ぼくたちはあの子たちに追いつけているのだろうか?


古い映画を観ました。1980年ころでしょうか?これから映画産業も花開こうとしていた頃のものです。

ストリーは単純で、野球が盛んな郊外の小さな街の少年野球チームに、元プロ野球選手の男が監督に来た、というだけの話。特別なドラマはないんです。弱小で野球が下手な子どもたちが、ただ楽しくすごしたくて参加してる。一応、みなご近所さん同士だけど、性格も人種もバラバラ、共通点は貧しいところとでたらめさというだけの集まり。監督は、町会議員のオーナーにてきとうなことを言われ、雇われたけど、マイナーリーグでぱっとせず契約で揉めた、昼から酒を飲むいわゆる「ダメな感じの人」。

観ていると今の映画と違い、どうしてその流れになるのかついていけなく感じたり、その瞬間その瞬間に登場人物たちが何を感じているのかも分からないという印象で、頭が「?」だらけになったりもします。

ただ、2つのきっかけでチームが強くなりはじめ、そうしてるうちに、監督や親やスポンサーの議員の欲は見えてきます。自分たちがはりきってしまい子どもたちを持ち上げてもっと勝たせたいという、大人の事情が透けてきます。でも、何かそれだけでもない。

例の監督も、ただ気が良いだけでも、ただだらしないだけでもなく、一時は「子どももそういう気持ちのはず」と、チームの勝利だけを追おうとしたりする。やや下品で野暮ったくて、一貫性がなくて、最近の映画や世の中に馴れている私たちにはそれも不思議な気持ちにさせます。

終わり方も大したことのない事情から、「どうしてこうなるんだろう?」と腑に落ちない感じを残します。分かるのは作品の監督たちが、映画が好きで、子ども向けの話を作りたくて、野球が好きなんだろうなぁということ。

当時のアメリカは野球への熱が大勢を占めていて、大人も子どももそこには疑問の余地はなかったのもあるのでしょう。

ただ、現代のリアルな大人ならこの映画に出てくるいくつかの場面を、そのまま受け入れられず、きっと「大人の事情」を考えてソツない選択をしたくなるんじゃないかな?

要所要所に配されたできごとはまあ、はっきりしています。監督に関わりのある思春期にかかった女の子を、ピッチングがとてもうまかったからとチームに誘ったり、練習をしょっちゅう見に来る不良少年が運動神経がよくて、監督とその女の子がうまい具合に誘う、とか、チームが負け越したり調子に乗ってきたりするたびにスポンサーのお父さんの態度が変わるとか。

でも、どれも薄っぺらい。当時の子ども向け映画で時間も短いのもあるでしょうし、演出技法も洗練されていたい。

どうしてこういう事を書いているかというと、それでもなお、腑に落ちなさの一部に「現実のその場その時の判断て難しいものだよね」とか「大人の事情や大人のエゴ、子どもにはそんなものわからなくて気分で反応しているだけだけど、自分たちなりに気分を出す自由があったんだな」とか考えさせられたのです。

最後まで、大人の事情、大人の気分(がっかりするのも、ふてくされるのも、お調子にのって自分の判断は正しいとするのも)に説明も回収もなく終わります。

シーズン最後の試合で、子どもたちの納得もないまま、負けてもよい選手交代を監督はして、その気持?気分?もはっきりは示されません。でも、何かが動いていることは大人な気持ちからはわかります。

子どもたちは、それに気分で一喜一憂し、知的な感想や説明なんてまったくない。できないというより、ないのです。そんなものだと言わんばかりに話は進みます。そして、それでもなぜか味方も敵も子どもたちは最後、お互いが何かをがんばったことに気づけてお互いを彼らなりの形で称え合う。そこには筋や設定を超えた感情があります。気持ちの底に流れる監督と子どもたちの様々な気分には誰もが触れられるのに、それが起きる必然性(?)が、現代の私たちに分からなくなってないか?、もっとはっきり示したくなりすぎていないか?そんな気持ちになるのです。

何かが心にひっかかるのは確かです。だって、その後、この映画はあと2作続編が作られたくらい人気がデたのですから。3作目は日本が舞台になっていますが、当時の大人の事情でのことだったのでしょう。当時の私には、それは面白くて楽しんだものではあったけど、どこか興をそがれるものになりました。

主人公の一人、テイタム・オニールはきれいなタイプの女優さんではありませんが、とても身近に感じられる、でもどこか魅力的なかわいらしさを持った人だと、最後に付け加えておきましょう。

古い映画で名前を残しているものがすべてよいと渡しには思えません。雑な面もあるし、昔なりのコテコテ感もよく感じます。でも、この作品にはそうした腑に落ちなさだけでなく、「これがリアルってものだ。説明とか筋道の問題がリアルの中心ではない」という意味で、いつも心の片隅にあるのです。

この映画のタイトル:

「がんばれベザーズ」

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