テクノロジーが創るポジティブな観光 セントーサ島で見たキャッチコピー
2024年11月13日~16日、「GSTC Global Conference 2024」に参加するため、シンガポール・セントーサ島を訪れた。GSTC(Global Sustainable Tourism Council) が毎年開催する国際会議で、世界中から会員都市や団体、観光業でサステナビリティに関わる人々が集う。会議のセッションや視察が刺激的だったことはもちろんだが、開催地のセントーサ島滞在からも多くの気づきを得た。
宿泊ホテルの取り組み 印象的なキャッチコピー
宿泊先のGSTC認証ホテル(GSTC-Certified Hotel)の部屋で、印象的なキャッチコピーに出会った。サステナビリティに配慮するホテルでは、毎日のクリーニングを控えるタグや、水や電気の使用に関するサインはよく見かけるが、下記は、今まで見たことのないものであった。
「Think sustainable hospitality driven by innovation(イノベーションによる持続可能なホスピタリティを考えよう)」
テレビ前に置かれた紙製の小さな自立型サインに書かれていた。その下には、カーボンオフセット用のウェブサイトQRコード。サステナビリティの取り組みの中でも、カーボン排出量の削減に向けた取り組みのキャッチコピーであった。
QRコードから訪れたウェブサイトでは、出発空港とシンガポール・チャンギ空港を入力すると、フライトによる移動で排出されたカーボン量と、それをオフセットするための金額が表示された。クレジットカードで決済すればオフセット完了である。非常にシンプルで分かりやすく、誰でも簡単に利用できるものであった。
カーボンオフセットの推進自体は、特に目新しい取り組みではない。しかし、このキャッチコピーを見てから訪れた、カーボンオフセットのページからは、いつもと異なる印象を受けた。キャッチコピーのポジティブさによって、カーボンオフセットの義務感が薄れたような感覚であった。
サステナビリティとホスピタリティ 相反する方向性
このように感じた背景には、最近、サステナビリティとホスピタリティに相反する方向性を感じていたこともある。サステナビリティに配慮するためには、少しの不自由や我慢を伴うという感覚だ。そして、時には金銭的な負担も必要なのだと。
キャッチコピーの有無は、カーボンオフセットの負担額には影響しない。にもかかわらず、カーボンオフセットへの印象が大きく異なったことは、同じ業界でサステナビリティを担当する私にっとって、非常に興味深い体験となった。