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82.インド?インド洋?

外交・防衛系の話題のニュースでよく「インド太平洋」というフレーズが出てくる。

第2次トランプ米政権の発足を受け、日本、米国、オーストラリア、インドは21日午後(日本時間22日午前)、4カ国の枠組み「クアッド」の外相会合を米ワシントンの国務省で開き、同盟国・同志国連携の重要性を確認した。会合後に共同声明を発表。「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けた協力継続を打ち出した。

時事ドットコム「日米豪印、同志国の重要性確認 トランプ政権でも連携継続」(最終閲覧: 2025.1.23.)


どうやら、インド洋と太平洋、という意味らしい。

Free and Open Indo-Pacific(FOIP)

インド太平洋は、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至る広大な地域であり、世界人口の半数を擁する世界の活力の中核です。しかし同時に、インド太平洋は、各国の「力」と「力」が複雑にせめぎ合い、力関係の変化が激しい地域でもあります。また、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散、自然災害、違法操業といった様々な脅威にも直面しています。

インド太平洋地域において、ルールに基づく国際秩序を構築し、自由貿易や航行の自由、法の支配といった、地域の安定と繁栄を実現する上で欠くことのできない原理・原則を定着させていくこと。これが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という考えの要諦であり、日本は、志を共にする国と連携しつつ、この考えの下での取組を力強く主導しています。

外務省HP「外交青書2020」(最終閲覧: 2025.1.23.)

外交青書にあるヘッダー画像のような図をみると、確かに日本と関係の深い東南アジアの一部の国々は太平洋にかからないので、そのあたりの地域も話に含めるには「インド太平洋」という表現が適切なことがわかる。

ここで筆者はあることを思い出した。
そう、ペリー来航である。
日本に開国を要求したときのペリーの肩書きは、「東インド艦隊司令長官」なのだ。

出典: https://www.kodomo.go.jp/yareki/theme/theme_01.html

調べてみると、この「東インド艦隊(East India Squadron)」というのは、
日本への来航のずっと前、1830年代に、東アジア諸国と国交を結ぶためにつくられた船隊のことらしい。
主な目的は、捕鯨の際の寄港地をつくること。
これは、教科書で習うペリーの来航目的と重なる。

それにしても、「東インド」ってずいぶんざっくりしすぎでは?と思ってしまうのは、筆者だけだろうか。

まあ、英国やオランダも「東インド会社」なんていう貿易会社で、日本でも商売をしていたので、

 17世紀、西欧諸国が東洋貿易のために設立した特許会社・東インド会社。イギリスは1600年、オランダは1602年、フランスは1604年に設立。香料などの物産を輸入することが主な目的だったが、商圏拡大のために植民地経営にも従事していた。

 出島和蘭商館はつまり貿易のために日本(出島)に置かれたオランダ東インド会社の支店というわけだ。

長崎webマガジン・ナガジン「出島回想録 〜出島が日本と世界にもたらしたもの〜」(最終閲覧: 2025.1.23.)

あの当時の欧米のひとは、日本ないし東アジアは「インドの東にある地域」くらいにしか認識していなかったのかもしれない。

冒頭の「自由で開かれたインド太平洋」は安倍首相の構想らしいが(外交青書参照)、
その「インドの東にある」ちいさな島国自身が、「東インド艦隊」に開国させられた160年くらいあとに、インド洋と太平洋にある国の融和を呼びかけるなんて、
なんだか歴史のいたずらという感じがする。


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