策士、暗躍する

2016年1月9日の土曜日、
息子のハルと春日の実家を訪ねた。
僕の妹が来ていたからである。

妹は正月に家族と帰省していて、
旦那と子供だけが先に東京に戻り、
妹だけが実家に残っていたのだ。
妹の息子とうちのハルは同い年で、
この息子がちょっと登校拒否気味になっていて、
悩んでいるというか、
どうしたものかなと家族みんなで気を使っていた。

それで、たまには会いましょうと、
妹から連絡があり、一人で行くのも気まずいので、
ハルを連れて行ったのである。

僕はあらかじめハルに、
仕込んでいたサルの置き物を手渡して、
入念に打ち合わせしていた。
このサルの置き物は、
僕が夢タウンで合鍵ができるのを待っている時、
雑貨屋で見つけたものだった。

うちの奥さんのチャッピーはリスが好きで、
リスのものを買い与えておけば機嫌がいいので、
リスグッズがありそうな雑貨屋を見つけたら、
物色するのが習性になっているのだ。

その店でやたらサルのものが目につくなと思っていたら、
今年が申年であるということを思い出した。
そしてそういえば、僕の母親と妹は、
二人とも申年だったということも思い出した。

うちの奥さんは、ほんのつまらない、
数百円のものを買い与えただけで大喜びするので、
母と妹もそうだろうかと思い、
目についたサルの置き物を買ってみた。

しかし買ったはいいものの、自分の母親と妹に、
脈絡もなくプレゼントなんていかがなものかと自省し、
どうしたものかと悩んでいたところ、
そうか、ハルがいるじゃないかと閃いたのである。

そこでハルと打ち合わせし、
いかにもハルが自発的に買ったというテイで、
二人にその置き物をプレゼントさせた。
結果は大成功、二人とも大喜びであった。

ハルにはもうひとつ仕込んでいたことがあった。
ブックオフの初売りに行った時、
一條裕子というマンガ家が、
内田百閒の「安房列車」をマンガ化した単行本と、
望月峯太郎が山本周五郎の「ちいさこべ」をマンガ化した、
「ちいさこべえ」の一巻を買っていたので、
それをハルに貸して、文学好きのおじいちゃんに、
プレゼンするように指示していたのだ。

結果、おじいちゃん大喜び。
酔って呂律が回らなくなっている舌で、
一生懸命「安房列車」のあらすじを語っていた。
父が内田百閒を好きということは、
以前から知っていたので、父が喜ぶかと思い、
ハルに仕込んでおいたのだが、
ここまで喜ぶとは思わなかった。

息子の僕と語っても、
そこそこ嬉しかっただろうと思うが、
孫のハルの口から内田百閒という言葉が出れば、
喜びはひとしおであろうと慮ってのことであった。
家族と付き合うにも色々と気を使う。
長男はつらいよ。
ハルよ、もらったお年玉は、少し分けてくれ。

いいなと思ったら応援しよう!