クリケットを見れば新世界が見える! 〜クリケットの強豪国〜
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「日本ではマイナーだが、世界的にはメジャーなスポーツ」であるクリケット。国際クリケット評議会(ICC)の発表によると、全世界で3億人の競技人口を誇ると言われています。
しかし、「日本で全然報道されないけど、どこで人気なの?」ということで、今回はクリケットが盛んな国について触れていきます。
「クリケットの母国」イングランド
まずは、クリケットの母国、イングランド。
16世紀にイングランドで誕生し、17世紀にはプロ選手が生まれ、18世紀には国民的なスポーツとして発展し、現在までに至ります。イングランドでは上級階級が嗜むスポーツと呼ばれ、イートン校やハーロー校などの名門校では必須科目となっています。
クリケットの持っているスポーツマンシップ、協調性、忍耐力、集団への忠誠心は大英帝国の植民地政策に利用されたこともあり、大英帝国の植民地であるオセアニア、南アジア、アフリカ南部、北中米など、たくさんの国へ広がっていきました。
19世紀半ばからは、イングランドが各植民地の代表選手と国際試合を行うようになり、各植民地が独立した後も続き、今に至ります。
本拠地の「ローズ・クリケット・グラウンド」はクリケットの聖地と呼ばれ、イングランド代表のホームスタジアムとして親しまれています。
1970年に「ワンデイ」方式の国際大会、クリケットワールドカップが始まって以来、イングランドは40年以上も優勝することができなかったが、2019年のクリケットワールドカップの決勝でニュージーランドを破り、初優勝を飾っています。
「W杯最多優勝」オーストラリア
続いては、クリケットワールドカップ最多優勝を誇る、オセアニアの大国、オーストラリアです。
19世紀前半にオーストラリア全土が大英帝国の植民地になったことがきっかけで、クリケットはオーストラリア全土に普及しました。19世紀中頃にはイギリス本国とオーストラリアの植民地代表チームが国際試合を行うようになりました。イングランドとの初のテストマッチ開催は1877年と古く、イングランド-オーストラリアの対戦は「ジ・アッシズ(遺灰)」と呼ばれており、クリケット界では絶大の人気を誇ります。
20世紀前半には、名選手ドナルド・ブラッドマン(通称ドン・ブラッドマン)を輩出し、サッカーのペレ、野球のベーブ・ルース、バスケットボールのマイケル・ジョーダンと共に、スポーツ界のアイコンとして知られています。バッティング技術は卓越しており、未だに塗り替えられていない記録も存在します。
クリケットワールドカップでは最多の5回の優勝を誇り、先日にUAEで行われていたT20ワールドカップでは、ニュージーランドに勝利し、優勝を飾りました。
メルボルンにある「メルボルン・クリケット・グラウンド」は10万人収容の世界最大級のクリケットスタジアムです。
「世界最大のクリケット大国」インド
そして、現代における「クリケット界の中心」であるインドです。
大英帝国の統治により、インド全土にクリケットが普及しました。インドは、五輪スポーツ、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビーの世界ではほとんど国名が出てくることはありませんが、クリケットはインド抜きでは語ることができません。
インドでは「スポーツ=クリケット」と言うくらいクリケットが浸透しており、世界最大級の市場を誇ります。バスケットボールや野球の中心はアメリカで、サッカーは欧州が中心ですが、クリケットはまさにインドが中心に回っているといっても過言ではないでしょう。
毎年、4月頃から2ヶ月間開催される、トゥエンティ20方式のクリケットリーグ「インディアン・プレミアリーグ(IPL)」が開催されています。世界最高峰のクリケットリーグと呼ばれ、世界各国のスター選手が活躍しています。わずか2ヶ月間での開催ですが、選手のサラリーは3000万円〜3億円と非常に高額です。
インドのグジャラート州アーメダバードにある、ナレンドラ・モディ・スタジアムは、13万人収容のクリケットスタジアムです。世界の現存するスタジアムの中では、世界最大規模を誇ります。
「首相が元クリケット選手」パキスタン
インドの隣国であるパキスタンも、クリケットは絶大な人気を誇ります。
インドと同じく、大英帝国統治下でクリケットが広がっていたパキスタン。1947年にイギリスから独立以後も、国民的スポーツとしてクリケットは親しまれています。
クリケット界では、インドvsパキスタンは、世界最大のダービーマッチと呼ばれています。北東部のカシミール地方の領有権を巡って紛争を繰り返し、緊張関係である両国の対戦は、クリケット界で最も熱狂的なカードです。熱狂しすぎたファンが、心臓発作やトラブルなどに巻き込まれて命を落とすようなこともあるほど、両国の対戦カードは異様な雰囲気に包まれます。
