差別を助長するな
手塚治虫のエッセイの中に
「ディズニーのキャラが
4本指で書かれているので、
鉄腕アトムも4本指になった」
というくだりがある。
(手塚はディズニー信奉者)
ディズニー自身も
「金銭的なことを言えば、
六分半の短いアニメを構成する
四万五千枚の作画について、
すべて手から指を一本減らせば、
スタジオとして数百万ドルの削減になる」
という発言を残している。
ところがこれは、日本に限れば、
かなり問題のあることなのである。
この件についてネットで調べると、
「指を詰めたヤクザを連想させる」
という言葉がよくヒットするが、
事の本質はそんな単純なことではない。
かつて日本に厳然として存在した、
士・農・工・商・えた・ひにんという
身分制度の最底辺層「えた」には、
屠殺業や皮革業などの
家畜の死体の処理の仕事が割り当てられた。
これは仏教思想に基づいて
家畜の死体は「穢れ」ている
と考えられていたからで、
その死体を処理する人たちは
「穢多」と呼ばれていた、
という説もあるくらいである。
そこから転じて「穢多」の人達は、
動物(四つ足)に関わる人ということで
「よつ」という隠語でも呼ばれていた。
僕がCM制作会社に勤めていた頃、
マスコミ業界においては、
4本指を立てるサインは絶対タブーだったのだが、
「久米宏のTVスクランブル」という番組で、
酒に酔って出演した横山やすしが
「あいつらは〇〇じゃ」と発言して
大問題になったことがある。
その時に横山はカメラに向かって
4本指サインをしたらしい。
しかし「鉄腕アトム」が放送されていた、
1960年代には
今ほどはタブー視されていなかったようで、
これはいわゆる「言葉狩り」の体裁を借りた、
逆差別キャンペーンなのかもしれない。
なぜならアトムもペコちゃんも
怪物くんも1960年代には
堂々と4本指だったのだから。