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「A-aDO2」の計算式について


「A-aDO2」とは?

 正常値は10mmHg以下で、数値が大きくなった場合は「呼吸不全」があるという検査です。

 A:alveolar 肺胞
 a:arterial 動脈

 Aとaの二つあり、その酸素(O2)のDifference(違い)がA-aDO2です。呼吸をして取り込まれた酸素は気道から肺胞に入って、そこから動脈に行きますね。A-aDO2は直訳すると「肺胞」と「動脈」の酸素の量の違いということになります。

 ※正確には酸素は気体なので量(volume)ではなくて分圧(Pressure)というもので表現しますが、同じという認識でOK。P●O2というのは全部「●の酸素分圧」という意味なのですが、分圧とはまあ「量」のことだと思ってもらえれば結構です。数字が高ければいっぱいあるということです。

 もうちょっと細かく見てみます。肺に酸素が入ると肺胞→肺胞上皮細胞→間質→血管内皮細胞→動脈という順に取り込まれていきます。ここのどこが障害されても酸素は動脈に取り込まれにくくなるので、A-aDO2は上昇してしまいます。まあ肺炎でも、肺水腫でもほとんどの呼吸不全でA-aDO2は上昇します(たとえば肺水腫は間質に水が溜まって分厚くなるのでO2が移動しにくくなる)
 え?逆にA-aDO2が上昇しない呼吸不全はあるのかって?肺胞低換気(たとえば神経筋疾患や鎮静・麻酔が効きすぎていて、呼吸が弱い状態)などではA-aDO2は上昇しません。別に肺に障害があるわけではありませんので。

A-aDO2の計算式

 A-aDO2は肺胞(A)と動脈血(a)の酸素分圧の差なので、
  A-aDO2 = PAO2 - PaO2
で表せます。シンプルですね。これはわかりますよね? 終わり?
 PAO2:肺胞酸素分圧、PaO2:動脈血酸素分圧

PIO2(吸入酸素分圧)

 それではA-aDO2を計算するには、次に肺胞にどれぐらい酸素があるかPAO2が分かればいいですよね(PaO2は血液ガス採血で分かるからね。)あれ、でもどうやって分かるんだろう?どこにも書いてないし。そうなんです。そうは問屋がおろしません。PAO2を知るためにはちょっと計算しないといけいないのです。何を計算するかって?それはPIO2です。
PIO2のアイ「I」とは吸気(inspire)という意味なので、口から吸われる酸素はPIO2で表します(別に鼻からでもいいですけど。)。そして、
 PIO2 = (大気圧 - 飽和水蒸気圧)× FiO2 
です。
 大気から水分を引いて、それに酸素濃度をかけたものがPIO2ですね。基本的に我々は高度0mの高さにいる場合を想定するので、大気圧は760mmHg、飽和水蒸気圧は47 mmHgです。そして空気のFiO2は0.21ですよね(この3つの数字は暗記しちゃわないといけません。地球に住んでいる以上はそう決まっているからです)。
 従って
 PIO2 = (760 - 47) ×0.21 ≒ 150 mmHgです。
  ↑この150という数字も覚えてしまいましょう。

 基本的にエベレストの頂上にいるとか、飛行機に乗っているとかではない限りはこの数字が使われます。あっ、もちろん酸素投与されている患者さんの場合は、FiO2の数値は変わりますからね!!

PAO2(肺胞酸素分圧)

 そして吸った酸素の量(PIO2、「I」はInspireで吸気のこと )がそのままPAO2になるかと思いきや、肺胞の中では酸素は二酸化炭素と交換されるので、その分だけ引かないといけません。CO2は呼吸商0.8の分だけ酸素と交換されるので、PaCO2/0.8を上記から引かないといけません。
 PAO2 = PIO2 - PaCO2/0.8 
    = (760 - 47) × FiO2 - PaCO2/0.8

PAO2はPIO2からCO2の分を引いたもの

A-aDO2の公式 (これを覚えよう)

肺胞動脈分圧格差 A-aDO2 = PAO2 - PaO2
肺胞酸素分圧 PAO2 = PIO2 - PaCO2/0.8
吸入酸素分圧 PIO2 = (760-47)×FiO2
上記が基本の3つの式で、まとめると下の計算式になります
以下の公式を覚えましょう

 A-aDO2の計算式

練習問題

 ここは高度0mで飽和水蒸気圧は47mmHgです。自分の左鼠径から、動脈血を採血して血液ガス分析器で測定してみました。結果、PaO2は90mmHg、PaCO2は40mmHgと出てきました(正常値ですね!)
 あなたのA-aDO2はいくつでしょうか? 
ちなみに吸っているのは空気なのでFiO2はもちろん0.21です。
 A-aDO2 = (760-47)×0.21 - 40/0.8 - 90
     = 150 - 50 - 90
     = 10mmHg
ということで、計算できましたか?
A-aDO2は概ね10-20mmHg以下が正常値です。
 A-aDO2 <10 mmHg 正常値
と覚えておきましょう。
(ちなみにmmHgミリメートルエイチジーとTorrトールという単位は同じですので。。。)

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