現在のパキスタンの首相を務めるイムラン・カーン氏は、パキスタンを代表するクリケット選手でした。パキスタン代表のキャプテンを務め、1992年のクリケットワールドカップでは、同国初の初優勝を飾りました。
「カリブ海の連合軍」西インド諸島
クリケットの国際試合では、カリブ海諸国の連合チームがあります。主に英語圏の独立国とイギリスの海外領土で選抜されているチームです。西インド諸島の国々が独立する前の19世紀後半から選抜チームが活動していますが、それぞれの国が独立した以後も連合チームとして編成しています。
西インド諸島代表に参加している国と地域はこちらです。
クリケットの西インド諸島代表は、地理上の概念の「西インド諸島」とは異なります。スペイン語圏のキューバやドミニカ共和国、米領のプエルトリコ、フランス語圏のハイチやフランスの海外領土のマルティニークやグアドループ、英国領でもバミューダ諸島、ケイマン諸島などは含まれていません。
国際試合では、西インド諸島独自の代表チームの旗を使用し、国歌斉唱はトリニダード・トバゴのミュージシャン、デヴィッド・ルダーの「Rally Round the West Indies」を歌っています。
クリケットワールドカップでは2度の優勝、T20ワールドカップでも2度の優勝を誇る、クリケット界屈指の強豪国の一つです。
「ブラックキャップス」ニュージーランド
ニュージーランドのスポーツと言えば、「オールブラックス」で知られるラグビーですが、同じくイングランド発祥のクリケットもまた、ニュージーランドは強豪として知られています。
オーストラリアと同じく、ニュージーランドのクリケットも19世紀からに及びます。愛称の「ブラックキャップス」は、1998年にニュージーランド国内で公募され選ばれたものです。
国際大会での優勝経験はないものの、クリケットワールドカップでは2度の準優勝、今年行われたT20ワールドカップでは惜しくも準優勝で終えています。しかし、2019年から2年間行われた「ワールドテストチャンピオンシップ」では、決勝でインドに勝利し、初代王者に輝きました。
「アフリカの雄」南アフリカ
南アフリカもまた、世界有数のクリケット強豪国の一つです。19世紀からイングランド、オーストラリアと国際試合をしており、クリケット界では最も歴史の古い国の一つです。
しかし、アパルトヘイト政策により、国際クリケット評議会(ICC)から、無期限の国際試合禁止を命じられ、クリケットワールドカップに出場するには、20年以上の年月がかかりました。第二次大戦後の南アフリカは、世界屈指の強豪として、イングランド、オーストラリアを上回るほどの実力を誇っていましたが、1970年から20年間は名選手たちは国際舞台から姿を消してしまいました。
現在では、南アフリカ代表選手のメンバーは、最低6人の黒人選手を起用するという独自のルールを設けています。
「W杯優勝経験もある島国」スリランカ
インド、パキスタンと同様に、スリランカもまた強豪国として知られています。セイロン島にクリケットが伝わったのは、19世紀中頃。セイロンの代表チームは、19世紀終わりからイングランド、インドの代表チームと対戦していました。
しかし、小国のスリランカは、1980年代まではトップレベルに至るまでではなく、長年、ライバルのインドを始め、イングランド、オーストラリアなどの後塵に配していました。
90年代になり転機が訪れ、スリランカは序盤から積極的にバッティングを行っていく戦術を駆使し、1996年のクリケットワールドカップでは、イングランド、インド、オーストラリアを立て続けに破り、全勝優勝で初優勝を飾りました。そして、2014年のT20ワールドカップでも優勝し、スリランカは小国ながら見事な成績を収めています。
「戦乱の新興国」アフガニスタン
最後はアフガニスタンです。インド、パキスタンと同様に、大英帝国の保護国だった時代に、アフガニスタンにクリケットが普及し、全国的に広がりました。イギリスから独立後も国民的なスポーツとして親しまれていました。
タリバン政権下では、スポーツは禁じられていましたが、クリケットは例外的に認められていました。2001年のアフガニスタン紛争でタリバン政権が倒されると、2010年にアフガニスタンクリケット協会が設立。2013年にアフガニスタンがICCのアソシエーションメンバーに入り、2018年には最上位のフルメンバーに入りました。
クリケットワールドカップには2015年、T20ワールドカップには2010年に初出場しており、近年ではモハメド・ナビ、ムジェーブ・ユル・ラフマン、ラシッド・カーンなど有力選手を輩出している新興国です。
その他、バングラデシュ、ネパール、アイルランド、ジンバブエ、ナミビア、パプアニューギニア、スコットランド、オランダ、UAE、オマーンなどは、国際クリケット評議会(ICC)のランキングの20位以内に入っている実力のある国として知られています。
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