監督問題が再勃発【高校野球奮闘記Vol.8】
高校野球を3年間続ければ、甲子園出場につながる大会は計5回ある。
1年夏、2年春・夏、3年春・夏。
こう考えると、チャンスは意外に多くある。
しかし、レギュラーもしくはベンチ入りメンバーでなければ、憧れの甲子園の土を踏むことはできない。
1年夏の大会に関しては入学してわずか3ヶ月半で始まってしまう。
その期間でベンチ入りの背番号をもらうのは至難の業である。
野球部は各学年ごとでチームを組める訳ではない。出場できるのは高校で1チームだけ。
当然ながら、3年生中心のメンバー構成になることは否めない。
3年生が高校最後の大会になるということも多少は考慮される高校野球。
しかし、2年生や1年生でも、それなりに実力があればベンチ入りメンバーとして選ばれる可能性はある。
それは、その高校の全野球部員で最強のチームを作り上げるためである。
中には、翌年以降のチーム編成を考えて経験を積ませる意味でベンチ入りに選ばれる選手もいる。
高校の部活動として、勝つことだけを目的にしているのであれば、学年関係なく実力主義になる。
プロ野球などは、そんな世界だ。
それと比べて、高校野球の目的を学校として、どこに置いているかでメンバー構成も多少変わってくる。
多くの高校の場合、1年生はベンチ外でスタンドからの応援するということが一般的である。
私の1年生の夏は、もちろん背番号なしでスタンドからメガホンを持って応援するのが与えられた役割であった。
ただ、3年生と2年生全員がベンチ入りしても、部員数の関係でもう1人だけベンチに入れる(背番号が与えられる)余裕があった。
必然的に1年生で誰か1人だけベンチ入りできるという状況であった。
選ばれたのは、1年生でも一番の期待を背負っている身長185㎝のピッチャー。
そう、私が中学生最後の大会のときにベスト8をかけて戦った、市内屈指の好投手だ。(ちなみに、そのときの試合は私たちのチームが勝利)
細身ではあるが、恵まれた体格から将来のエース候補と呼ばれている松本(仮名)が1年生で唯一ベンチ入りを果たした。
私の1年生の夏はスタンドからの応援で終わったが、この夏の3年生の躍動が大きな刺激となったのは間違いなかった。
ちょうど夏休みに入ったタイミングで新チームの結成となった。
3年生が抜けたあと、2年生と1年生で新チームとしての練習が始まるはずだった。
だった…
ここで、大きな問題が勃発する。
監督問題だ。
監督のことについては、以前の記事で書いたとおりだ。
特に夏の大会前から監督に対して不満を持っていた2年生たちが猛反発。
前監督が退任してから、新監督がなかなか決まらないという状況の中、夏の大会が直前に迫っていたこともあり、野球部長が新監督に就任していた。
※新監督は野球未経験者
そうでなければ、『監督不在という状態で大会に参加することは難しくなる』ということを学校側から告げられていたので、仕方なくと言ったら御幣があるかもしれないが3年生は最後の夏の大会に参加すべく、新監督の就任に従わざるを得なかったというのが本音であっただろう。
そんな状況で2年生たちは、監督に対して『監督!』と呼べるような存在ではなかったのは言うまでもない。
実際のところ、夏の大会でも監督はサインも指示もなし。試合前のノックだけ監督として参加していたので、もどかしかったに違いない。
私たち1年生にとっても、何とも言い難い監督であった。
高校野球をする限り、やはり野球経験のある監督に教わりたい。
サークルや同好会ではないのだ。
それは、青春の1ページとして高校野球に魂を込めて、真剣に取り組んでいるからだ。趣味や遊びではない。
そうでなければ、3年間もしんどい練習に時間を費やすことなどせず、別のことをする。
高校野球をしている生徒たちは全員が真剣なのだ。青春を野球漬けで過ごすのだ。
だからこそ、せめて野球の指導ができる監督に就任してもらいたい。
そこで2年生たちは、監督の交代を申し出た。
学校側にとっては、数ヶ月前にやっと落ち着いたかと思えた『野球部の監督問題』が再び勃発したのである。
つづく
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