「三体Ⅱ 黒暗森林 上」あらすじ紹介
「生存は文明の第一欲求である。
文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である。−宇宙文明の公理−
「三体危機」の発生から3年、地球三体協会が壊滅し、異星文明「三体」による地球侵攻が公表されたことで人類社会には大きな衝撃が走った。三体星間艦隊の太陽系到達までのタイムリミットは4世紀半。
しかし、三体世界が艦隊に先んじて送り込んだ陽子コンピューター「智子(ソフォン)」によって人類の科学技術の進歩は完全に封殺され、ありとあらゆる情報はリアルタイムで三体世界に筒抜けとなっていた。
基礎科学の発展が行き詰まり、人類のすべての活動が「智子」の監視下にある以上、人類に為す術はないように思われ、人々は未来の戦いに諦観し、敗北主義や逃亡主義、懐疑主義が社会に蔓延していた。
各国の足並みも揃わず、共通の強大な敵に相対してなお、人類全体の一致団結までの道のりは遠い。
だが、国連は惑星防衛理事会(PDC)を設立、各国は将来の宇宙艦隊設立に向けて動き出し、人類社会は三体世界とあくまで戦う構えを見せていた。
面壁計画───
全人類から選ばれた4人の「面壁者(ウォールフェイサー)」による唯一無二の「智子」対抗策。「智子」はあらゆる媒体の情報はもちろん、地球上のどこにいようと会話までも筒抜けにする。
だが、人間の思考を読むことは出来ない。
選ばれた「面壁者」には強大な権力と膨大な資源が与えられ、来たる400年後の「終末決戦」に備えた作戦計画を、立案・実行しなければならない。
「面壁者」はその過程において、自らの計画の本当の意図を決して悟られてはならず、敵も味方も、自分以外の全てを欺き真の計画を進めていく。嘘と謀略だけが、人類が持ちうる唯一の武器なのだ。
だが、三体世界もまた面壁計画を阻止すべく地球三体協会に再接触。地球三体協会の生き残りの中から選ばれた3人の「破壁人(ウォールブレイカー)」が面壁者の計画を暴くため動き出す。
面壁者 対 破壁人、三体世界と人類の前哨戦が始まろうとしていた。
「面壁者」の一人に選ばれた社会学者の羅輯(ルオ・ジー)。人類の命運を担うに値するとは思えぬ不可解な人選に思われたが、彼こそが三体世界が最も恐れるただひとりの人間だった!
劉慈欣作「三体Ⅱ 黒暗森林 上」では、物語が大きく動き出す。
主人公は第一部から変わり、天文学者から社会学者に転向した異色の経歴を持つ「羅輯(ルオ・ジー)」に移る。また、前作から引き続き登場する人物も多数。
前作ではVRゲーム「三体」の謎を解き明かした汪森(ワン・ミャオ)が地球三体協会と接触、さらに地球三体協会の本拠地への急襲作戦が行われ、一連の事件における黒幕が明らかとなる。
その正体は3つの太陽を持つ、4.3光年離れた星系に存在する異星文明、通称「三体」であり、実験結果の操作や超常現象によって基礎科学の発展を妨害し破綻させ、科学者たちを自殺へと追い込んでいたのは彼らが地球に送り込んでいた陽子を改造した極小コンピューター「智子」だった。
三体文明が存在する惑星は、3つの太陽の周りをランダムで周回している。そのため安定した「恒期」と天変地異が襲う「乱期」が交互に訪れる非常に厳しい環境となっている。三体文明は惑星規模の大災害により何度も文明のリセットを繰り返しゆるやかに進歩してきたが、遂に星を捨て新天地を求めて星間艦隊を出発させた。
そんな中、地球外生命探査の極秘プロジェクトに参加していた葉文潔が送信したメッセージが、三体世界へと到達してしまう。「応答するな!」という三体世界の平和主義者を名乗る者からの返信を受け取った葉文潔だったが、これに対して文化大革命での経験から人類の更生には人類以外の力が必要であると考えていた彼女は再度メッセージを送信してしまう。二度目の受信によって発信源を特定した三体世界は、ひとつの太陽のもとで安定した環境を維持する生命の楽園、地球に向けて1000隻の大艦隊を差し向けるのだった。
「お前たちは虫けらだ」
三体人が言うとおり、まさに人類は虫けら同然ではあったが、地球三体協会から回収されたデータの中から人類は反撃の糸口を見つける。
三体人のコミュニケーションは「思考を外界に表示」することで行われる。思考は常に他者に開かれており、三体人にとって「思うことと話すことは同じ」なのだ。それゆえに隠し事や嘘といった概念がもとより存在していない。嘘をつき、謀り、他人を欺くことが人類の本質であり、智子をもってしてもそれらを暴くことはできないと悟った三体世界は、地球三体協会を切り捨てた。この点に活路を見出し、立案されたのが面壁計画だった。
・登場人物
新主人公「羅輯」
読みは「ルオ・ジー」。社会学者だが過去には天体物理学者でもあった。世間や自分以外の他人に対しては無関心な態度ではあるがモテる。類稀な妄想癖の持ち主で、一時期は空想上の交際相手に生活を支配されていた。
彼は葉文潔の自殺した娘である楊冬(ヤン・ドン)の高校の同級生で、物語冒頭に彼女の墓の前で葉文潔に出会う。その際、葉文潔から「宇宙文明の公理」を伝授されるが、この様子を智子を通して見ていた三体世界は地球三体協会に羅輯の抹殺を指示する。
個人的に顔は玉木宏か斎藤工なイメージ。
もう一人の主人公(?)「章北海」
読みは「ジャン・ベイハイ」。海軍の政治委員で中国宇宙軍創設メンバーに選抜される。すでに敗北主義が蔓延していた初代宇宙軍の中で、ただ一人の強靭な勝利主義者。400年後の絶望的な戦争に向けて、宇宙軍に勝利の信念を植え付ける思想工作の必要性を説き、政治幹部を人工冬眠によって未来に派遣する「未来増援計画」を上申する。
さらに星間戦争を戦う宇宙艦隊の建造を目指し、非媒質型核融合エンジンを用いた新たな宇宙航行プログラムを推進するため、ある計画を実行すべく宇宙に出る。
顔のイメージは西島秀俊。
第一部に引き続き活躍「史強」
読みは「シー・チアン」、通称「大史(ダーシー)」。面壁者となった羅輯の警護を担当する。三体で一番かっこいい男。
〈面壁者〉
フレデリック・タイラー
元アメリカ合衆国国防長官。聡明な戦略理論家で現役時代は様々な危機に対処し、高い評価を得ていた。
顔のイメージはメガネをかけたジョージ・クルーニー。
マニュエル・レイ・ディアス
ベネズエラ大統領。チャベスの思想を継承し、小国だったベネズエラを豊かな社会主義国家へと変貌させた。強力な反米国家が誕生したことに危機感を覚えたアメリカはベネズエラへ派兵したが、ハイテク兵器を駆使したゲリラ戦術によって大損害を被り撤退した。
イメージはデイヴ・バウティスタかロック様。
ビル・ハインズ
科学者にして元欧州委員会委員長。妻は日本人で脳科学者の山杉恵子。大脳のメカニズムについて研究し、その活動が量子レベルで行われることを発見しノーベル賞2部門にノミネートされた。科学と政治、両分野に高い能力を持つ。
恐らくコリン・ファース的な雰囲気。