09-海にいるのは
沖縄の久米島に新婚旅行で行ったのだが、その時に撮った写真に妙なものが写っていた。泊ったホテルはプール付きのリゾートホテルで、プールのすぐ先は遠浅の海になっていた。その海の数百メートル沖合に錆びた「土管のようなもの」が放置されていたのだが、二日目の朝、その「土管のようなもの」の少し先に、「人のようなもの」が立っていた。
一日目には明らかに「それ」はいなかったので、一緒にいた奥さんに「あそこに人がいるね」「貝でも獲ってるのかな?」と話していた。福岡の家にに帰ってから沖縄で撮った写真を整理していると、その中の一枚に偶然「それ」が写っていた。写真の矢印の先に写っているのが「それ」である。
写真を拡大してみると、「それ」が「人のようなもの」であることがわかる。僕達も最初は「それ」を人だろうと思っていた。ホテルのレストランで朝食を食べて部屋に戻ると、まだ「それ」はそこに立っていた。先程の場所からまったく動いていないので、「あれは人ではなかったんだね」という話になった。
よく考えたら距離と大きさの関係から言って、あれが人だったら、身長が3メートルくらいはあるかもしれない。だからあれは人ではないということになった。でもそれならあれは何だろう?何かの目印の杭のようなものなのだろうか?確かに昨日はなかったものなので、誰かがあそこに運んで打ち込んだのか?でもそれなら数人の人手が必要だろうし、杭を打つ音も聞こえてきていたはずである。
それをずっと観察していたわけではないので、しばらくしてまた見たらそれは消えていた。誰かが撤収に来て持ち去ったのだろうか?でもそれならば、誰かがそれを運んでいる姿を、一度は見かけるはずである。こんなに広い視界の中で行われていることなのだから。
結局、いつの間にか現れて、いつの間にか消えていた、なんだかよくわからないもの、と考えるしかなかった。それが偶然写真に写っていたのだ。
更に拡大して見ると、それは笠をかぶって杖をついた、お遍路さんのような格好をしている。昔の沖縄の漁師さんのようでもある。しかし、2日間の滞在中、島で、そんな服装で歩いている人を見かけたことはなかった。
これが拡大の限界。これは何なんだろうか?あるいは、誰なんだろうか?
よく見ると二人いるようにも見える。ちなみに下の二枚は昭和20年代に沖縄で撮られた写真。この二枚に写っている服装を組み合わせると、写真の人物に近いものになると思うのだが・・・
不思議な写真を偶然撮ってしまった久米島には、「久米仙」という御当地泡盛がある。久米仙とは久米の仙人という意味であろうか?えっ、久米の仙人って沖縄だっけ?と思って調べたら、本家本元の「久米の仙人」は、奈良のあたりのお話のようなのだが、久米島にも似たような仙人伝説があるらしい。
写真に写っている謎の人は、仙人というか、修験道の山伏のような服装にも見える。それで仙人のことなどに詳しい人に聞いてみたのだが、元々仙人というのは、権力闘争に敗れて追われ、山に逃げ込んだお坊さんなどがなったもので、(ちなみに当時宗教と政治は密接に結びついていた)山の中で自然や動物たちを見ながら暮らすうちに、大自然の神秘の一部を会得して、色々な超常的な能力を開発していった人達だということだった。
それぞれの仙人が独自の「技(わざ)」、例えば読心術や飛行術、漢方のような自然の薬効成分を利用した医術などを開発していたのだが、ひとつの技を習得するのに長い年月がかかるため、仙人同志の間では他人の技を盗みあっていたようなのである。
それで、技を盗まれないようにするために、逃れ逃れて沖縄までたどりついた仙人もいたらしい。「あれは何なのか?」という謎について、「かつてこの島にいた仙人の意識がまだ消えずに残っていて、仙人らしい茶目っ気のあるいたずらをした」ということにしておけば、それほど恐ろしいことと思わずに済むかもしれないと思った。