もできてかなり便利だ。
Neutron 4はパッケージとしてはなかなか高いプラグインとなるため、値段も考えると一概にオススメとは言い難い部分があるが、セールやすでにiZotope製品を持っていて安く購入できる場合には十分に検討する価値があるプラグインだと思った。