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ごりまる母さんメラピークへ⑦(全10話)



Kote(3690m)からThangnag(4350m)へ

[歩行時間]5時間

翌朝、ケンとアンディの救助ヘリがいつ到着するかわからないとの事で、ロブと私は次の目的地であるThangnak へ出発しなければならない時間となりました。

ケンの状態は一夜明けても良くならず、ベッドでのお別れとなりました。

アンディは笑顔で、「気をつけて。絶対に登頂できると信じてるから」と私たち2人を抱きしめてくれ、私たちが見えなくなるまで手を振りながら見送ってくれました。
私も彼の姿が見えなくなるまで、何度も何度も後ろを振り返りながら「アンディ、行ってきます」と心の中で呟きました。

Kyashar キャシャール(6770m)が見えてきました
私たちの荷物を運んでくれるポーターの皆さんには
感謝しかありません
どの角度から見ても、ため息のでる美しさ
Kyashar キャシャール

Thangnag まで沈黙の道のり

これまでずっと一緒に歩いてきた3人がいなくなり、ここからの道のりは私とロブの2人に。
3人が居た空間が、まるで伽藍堂になったように感じられました。
ロブもどこかしら寂しげで、私たちはお互い話しかけるでもなく、ただただ前を向いて歩きました。
私にとってこの沈黙の時間は、今までのことを心の中で整頓し、区切りをつけ、これからの道のりだけに集中するという、今にして思えばなくてはならない大切な''静の時間''だったのだと思います。

Koteを出発してしばらく歩くと山の景色が雪山へ
メラピークへと近づいているのを実感
登山の安全祈願をさせていただく

無事Thangnagに到着

とってもチャーミングなロッジのオーナーさん
「ソーラーパネルをここに置いても良いですか?」と私。
「まだ太陽ぜんぜん当たってないけど!」
と2人で笑いあう。
“笑う門には福来たる”

洗濯モンのチャンス到来!

高所順応のため、ここThangnagでは2泊。
カトマンズを出てから、着っぱなしだった服がやっと洗濯できる!
嬉々として庭先にあった桶にシャツや靴下を放り込み、蛇口を捻った途端、出てきた水の冷たさに心臓が止まりそうになりました。
桶の中で泳ぐ洗濯物を円を描くようにぐるぐる回して終了。
水の冷たさで、手がちぎれそうになりながらも水分を絞ってなんとか干す事ができました。
太陽の動きに合わせて石の上に干してある靴下を移動させながら、時にもう1度絞りなおしてみたり… 思ったより慌ただしい午後となりました。

ヒマラヤの風にひらひら揺れる洗濯物
幸せだなぁと洗濯物を見ながらニンマリ
シャンプーなどは持ってきてないのに洗濯バサミは6つ
持って来ていました

国旗について思いを馳せる


ロッジ食堂に飾られていたウェールズ国旗

ロッジの食堂に入った途端、ウェールズの国旗が目に飛び込んできました。

’1年ぐらいヨーロッパを旅してみよう’と軽い気持ちで日本を出た24歳のとき。
そして、軽い気持ちで日本を出たつもりがいろんなご縁が重なり合って、ウェールズで暮らす事になるという予想外の展開に。
ヨーロッパどころか、まだ旅に出て1カ国目(!!) でした。
それが今では生まれ育った日本で24年、それからここウェールズで24年。
ちょうど人生の半分をこのウェールズで過ごした事になります。

出逢った人とのご縁と運だけでここまでこれたような私の人生ですが、今こうして振り返ってみると人の人生とは本当に不思議なものです。

そうしてしばらくの間、食堂にあるウェールズ国旗を感慨深く見つめていました。

高所順応へ出発

夜、ロッジの寝室は冷蔵庫のように冷えきっており、高度が上がってきたのを実感します。
昨日、洗った靴下は石の上に置いたまま忘れてしまっており、カチンカチンに凍っていました。
あぁ!あんなに太陽を追いかけて移動しながら苦労して干した靴下が…と涙目になりながら、ふっと横に目をやるとこれまたカチンカチンに凍ったロブの靴下が。
それを見た瞬間、「ロブの靴下も凍ってる。。。ひひひ」と少し嬉しくなった自分に罪悪感を感じながら2足の靴下を日の当たる場所に移動しました。

今日はいよいよ高所順応日。
ロッジ裏にある丘5200mまで登ります。
「やっとここまで来たんやなぁ」と気も引き締まります。

チェワンを先頭に私とロブ
どうもパサンの目線から、何か諭されているような
雰囲気が…
左から私、パサン、チェワン、ニール、ロブ
高所順応も無事終わり下山中
素晴らしい景色!ですが何とも歩きにくい苦手な岩場
足元要注意にて景色もあまりキョロキョロ見れず


夜、食堂でロープワークを教えてくれるパサン
覚えの悪い私に対する彼の気の長さ、我慢強さ、穏やかさには
頭が下がる思いです


まとめ

Thangnagでの2日間の滞在が終わり、次の目的地はいよいよメラピークへの拠点地となるKhareへ。

5日後、ここに帰って来る時はどんな自分になっているのだろう。
無事登頂できてここに帰って来るのか、それとも登頂できずに帰って来るのだろうか...ふっとそんなことを考えながら冷え切った寝袋に滑り込みました。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

メラピークへの旅、もう少しの間ご一緒に歩いていただけたら嬉しいです。

*地図によってはThangnag がTangnag と掲載されているものがありますが、ここではThangnagとさせていただきました。