失われたカッパを求めて 12
下水道に流されて、どんぶらこっこ、桃太郎が鬼退治にいくほどの、紆余曲折は岡山県で、ももがとれたというニュースは、それは股がとれては大変だろうと、イルカたちが緑色をしていた。
とってもおいしい自転車の速度は桃色に前衛筆耕しているものだから、私はあなたはあなたの私をあなたをした。
冒険とは外にむかうものだけではない。
カッパはいつも内宇宙にむかって手旗信号をおくり、エスの呼びかけに応えて、皿洗いのアルバイトなんて今はもうない。すべて機械でやるのだ。子どもを産む、皿を洗う、車をつくる、道路を敷く、こういったバルーンは機械がゴトトンゴトトン、列車が入っていく、正面に座る女の内臓めがけて。
電柱にのぼってあたりを見渡すと、太平洋があたまの上にくるものだから、おかあさん! と叫んだ。はやくおりといで、はやくおりといで。と、諸葛亮が叫ぶ。
いや、諸葛亮は死んだ。死んだはずだ。しかし生きているのかもしれない。生きているならオレは殺されてしまう。あいつにとってオレを殺すことなんてわけないことなのだ。
そしてオレは逃げた。仲達を走らせたというわけだ。その後、中原に残されたのは一本の電柱と、そこにしがみつくオレだ。オレはオープンカーにのって、その姿を見物にいった。隣には樋口一葉を乗せてね。
「みろよ、みっともない」
「更けゆくまゝに灯火のかげなどうら淋く」
「なんだって?」
「寝られぬ夜なれば臥床に入らんも詮なしとて小切入れたる畳紙とり出いだし」
「どうかしちまったのか?」
「何とはなしに針をも取られぬ」
川縁にいくと、小学生が2000人ほども水遊びをしていた。水は濃硫酸らしく子どもたちの肌の灼ける臭いがした。みんな苦痛に顔をゆがめながらも、先生たちがその水でやけどを冷やせと必死にいうものだから、すなおに、すなおに聞き入れて、濃硫酸をやけどの跡にしきりに塗り込んでいた。
かわいそうな、かわいそうな小学生たち。
いちばんかわいそうなのは子どもたちだ。いちばんかわいいのはキリンの赤ちゃんだ。キリンの赤ちゃんを捕まえて、甘辛いタレをかけてじっくりと香ばしくなるまで焼いて、それから肉をそぎ切りにして、キュウリ、トマト、ハラペーニョなどと一緒にトルティーヤに包んで食べるのだ。
うちのじいさんはガダルカナル島でそいつを食べて気が狂ってしまった。
樋口一葉はオレの子どもを妊娠していた。
オレ?
オレはもちろん半井桃水だよ。
もちろん私は半井桃水ではない。
どうしては私は、自分が人間であると、思い込んでいたのだろうか?