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ADHDと営業活動についての苦労と対策
ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持ちながら営業活動を行うことは、時に非常に困難であり、まさに「苦労と対策のいたちごっこ」のような日々です。営業職はスケジュール管理や時間の使い方が求められ、集中力や記憶力が試される場面が多いため、ADHDを持つ私にとっては一層の挑戦となります。しかし、その中でも試行錯誤を繰り返し、少しずつ自分に合った方法を見つけてきました。この記事では、私が営業活動を通して経験した苦労と、その対策について具体的なエピソードを交えて紹介します。
1. アポに遅れてしまうこと
営業活動の中で最も大きな課題のひとつが、アポに遅れてしまうことです。営業の仕事では、クライアントとのアポがしばしば設定され、その時間に遅れないように気をつけなければなりません。しかし、ADHDを持つ私にとって、時間の管理が非常に難しく、しばしばアポに遅れることがあります。
たとえば、ある日、クライアントとの重要な商談があり、朝からその準備に追われていました。私は何か一つのタスクに集中してしまうと、他のことが見えなくなってしまう癖があります。この日は、商談資料の準備をしている最中に時間を忘れてしまい、気づいた時には約束の時間を過ぎていました。急いで電車に乗ろうとしたものの、電車の発車時刻が迫っていて、乗り遅れるのではないかという焦りで、さらに冷静さを欠いてしまいました。結局、クライアントに遅れる旨を電話で伝える羽目になり、その後の商談もスムーズには進みませんでした。
こうした経験を通じて、私が取った対策の一つは、スマホのアラームを使うことです。アラームは、私にとって非常に有効なツールでした。毎回アポの30分前にアラームをセットし、それを基準に時間管理をすることにしました。しかし、アラームをセットしても、たまに「30分前ではまだ大丈夫だろう」と思い、ついアラームをかけ忘れてしまうこともあります。また、アラームが鳴った時には、急いで準備を始めるのですが、時折アラームの時間を間違えてセットしてしまい、結局遅刻してしまうという事態にもなります。
2. 電車移動中に降りたい駅で降りられないこと
営業活動は、しばしば移動を伴います。特にクライアントとのアポが都心部で設定されていると、電車での移動が必要です。しかし、ADHDを持つ私にとって、電車移動中に降りたい駅を逃してしまうことがよくあります。
ある日、東京の繁華街で数件のアポをこなす予定があり、電車を利用して移動していました。普段、電車の中では音楽を聴いたり、読書をしたりしているのですが、集中してしまうと降りるべき駅を通り過ぎてしまうことがよくあります。この日も、次のアポに間に合うようにと急いでいたものの、乗車中にメールの返信をしていたため、降りるべき駅を見逃してしまいました。気づいた時には、すでに次の駅を過ぎてしまっており、再び乗り換えなければならなくなりました。このため、さらに移動時間が長くなり、次のアポにも遅刻してしまいました。
この問題に対する対策としては、降車駅のメモをあらかじめ準備しておくことです。移動する前に、降りる駅とそのタイミングをスマホのメモアプリに記録しておき、もしもの時に確認できるようにしました。また、最近ではスマホの乗換案内アプリで、降車する駅を事前に設定しておくことで、アラームが鳴る仕組みを作っています。これで、駅を通り過ぎる心配が少なくなりました。
3. 集中力の散漫さとその影響
営業職は、クライアントとの商談や提案資料の作成など、非常に集中力が求められる場面が多いです。しかし、ADHDを持つ私にとって、集中力を持続させるのが難しいというのは大きな苦労です。
例えば、ある日、1時間半の商談が終わった後、次の提案書を作成する必要がありました。商談の内容を整理しようと考え、資料を広げて取り掛かったものの、5分もしないうちに携帯電話が鳴り、SNSの通知に気を取られてしまいました。数分後にまた作業に戻ろうとするも、今度は別のメールの返信に気を取られ、結果的に全然作業が進まなくなってしまったのです。このように、簡単な作業でも次々に気を取られてしまうため、集中力が続かず、計画的に仕事を進めるのが難しいのです。
この問題に対して、私は作業環境の整備と時間制限を設ける方法を取り入れました。作業中はスマホを机の遠くに置き、通知が来ないように設定しました。また、集中する時間を短く区切り、ポモドーロ・テクニック(25分間集中して作業し、5分間休憩する)を使って作業を進めるようにしました。これにより、作業の集中力が高まり、気が散ることなく効率的に仕事を進められるようになりました。
4. 他人に声をかけられた時にやるべきことを忘れてしまう
営業活動では、オフィス内で同僚やクライアントに声をかけられることがよくあります。その際、ADHDを持っている私は、声をかけられると自分がやろうとしていたことをすぐに忘れてしまうことがあります。例えば、商談の後にすぐに次の電話をかける予定だったのに、同僚に声をかけられて話し込んでいるうちに、電話をかけることをすっかり忘れてしまうことが何度もありました。
これを防ぐために、私は声をかけられた時には必ずメモを取ることを心がけています。もし自分が何かをしようとしている場合、話を聞きながらでもメモを取ることで、その後にやるべきことを忘れることが減りました。また、同僚にも「今は少しだけ待ってもらえますか?」とお願いして、メモを取る時間を確保するようにしています。この方法を取り入れてから、タスクを忘れることが少なくなり、スムーズに仕事を進められるようになりました。
終わりに
ADHDを持ちながら営業活動を行うことは、日々の中でさまざまな苦労があります。しかし、それに対して自分なりの対策を講じ、少しずつ改善していくことができました。時間管理のためのアラーム、移動中の降車駅の確認、集中力の維持、他人に声をかけられた際のメモ取りなど、小さな工夫を積み重ねていくことで、少しずつ仕事の効率が上がり、アポや商談をこなすことができるようになりました。
もちろん、まだ完璧ではなく、時にはうっかり失敗してしまうこともありますが、それを恐れずに前進し続けることが大切だと感じています。ADHDを持つ自分だからこそできる方法を見つけ、仕事を楽しむことができるようになれば、それが最も重要な成果だと思っています。
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