言霊あるいは呪縛
忘れっぽいきみは、いろんなことをわたしに話してくれたけど、なにを話したかなんてきっと覚えてないんだろうね。
記憶力がいいわたしは、LINEを消した今でも結構いろんなことを覚えているよ。
初めの頃、きみはよくムービーを撮って送ってきてくれたよね。
遊びに行ったところ、食べたもの、日常の風景。
わたしはそれを見て、隣で一緒に楽しんでいる気持ちになってたんだ。
いつのまにか、それはなくなって連絡の頻度も減って。
新しい興味の対象ができたんだなってわたしだって気付いてたんだよ。
忘れっぽいきみは、いろんなことをわたしに話してくれた。
記憶力がいいわたしは、きみが語る言葉の矛盾点に気づいても気づかないふりをずっとしてたんだよ。
どこかにわたしにとっての本物がひとつあれば、それでよかったから。
なんなら連絡をくれた事実だけでよかったの。
忘れっぽいきみ。
頭がわるいわたしは、きみの言葉を宝物みたいにずっと大事に抱えてきたんだよ。
きみがわたしを「俺の女」って言ったから、わたしはずっときみのものだったんだよ。
*5年前