日常のささいな事件の中にも物語がある
これは8年前の投稿です。
こんなハルももう24歳、
東京でコピーライターの見習いをやっています。
おじいちゃんもそれなりに年をとりましたが、
それでも今はまだ元気です。
でもこのいつも行っていた蕎麦屋というのは移転したそうです。
男子ってバカだよね
西原理恵子の「毎日かあさん」の中に、
自分の息子とその友達たちがいかにバカか、
そして西原さんがそういうバカな男子どもを、
いかに愛おしいと思っているか、
というようなことが書かれている部分があるのだが、
これはそれと同じような類の話である。
僕の息子のハルは今高校2年生、
もうすぐ17歳になるのだが、
時々週末に僕の実家に泊まりに行く。
その段取りは、ハルとおじいちゃん(僕の父)が、
天神で待ち合わせをして、
ハルはジュンク堂で何か本を買ってもらい、
二人で天神地下街の加辺屋でそばを食べて、
それから西鉄電車に乗り、井尻駅で降りて、
井尻商店街を抜けて、
ハローデイというスーパーに寄って、
晩ご飯のおかずと明日の朝ご飯を買って
春日の実家へ行く、というもの。
この実家まで歩いて帰る道中、
ハルはおじいちゃんの数歩あとを歩き、
いつも二人は無言のまま実家まで行くそうだ。
ある日、井尻駅の改札を抜ける時、
ハルのニモカの度数が足りず、
ゲートがしまってしまった。
おじいちゃんはそれに気付かず、
スタスタと改札を抜けて行ってしまった。
ハルはそこで「おーい、おじいちゃーん」
と大声で呼べばよかったのだが、
人前で大声を出すことができないハルは、
おじいちゃんを黙って見送ってしまい、
どうしたものかと途方に暮れてしまった。
ハルは財布を持ち歩かない。
普段僕と一緒に出かける時も、
ポケットに一円たりとも持っていない。
別に僕が持っているから特に不自由はないのだが、
高校生にもなってポケットに一円も持っていないというのは、
ちょっと問題だと言えば問題だ。
もうひとつの問題がうちの父(おじいちゃん)である。
ハルがゲートを通過できず、
駅のホームで途方に暮れている時、
おじいちゃんはそれにはまったく気づかず、
一人で井尻商店街を歩いていた。
靴屋さんの前を通りかかった時、
そういえばサンダルを買わなきゃならなかったと思い出し、
「ハル、ちょっとこの店に寄っていくからな」
と言おうと思って振り返ったらハルがいない。
「あれ、ハルはどこに行ったんだろう?」と思い、
少し戻ってみるがどこにもいない。
駅の方へ引き返しながら、
「もしかしたらいつのまにか私を追い抜いて、
先にハローデイに行ったんだろうか?」と考え、
駅まで戻らず、Uターンして、
ハローデイまで行ってしまったそうだ。
おじいちゃんは携帯を持っていない。
ハルは携帯はもっているが、
おじいちゃんが持っていないので連絡がとれない。
ハルは携帯で自分の母親に電話し、
井尻駅まで迎えに来てもらって、
なんとかゲートを抜けることができたらしい。
本当に男子ってバカだよね。
でも僕はこのエピソードが、
なんとも平和で微笑ましいと思うのです。
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