とんちピクルスとスピッツ

あまりメジャーな楽曲に詳しくないので、カラオケではなるべくメジャーな曲を練習しようとしているのだが、その中にスピッツの「ロビンソン」という曲がある。

その歌詞の中に「川原の道を自転車で走る君を追いかけた」
というフレーズがあるのだが、
その川原というのは、福岡の室見川だと言われている。

スピッツの草野正宗は福岡市の早良区出身で、高校は城南高校。
通学路から少し足を延ばして、
室見川のほとりで「青春」していたということもあり得るだろう。

とんちピクルスは、現在も早良区在住のツアーミュージシャンで、
とんちピクルスの「遠くでひばりもないている」という歌には、
金屑川という川が出てくる。

金屑川というのは、早良区の賀茂のあたりで、
いくつかの小さな川がひとつになって発生し、
そこから、ほぼ室見川と並行するように流れて、
最後には室見川と合流し、博多湾に流れ込んでいる。

地図で見ると、太くて大きい室見川に対して、
細々と流れている金屑川の対比は、
まるでメジャーで大成功しているスピッツと、
カフェやライブハウスでの、
少人数のライブを重ねるとんちピクルスとの対比のように見える。

草野正宗ととんちピクルスは、ほぼ同じくらいの年齢、
同じ早良区出身、同じミュージシャンという職業。
そして、なぜか僕の中では、
草野が作る楽曲と、とんちピクルスの楽曲に、
どこか共通する部分があるような気がしているのである。

同じ頃に同じような場所で、
もしかしたら同じような鬱屈した感情を持って生き、
それを今、真珠のように磨いて曲にしているのかもしれない。

草野がメジャーもメジャー、
どメジャーなミュージシャンであるのに対して、
とんちピクルスはまだまだマイナーな存在であるが、
とんちピクルス自身が、あえて、
マイナーであり続けることを望んでいるような節も見受けられる。

ただ、最終的には金屑川が室見川と合流しているように、
とんちピクルスの音楽がメジャーの一部になり、
世界という大海に注ぎ込まれていくであろうと僕は思っている。

いずれ草野正宗ととんちピクルスが同じ舞台に立ち、
草野が「ロビンソン」を唄って、
とんちピクルスが「遠くでひばりもないている」を唄う、
ということもあるかもしれない。

ちなみにカラオケで歌ってみると、
スピッツの曲は、なかなか良くできている。
ドラマの主題歌やCMソングに使われていて、
チャラい感じの歌が多いのだが、
メロディラインに何か魅力があるような気がする。

ただ「ルララ 宇宙の風になる」という歌詞が、
どうしても気恥ずかしくて歌いにくいのだが・・・

ところで僕がスピッツに好感を持ったのは、
こういうエピソードがあったからである。

僕の知り合いに九産大の写真科出身の人がいたのだが、
その人が学生時代に同級生と話している時、
その中の一人が、自分には兄がいる、という話をしたそうである。
「へえ、お前、兄ちゃんいるの、何してる人?」
と聞くと、その人は恥ずかしそうに、
「実は、東京で売れないバンドをやってるんだ・・・」
と言ったそうなのである。一同爆笑して、
「なんだお前の兄ちゃん、バカなんじゃないの?」
と盛り上がったそうなのだが、
その同級生が草野くんという人で、
兄ちゃんというのが草野正宗だったというのである。

その後スピッツはブレイクし、草野(弟)くんは、
兄の正宗さんに顔が似ていたので、時々、
「あの、草野さんじゃないですか?」と、
声をかけられることがあったそうなのだが、
実際に自分も草野なので、
「はい、そうですけど」と返事していたそうだ。

なんか、アメリカンドリームのエピソードみたいな話だなと思って、
それ以来スピッツをちょっと身近に感じるようになったのだが、
当時はすでにスピッツといえば、超メジャーバンドで、
ヒット曲に疎い僕でさえも、何曲かは知っているくらいだった。

ただ、ドラマやCMに使われたりする、おしゃれでポップな、
自分にはあまり縁のないジャンルの音楽、だと思っていた。

数年後、ジブリの映画がきっかけで、
つじあやのというミュージシャンが有名になり、
つじあやののアルバムの中にウクレレ一本で弾き語りをする、
ライブの音源が入っているらしい、という噂を聞いた。
実はとんちピクルスさんというのも、
基本的にはウクレレ一本で弾き語りをする方なのだが、
僕はその演奏スタイルに興味を持っていたので、
つじあやののアルバムをレンタルしてみたのである。

つじあやのの音源は、まさにとんちライブのような、
小さな会場で、ウクレレ一本で唄っているライブの音源だったのだが、
その中の一曲にスピッツの「チェリー」があったのである。

スピッツの「チェリー」には、メジャーでヒットするような、
いかにも「売れ線」のアレンジがほどこしてあるのだが、
それをウクレレ一本で唄うと、
曲のいい部分だけが前面に押し出されていて、
恥ずかしながら「チェリー」がこんなにいい曲であるとは、
僕はつじあやのの唄を聞くまでは気付かなかった。

それからスピッツが気になって、
メジャーな曲をカラオケでマスターしようと決心した時、
ラインナップにスピッツも加えたのである。

スピッツ、つじあやの、ウクレレ弾き語り、
早良区、室見川、金屑川、とんちピクルスと、
結局巡り巡ってひとつにつながり、
意外にスピッツを好きな人も多いとわかり、
僕の鉄板カラオケネタとして、
ぜひスピッツをマスターしようと、
心に固く誓ったのでした。

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