ホスピスのせつない思い出
かつて友人が
末期ガンでホスピスに入院していて、
彼を見舞いに訪ねたところ、
鎮痛のモルヒネで意識が混沌としていて、
少しトンチンカンな会話になった。
淋しく悲しい思いをして、
病室を出るともう日が暮れていて、
ロビーのような場所で
車椅子の若い女性がテレビを見ていた。
ガンで痩せているため、
見た目がモデルさんのように綺麗で、
「ああ、この人もガンなのか」と思うと、
哀しいような、もったいないような、
複雑な気持ちだった。
僕のそんな気持ちに気付いたのか、
その人もチラッと僕を見た。
かつて見た「病院へ行こう2」という映画で、
末期ガンの小泉今日子と
医師の真田広之が恋に落ちて、
セックスをする時に小泉今日子が、
「避妊はしなくてもいいよ、
だって私そんなに長く生きられないんだから」
というようなセリフを言うシーンがあった。
見舞った友人は一ヶ月後に亡くなった。
あの、モデルのように綺麗に痩せていた女性も、
もう生きてはいないだろう。
テレビから流れていた、
にぎやかなバラエティー番組の音声が、
より寂しい気持ちになった思い出である。