東へ西へ
2013年頃、スカパーの競艇番組の、生放送の中継ディレクターをしていて、北九州の若松競艇場で働いていた。途中からは芦屋町に仕事場のマンションを借りたのだが、最初は福岡市の自宅から通って仕事をしていた。
福岡市の自宅から若松の仕事場へ行く時、
基本的には国道3号線をまっすぐ行っていたのだが、
毎回同じ道で行くのは飽きるので、
時々脇にそれて、裏道から行っていた。
その道のひとつに、箱崎から和白を通って、
新宮に抜ける裏道があるのだが、
その道は、西鉄新宮駅の前を通っていた。
西鉄新宮駅は、西鉄貝塚線の終点であった。
今は西鉄貝塚線だが、
2007年までは西鉄宮地岳線だった。
2007年に新宮から津屋崎までの路線が廃止されて、
宮地岳線は貝塚線に改名されたのである。
新宮から津屋崎の間の、
かつて線路だった場所には、
一部には住宅が建ったりもしていたが、
そのまま柵で囲われて、
空地として草が生え放題の場所も多かった。
かつての線路のあった場所に沿って、
まっすぐな道が通っている場所が多いので、
その道を裏道として利用させてもらっていた。
その途中に花見という地名があるのだが、
かつてそこにあった花見という駅が、
井上陽水の「東へ西へ」で歌われている、
「花見の駅」であるということをある人から教えてもらった。
井上陽水の歌は高校時代によく聞いた。
「東へ西へ」もよく口ずさんでいたが、
「花見の駅」というのは、
「お花見をするために行く駅」というような意味だろうと、
勝手に思っていて、特定の駅名だとは思わなかった。
かつて花見の駅があったあたりは、
その頃は見事に何もなかった。
確かに駅のあった場所に続く道には、
スナックのような店の跡とか、
何軒かの商店街のようなものの名残りがあったが、
基本的には閑散としていた。
『花見の駅で待ってる君にやっとの思いで会えた、
満開、花は満開、君は嬉しさあまって気がふれる
空ではカラスが負けないくらいに喜んでいるよ
戸惑う僕にはなんにもできない、
だから、ガンバレ、みんなガンバレ、
黒いカラスは東へ西へ』
高校生の僕には理解できない、
暗い感じ、怖い感じの歌詞だなあと思っていたのだが、
それから30年くらい経って、
自分の日常とこの歌が、
ちょっと触れ合うことになるなんて、
縁というのは本当に不思議なものだと思ったものである。
写真は在りし日の花見の駅