品川 永楽電気|事務局1名で挑戦したアクセラレータープログラムから得た経験とは
会社概要
東京都品川区大崎にある永楽電気株式会社は、電鉄用変電所と情報通信設備分野の「保護計測、遠方監視制御、通信システムほかの仕様提案、設計、製造、メンテナンス」を鉄道会社へ提供しています。
スピーカー:大西 輝明氏(取締役 京浜島事業所長)
アクセラレータープログラムを開催した背景を教えてください
品川区さんから、「しながわ新規事業創出(事業共創)プログラム」に参加しないかと、お声がけいただいたのがきっかけでした。社員の高年齢化による技術継承の遅れという課題に加え、変電所において異常音・におい検知による装置の予防安全を行いたい、さらには駅ホームにおいて聴覚が不自由な方へのアシストシステムを構築したいという要望が背景にありました。いずれも、自社のみの技術体制では対応できないことから、オープンイノベーションによって新しい製品を生み出せたらという期待のもと今回のプログラムへの参加を決意しました。
具体的にどのようにCrewwのサービスを活用しましたか?
アクセラレータープログラムの募集ページ作成からスタートアップ企業様から共創案を募集して、評価し、その後スタートアップ企業様とプラットフォームのメッセージ機能でコミュニケーションをとりながら共創案をブラッシュアップしていきました。ほぼ私一人で運用していましたので、共創自体が不慣れなため、スケジュールに追われてしまったという一面もありましたが、プラットフォームに必要な項目が揃っていましたし、テンプレートもありましたので、その点は不便なく進行していくことができました。
今回アクセラレータープログラムを実施してみていかがでしたか?
今回のプログラムでは25件ものスタートアップ企業様からの共創案が集まりました。自社としての目標など、具体的にやりたいことなどが曖昧だったこともあり、共創案を絞り込むのに苦労しました。
どのような視点で共創案を選んでいったのですか?
まず1つは、実現性があるかという点です。また、実証実験までの時間があまりなかったこともあり、 その時間内に結果を出せるところというのも、選んだポイントになったと思います。ですので、今回はある程度プロダクトやサービスが確立されているスタートアップ企業様を選ばせてもらいました。
どのような共創プロジェクトが生まれたのでしょうか?
【project1】MAIキャピタル様との協業「動画を使用した金具測定と精度の確認」
計測作業のDX化実現を目指して、実証実験を行いました。
現場では、駅のホームに吊下がっている装置の金具の製作は、人に接触したり、他の信号機が見えなくなる等の問題が起きないように、必要な全ての寸法を測り、設計図を書いた上で行われていました。一方で、ミスがないとも限らないことが課題でした。
そこで、動画を撮影し、立体感を出すことで距離を測るという方法を用いた実証実験を行いました。測定方法を変えて、3回実験を行い、結果を検証しました。
実際は、現段階でのプロダクトでは、精度の課題と現場で動画を撮影する工数が思ったよりかかるなどの課題から、いますぐ実装するのは困難とのことからいったんプロジェクトは終了しております。
【project2】Hmcomm様との協業「AI異音検知による変電所内の故障検出と実現性の確認」
変電所保守作業の自動化・予防保全を目的にしています。エンドユーザーである鉄道会社からのヒアリングを終えて、実証実験をいたしました。工程としては、集音端末を設置し、正常音データを取得した後、その環境音を活用して、音響解析を実施し、特微量から捉えられる状態変化量の有無を明らかにしていくものです。
ヒアリングからは、「実際の異常は滅多に起こるものではないため、異常音自体を取得する事が困難である」「今回のように、正常音の外れ値探知のみを利用した取り組みは新規性が高い」との声が聞かれました。発生すれば大きな事故に繋がるため、事前の点検業務への検証は、重要であると考えています。
一方で、実証実験では、それなりの結果は出たのですが、費用面からも1つの変電所でしかデータが取得できなかったこともあり、実用化するためにはより多くのデータが必要となるという点が課題となり、今はプロジェクトをいったんストップさせました。
【project3】ユニロボット様との協業「放送内容をスマホへ表示する際の変換精度、遅延時間の実証確認」
駅ホームにおけるダイバーシティ化推進を目的に実証実験を行いました。永楽電気の放送装置に、ユニロボット製の装置を取り付け、放送内容をスマートフォンへ表示させる実験を行いました。
実証実験の結果、放送からスマホ画面の表示までの遅延時間は実用的であり、有益な情報を得ることができました。また、変換精度に関しては、自動放送が音源の場合は概ね良好であったのに対し、マイク放送が音源となる場合の変換精度は、落ちることが分かりました。
変換精度をあげていけるという話はあるものの、評価としては面白いねというところで止まっており、今後いかに展開していくかが見えておらず、現状ではお客様に説明できないという点で現在止まっているという状況ではあります。
スタートアップ共創を実施してみて感じたこと
やはり新規事業にはある程度の費用が必要となるので、スタートアップ企業様のみならず、大手企業なども巻き込んだ形でのオープンイノベーションが自社には合っていたと感じました。
また、いい意味でも悪い意味でもAIやディープラーニングを取り入れていくには、ある定度の時間や費用の捻出が必要であることがわかりました。
アクセラレータープログラムを実施していくには、周囲をひっぱっていく熱意が必要なのだという学びがありました。
今後の展望
弊社は引き続き市場ニーズを捉えた新しい製品をつくっていかねばならないという社会的使命を背負っている会社であると考えますので、新しい製品をつくるためにも、人材の確保も同時に進めていかねばならないと思っています。
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