
[機材レビュー]Yamaha Pacifica012
最近、YamahaのPacificaの人気が高い。自分が知る限りでは、ギタリストの鈴木健治氏が2019年に投稿したYouTubeの動画が発端だと思う。
鈴木氏のサウンドメイキングと演奏技術あってこそのデモンストレーションではあるが、プレイアビリティの高さやピッチの安定具合(そして鈴木氏の楽器に対する信頼感)は存分に伝わってくる。動画内で鈴木氏が紹介しているのはPacificaの中でも上位グレードの612だが、今回Pacificaシリーズの中で最も安い012を買って試してみることにした。
Pacifica012について
Pacifica012は、2021現在発売されているPacificaシリーズの中で最も安いグレードとなる。上位グレードに比べて、木材の種類やパーツのグレードが違ったり、コイルタップの機能が省略されていることで、コストカットが図られている。島村楽器オンラインストア限定モデルということだが、Amazonでも新品で2万円台半ばで購入できる。
軽くてコンパクトなボディと薄めのネック
012のボディにはアガチスという軽い木材が使われている。コンパクトなボディシェイプと薄めのネックということもあって、このギターは軽い。やはり軽いギターは、弾いていて疲れないし、気軽に手に取りやすい。個人的に安いギターには特に軽さを求めているが、012は十分にその機動性を満たしていると思う。
ネックは若干薄めで、フレットはおそらくミディアムジャンボだろう。無難な弾き心地で、音程がシャープしやすいということもない。割とバランスが良くて弾きやすいネックだと思う。

購入時点でフレットは若干だがバリが発生しており、また角も若干シャープだったのでいつも通り少しだけ自分で削って整えた。

ついでに表面の研磨も行い、弾きやすさは文句のない状態になった。
ドライでスムーズなサウンド
ピックアップレイアウトはSSH、1ボリューム1トーン、コイルタップなしというシンプルでわかりやすい構成だ。軽いボディと薄めのネックという組み合わせから想像される通り、サウンドは割とドライ。コシがある感じではないが、割とラフに弾いても音がそこまで暴れないので、これはこれでスムーズで弾きやすいサウンドだと思う。
おそらくボディの軽さとのトレードオフなので仕方がない部分はあるが、クリーントーンに関しては、若干レンジが狭い印象を持った。
ネックが薄めで弾きやすいことと、SSHピックアップレイアウトの特性が相まって、カッティングを弾いていて楽しい。
コストカットの影響を感じる箇所
個人的には軽めなギターのリアシングルのサウンドも好きなので、コイルタップはやはり欲しかったなと感じた。またブリッジに関しては、使用されているパーツが安いグレードのものなので、アームを実践的に使いたい場合はパーツ交換を検討した方が良いかもしれない。ピックガードも1PLYのものが使われているが、ホワイトのボディには1PLYのホワイトのピックガードは割とマッチしていて悪くない。

まとめ: 良いギターだが、上位グレードが気になってしまう
他の低価格帯のギター同様、フレットの仕上げが若干粗いとは感じたが、ギターの基本的な部分の造りは良く、弾きやすさという点ではとても良いギターだと思う。ただし、すでにミドルクラスのギターを使っている人には、コイルタップが省略されている点と、安いトレモロユニットが使われている点は物足りなさを感じるのではないかと思う。予算に余裕がある場合は、上位グレードを検討した方が良いだろう。
一つ上位のグレードにあたる112は、ボディがアルダーになり、さらにコイルタップの機能が追加されている。さらに上位の612では、Seymour DuncanのピックアップとWilkinsonのブリッジが搭載される。012を弾いていて、「もう少しこうだったら良いのにな」と感じるポイントそのものだ。
012を弾いて、ギター自体の造りの良さ、弾きやすさはしっかりと理解できた。いずれ機会があったら上位グレードも試してみたいと思う。
※2021.10.09 上位グレードのPacifica 212を試してみた。
※2023.05.13 メイプル指板のPacifica 112VMを試してみた。
余談: 同価格帯の他のSSHギターとの比較
ちなみに、同価格帯のSSHのギターというとBacchusのBST-2-RSM/Mが思い浮かぶ。
どちらも評判通り、値段に対して良く出来た満足度の高いギターだと思う。個人的な感想としては、フレットの大きさ的にPacifica012の方がネックは手に馴染む感じがありひきやすく、サウンドメイクの点ではBST-2-RSM/Mの方が実用的だと感じた。2万円台でこれだけ良くできたギターの選択肢が複数あるというのはすごい時代だ。