バカにつける薬
目の前にチカチカと光る歯車がぐるぐる回る。偏頭痛がくるな、痛み止めを飲まなきゃ。
それなりに長く生きると予兆による対策が可能になる。過去の経験から学ぶ、と言うことだ。
自分の経験でなくとも、人から聞いた話であっても備えることは可能なのだ。
幸せに生きるためのコツは、求めないことだと言う。期待するから裏切られる。
概ね、それはそうなんだろうが、そんな話があってたまるかよ。
執着は、欲しくても得られなかった過去が引鉄となっているのは明らかだ。あの頃のわたしは求めなかった。それでいい、仕方ないと思っていた。
今はどうだ?欲しがることをやめられない化け物だ。
だれが、こんなこと教えてくれた?
別れるくらいなら死んでやるって言ってたあの人?
そいつは悪い男だからやめておきなって今カノを待ち伏せしてたあの人?
名指しで会社に電話がきても平然としてたあの人?
みんな、笑い者になっても、化け物になってもその人が好きだったんだね。
今になって、教訓として活きることはもはやなにもないが、全部やったっていいと思っている。
その時、きみがどんな反応をするのか見てみたいから。
きっとわたしの味方にはなってくれないけど。
全部見たいな。
例えば、わたしが死んでしまった時の顔とか。
あぁ、好きになっただけなのに。
恋だの愛だのばかりで生きているわけじゃないのに。
分かっていても、どうしようもない。
バカにつける薬はない。
化け物は今日もきみからの連絡を待ってるよ。
*今のこと