沖縄で体験した不思議な話
約9年前、2015年に、うちの奥さんが、
沖縄の保険会社に勤めていて、沖縄で暮らしていた。
熊本の奥さんのお義父さんが亡くなり、
熊本に引っ越して家業を継ぐことになって、
沖縄最後の一ヶ月くらいは僕も沖縄で一緒に暮らした。
その時に沖縄通信と題して、
身辺日記のようなものを書いていたのだが、
それの最終回をここに掲載させていただく。
『沖縄通信 第42回
今からパソコンの電源を落として
パソコンの荷造りをするため、
沖縄から発信する沖縄通信は、
これが最後になります。
この一ヶ月、僕は那覇市の銘苅(めかる)
というところに住んでいたのですが、
このあたりは昭和62年までは、
米軍基地の住宅施設があった所で、
それが昭和62年に返還されて、
ここ30年くらいの間に
住宅街になった新しい街です。
近くには銘苅墓石群という、
古い時代の遺跡があるのですが、
その発掘は10年以上中断していて、
遺跡が崩壊するのを防ぐために、
ほとんどが砂で埋め戻されています。
かろうじて整備されている亀甲墓が、
近くの公園の一角にあるのですが、
その横をよく通っていました。
琉球王国の高官の墓らしいのですが、
沖縄ではなるべく、
頭を使ったり、お勉強したりせず、
心と体を休めようと思っていたので、
いわれなどを詳しく調べるようなことはしませんでした。
ただ、その墓の近くを通る時は、
なんとなく、違和感というか、
空気が違うような感じは受けていました。
ここだけでなく、沖縄には、
何か本土と違う、
不思議な感じがする場所が、
たくさんあります。
おそらく日本の歴史より古い、
僕の知らない価値観の文化が、
ここには、深く、根強くあるんだろうなと、
そういう感じだけはいつも感じていました。
その感じを、ただ記憶にとどめるだけにしておいて、
そのまま福岡に戻り、そして熊本に引っ越して、
これから新しい生活を始めます。』
さて、その銘苅墓石群のそばを通って、
1人で夜に家に帰っていた時、
そのお墓のあたりで人影を見た。
しゃがんで草取りのような作業をしているように見えた。
近所のお年寄りが奉仕作業のようなことをしているのかな、
でもなんでこんな暗い時間に作業しているんだろう?と思った。
その時はそこがお墓であるということも知らず、
お墓の形状も暗くてよく見えなかった。
ただ、小高い丘のようなところで、
人がしゃがんで作業しているのだと思っていた。
後日、明るい時間帯に、
奥さんと一緒にその場所を通った時、
僕はなにかの違和感を感じた。
僕が人がしゃがんで作業していると思った場所は、
本当にそこで人が作業していたのなら、
宙に浮いて作業していたとしか思えない場所であった。
奥さんはその時僕が何かこの世のものではない存在を
見ていたのだろうと言った。
これがある意味人生最初の不思議体験である。