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あたしは君のメロディーやその哲学や言葉全てを守り通します

息子の保育園では冬にスケートをやる。この間、お手伝いがてら娘二人を連れて見に行った。何かと心折れがちな息子だが、スケートリンクの上でちょこちょこ一生懸命前進し、尻もちをついてもまた立ち上がる姿はなんともいえず愛らしかった。冬生まれの息子は、月齢早い&アグレッシブ組にいつも遅れて、ゴールにたどり着いた。

全体を二つのチームに分ける。比較的滑っている子たちと、そうでない子。息子は意外や意外、滑っている子たちチームに入っていた。滑っている子たちチームの子たちは、元プロの指導で、なにやら技術的なことを教わっているようである。体重を片方の脚にかけて、曲がるお手本を、元プロの方が子どもたちに見せていた。

しばらく娘の相手をして、ふと目を上げると、息子が(今日は)あんまり滑ってない子たちチームにいる。近くにいたお母さんが、最初は滑ってた子チームにいたのに、先生にこっちのチームに連れてきてもらってたよ。(親友の)ぐりくんと肩ぶつけて、笑ってたよ。と教えてくれた。

ぐりくんはスケートが大好きなのだが、この日は疲れていたのか、ずっとうつむいて、とぼとぼ氷の上を歩いていた。でも今は、息子と並んで楽しそうに、先生がもつカラーコーンめがけてちょこちょこ前進している。

私はそれを見てなんともいえずうれしくなった。たぶん息子は、「ぐりくんを元気づけなきゃ!」的な高尚な思いで、ぐりくんの元へ行ったのではないと思う。ただただ、自分一人で、できる子たちの中にいるのが不安で、ぐりくんの元へ行ったのだと思う。


だけど、結果、今日ずっとうつむいていたぐりくんが笑っている。私は息子がぐりくんを笑顔にしたことが嬉しかった。今日滑っている子組のほうにいて、元プロの方に技術的なことを教わるのもすてきなことだが、息子とお友達が今日のスケートを楽しめれば、それが何よりだと、私は思う。

息子はこの間、ぐりくんをパジャマパーティに誘いたい、手紙を出すと言った(私が書きとった)。息子は、すきなことがあれば、いきていけます。すきなことがなければ、いきていけません。ともだちがいれば、いきていけます。と述べ、結局パジャマパーティについては一切言及しなかった。私はこの迷走に笑いを必死でこらえたが、義理の母は文面に感動してくれた。これは彼の哲学だ、と。

何のとりえもない親だけど。君の哲学を否定することはすまい。君がなにかできるようになった時は、それを一緒に喜ぶけれど、君が何かできないときに、そのせいで不幸になるような親にはなるまい。と、何かと感受性の手垢で物事をべたべたにしがち人間なので、帰りの車で、ふとそんなことを考えました。

百ます計算で有名な陰山英男さんの著書『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』は、読んでよかった育児書の一つ。著者曰く、子育てのゴールは、子どもが自立して幸せに生活できるように育てること。だから、親が一番にやらなきゃいけないことは、幸せに過ごしている姿を見せること、っていうのは、意識するようにしている。裏返すと、子どもが病気になった、事故に遭った、とか、そういうこと以外の、「子どものこと」で、不幸になっちゃいかんと、そういうことだと思っています。


とか言いつつ、いつも寝かしつけで(みんな楽しそうで寝ないんだ!)イライラしてしまう。息子はべそをかいていた。ごめんね。だけどね、本当は、君(たち)がそこに生きているという真実だけで幸福なんです。寝た後に思いがち。


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