38歳、ぽんこつ処女道 ~出会い編⑥~
友人宅のホームパーティーへ行く前に、トリさん家の最寄り駅でお茶をすることにする。
ホームパーティー用の手土産を買いたいので、美味しいスイーツのお店とかないですか?と
事前に訊いていたのだが、なんと……
トリさんが、予約しないと買えないロールケーキを買ってくれていた…!
マジで!?
「わざわざ最寄り駅まで来てくれたので…」と言われたが、
隣駅だし本当についでだったので、これにはびっくりした。
やっぱりすごくいい人だ…!!
しかし、恋愛感情が沸くかと言われるとそれはまた別なわけで…。
お茶をしてる最中も、意識的に彼のときめくところを探すが
やはりピンとこず。
なぜか近代歴史の話を延々とされ、GHQが諸悪の根源だ的な話をされたようなされなかったような。(興味ないのでうろ覚え)
やっぱこの人と話会わなくね?断ろう!とまで思うが、
また私の決断を揺り戻す事態が起こる。
お茶が終わって席を立った時、私はなぜか最後の確認とばかりに
初めてトリさんの目をじっと見た。
そしたら、、
キレイだったんですよ…(爆)
バカバカ!骨の髄まで少女漫画におかされとるんか!!(恥)
でも本当に、ちょっと茶色がかってて、薄くてキレイ。
外見は昭和というか、古きよき日本人って感じだったので、
そのギャップに少し惹かれたのかもしれない。
漫画でも「目を見れば分かる」的なことは散々使い古された言い回しだが、
この人、根っこはキレイなんじゃないかと感じてしまったのだ。
お茶の後、最寄り駅まで送ってもらっていると、不意に沈黙が訪れ、トリさんから緊張した空気が伝わってきた。
この顔、絶対返事を待っている……どうしよう。
なんなら7割ぐらい断る方向で傾いていたのに、
最後の「瞳キレイ」事件が私の判断を鈍らせていた。
駅に向かう途中、ずっと天秤がグラグラと揺れるが、結局判断つかず。
その日も返事出来ずに別れる。泣
ちなみに私は恋愛に奥手ではあるが、ナシの場合はきっぱりと断れる方だ。
そこは処女特有の潔癖さとガードの固さによるATフィールドが展開されるので!
しかしトリさんの場合、恋愛感情は凪だが、明らかにナシだとなぜか断ち切れない。
この人を好きになれたら幸せな気がする。
でも恋はするものじゃなくて落ちるものだっていうし。
私は恋愛がしたいのでそこは譲れない。しかし、うーん…
みたいな堂々巡りをずっと繰り返していた。
これまで好きになった人はすべて一目ぼれに近かったので、
こういうパターンは初めてだった。
好きじゃなければ、なぜお断りできないのか?
お断りしないのなら、なぜ付き合う決心がつかないのか?
トリさんに対して煮え切らない理由を考えてみた結果、
「ものすごい喋ってくれるけど、つまらないと感じる時間の方が多い」
これが一番ネックな気がした。(いや、だいぶ致命的)
トリさんもオタク気質というか研究者気質なので、
近代思想とか社会学の話を嬉々として解説してくるのだ。
あとは若干、政権批判。
私がその分野に興味を持てばいいのか。
自分の気の持ちようで楽しい時間になるのか。
散々悩んだ挙句、、
Google先生に聞いてみることにした。
「話 つまらない 男性」 で検索。
検索の結果、話がつまらない男性にイライラしている人の例が大量に出て来る。
大抵は、職場の上司や知人男性が相手だった。
しかし、色々と読んでいくうちに
「彼氏の話がつまらなくて悩んでます。」という知恵袋の質問を発見する。
しかも、「彼氏のことは好きなんですが、話がつまらなくて苦痛です」
と続いていた。
え…??
付き合ってても、好きでも、つまらないと感じることってあるの??
「話はつまらないけど好き」は成り立つの?そういうのもアリなの??
この悩み相談をしたのは恋人がいる女性。恋愛相談カテゴリーだ。
それを見た時、唐突に、
そうか、私は今トリさんと恋愛してるんだ…!
と目から鱗が落ちた。
いや、今さらなんのこっちゃという感じだが、
恋愛経験値が低すぎる私は、
「恋愛したい」「恋愛したい」と追い求めるあまり、
自分の理想とする形以外を認めず、
恋愛に対する視野が狭くなっていたことに気づかされたのだ。
私の中では「恋愛=自分が好きになること」だった。
「恋はするものではなく落ちるもの」という名言に囚われていた。
しかし考えてみれば、これだけトリさんのことで頭を悩ませ、
もっと楽しい話してよ、とか
そしたら好きになれるかもしれないのに、とも思っている。
この時点で、実はもう恋愛してない…?みたいな。
まだ好きにはなれてないし、無理やり好きになる気もないけど、
「これも一つの恋愛の形なんだ」と認めたことで、
受容の幅が広がり、私の中の恋愛観が拡大した感覚があった。
まさにドラクエのレベルアップメロディーが、頭で鳴り響いた気がした。
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